「ピロリ菌」とはどんな菌なのか

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   元タレントの飯島愛さん(35)が、自身のブログで「ピロリ菌」の除菌を完了したことを明らかにした。ピロリ菌が胃の中にあると、胃がんのリスクが大幅に高まるとの研究結果もある。名前だけは「ピロリ菌」とかわいらしい感じがするが、一体どんな菌なのか。

「みんなも、はよ治そうね」と呼びかける

   飯島さんは2008年6月27日、自身のブログ「ポルノ・ホスピタル」で、

「あ。ピロリ除菌終了しました。なんか、胃腸が元気で消化が良くなった気がする。みんなも、病気ははよ治そうね。と、(編注: 長く病気にかかっていた)私が言う」

と書き、ピロリ菌の治療が大部分完了したことを明かした。飯島さんのピロリ菌治療をめぐっては、2月28日付けのブログで

「最近、検査でピロリ菌が見つかちゃいました飯島ピロリです。この2ヶ月ほど、軽いノイローゼで大変でした。精神疾病です。抗うつ剤を処方されたので凹みました。抗うつ剤なのに....」

と、ノイローゼに悩まされたことをカミングアウトすると当時に、胃の中でピロリ菌が発見されたことを告白。

   5月5日のブログには

「そんで、これから、ピロリのお薬飲まないとだよーーーーーーーーーー。嫌でほっといたらね、ピロリが愛珍の中で踊りまくっているんだって。ピロピロダンス!!! でも、ホントに早めに除菌しないとダメだよ」

とも書いており、きちんと薬を飲まないがために治療が滞っている様子だった。

   この「ピロリ菌」、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といい、1983年にオーストラリアの研究者2人が初めて培養に成功した。胃の末端部分「幽門」で多く発見されることから、この部位を指す「ピロリ」という言葉が菌の名前にも用いられた。胃の中は強い酸性で、細菌は生きられないと長らく信じられてきたが、ピロリ菌は胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解。アンモニアはアルカリ性なので、胃酸を中和して生き延びていたのだ。ピロリ菌研究の業績が評価され、2人は05年にノーベル生理学医学賞を受賞している。

ピロリ菌感染経験者は胃がんのリスクが10倍

   人間が体内にピロリ菌を持つようになる経緯については諸説あるが、便などを通じて感染するとの説が有力だ。子どもの頃の衛生環境が悪かった50代以上は大半が感染していると見られる一方、若い世代になるほど感染率は低い。

   このピロリ菌の「駆除」が取りざたされるのは、ピロリ菌が胃かいようと密接な関係があるとされているからだ。例えばピロリ菌を発見した研究者のうちひとりは、自分でピロリ菌を飲んで急性胃炎が起こることを確かめたほか、胃かいようの患者の9割がピロリ菌に感染しているとされる。さらに、04年に厚生労働省の研究班が全国4万人を対象に行った調査では、全くピロリ菌に感染したことがない人に比べて、感染経験者は胃がんのリスクが10倍になることも報告されている。

   このことから、胃かいようと十二指腸かいようの患者に限っては、ピロリ菌駆除は保険適用で行われている。具体的には、胃薬1種類と抗生物質2種類を1日2回、1週間にわたって服用する。除菌の成功率は7割〜8割程度だ。

   もちろん、ピロリ菌が発見されたからといって、すぐに何らかの「実害」がある訳ではない。その一方で、胃がんの予防効果を期待して、自由診療でも治療費は実費で1万円程度だということもあり、除菌を希望する声も増えている。

   ただし、この場合の除菌は、元々具体的な病気がなかった人に下痢や味覚異常などの副作用を与えるリスクを伴っており、医療現場では慎重な対応を迫られている。

   一方、関係学会からは、ピロリ菌を持っていること自体を「感染症」として保険適用にするようにも求める声も上がっている。

   除菌で将来の胃がんのリスクを減らすことが大事なのか、それとも薬物投与で起こる副作用のリスクを避けることの方が大事なのか、今後議論を呼びそうだ。

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