歯周病と骨粗しょう症の関係は?なりやすい人や治療方法、予防法も解説
歯周病と骨粗しょう症は一見すると関係がなさそうな病気に思えますが、実は骨の代謝を通じて深く関係しています。
骨粗しょう症によって全身の骨密度が低下すると、歯を支える顎骨も脆くなり、歯周病の進行を早める危険性が高まるので注意が必要です。
特に閉経後の女性や高齢の方はホルモンバランスの変化や骨密度の低下によって、双方の病気を併発しやすい傾向にあります。
どちらの病気も初期段階では自覚症状が乏しいので、早期にリスクを把握して適切な対策を行うのが欠かせません。
それでは、二つの病気の相関関係をはじめとした、かかりやすい方の特徴や治療法、日常で取り組める予防策までわかりやすく解説します。
監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
歯周病と骨粗しょう症とは

今一度歯周病と骨粗しょう症について知りたい方も少なくないのではないでしょうか。
どのような病気なのか知ることで、今後の対策もやりやすくなるでしょう。
それでは、歯周病と骨粗しょう症について解説します。
歯周病の概要
歯周病は、歯と歯茎の隙間に溜まったプラークに含まれる細菌が原因で起こる炎症性の疾患です。
初期段階では歯茎に炎症が留まる歯肉炎として現れ、赤みや腫れ、歯磨きをしたときに出血しやすくなります。
症状が進行して歯周炎になると、歯を支えている骨などの歯周組織が徐々に破壊されていきます。
症状がさらに進行すると歯のグラつきが大きくなり、最悪の場合は歯が抜け落ちてしまうので早期の対応が必要です。
口腔内だけに留まらず、全身の健康状態にもさまざまな影響を及ぼす疾患としても知られています。
成人が歯を失う主な原因の一つであり、毎日の正しい歯みがきや定期的なお手入れによる管理が重要です。
日頃から口腔内や歯の違和感に注意を払い、清潔な状態を維持する取り組みが健康を守る基盤となります。
骨粗しょう症の概要
骨粗しょう症は、骨の量が減って骨の強度が低下し、骨折しやすくなる骨の疾患です。
骨の代謝バランスが崩れ、新しく骨を作る働きよりも古い骨を壊す働きが上回ることで進行します。
加齢や女性ホルモンの分泌低下が主な原因とされており、特に閉経後の女性に見られる病気です。
初期段階では自覚症状がほとんどなく、転倒して骨折したり背中が曲がったりして初めて気付くケースもあります。
太ももの付け根や背骨などを骨折すると、要介護状態につながる恐れがあるので注意しましょう。
早期発見と適切な治療を行うことで、骨密度の維持や骨折リスクの低減に大きな期待ができます。
食事からのカルシウム摂取や適度な運動を取り入れて、骨の健康を維持することが大切です。
歯周病と骨粗しょう症の関係

歯周病と骨粗しょう症にはさまざまな関係性が指摘されているのをご存じでしょうか。
それぞれの関係性がわかれば、さまざまな対策につなげられるかもしれません。
今後の対策につなげるためにも、どんな関係性なのか把握しましょう。
それでは、歯周病と骨粗しょう症の関係を解説します。
骨密度の低下と歯周病の関連が指摘されている
骨粗しょう症で全身の骨密度が大きく低下してしまうと、歯の土台として機能している顎骨も同時にもろくなるのが特徴です。
顎骨の強度が落ちると細菌感染に対する抵抗力も弱まり、結果的に歯周病の発症や進行を早めてしまう危険性が高まります。
実際に骨粗しょう症を患っている患者さんは健康な方々と比較すると、重度な歯周病にかかる割合が高いという研究結果もあるほどです。
歯周病の悪化に伴う深刻な歯の抜け落ちを防ぐには、日々の口腔内ケアだけでなく全身の骨を丈夫に保つ方法実践する必要性があります。
このように双方の疾患は密接に結びついているので、それぞれの専門医師が連携した総合的な視点からの予防や早期治療がかなり重要です。
骨粗しょう症と歯周病には共通するリスク因子がある
歯周病と骨粗しょう症は、加齢や喫煙、食生活の偏りといった共通した生活習慣のリスクを抱えています。
特に喫煙は血流を阻害して歯茎の免疫力を弱めるだけでなく、腸管からのカルシウム吸収も妨げてしまうので注意しましょう。
さらに食生活における栄養不足や運動不足は、全身の骨密度低下と口腔内の組織低下を同時に招く要因となります。
また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少すると、骨量を減らすと同時に歯茎の炎症を強める可能性があるでしょう。
生活習慣の乱れやホルモンバランスの変化に気を配り、双方の病気を予防するアプローチが欠かせません。
骨粗しょう症の治療薬を使用している場合の歯科治療の注意点

骨粗しょう症の治療でビスフォスフォネート系製剤などの薬を使用している方は、抜歯やインプラント手術を受けるときに注意が必要です。
投薬中にこうした外科的処置を受けると、まれに顎骨が壊死する薬剤関連性顎骨壊死を引き起こす恐れがあります。
だからといって自己判断で服薬を中断すると骨折リスクが高まるので、独断で処方薬を止めるのはやめましょう。
歯科を受診したときに服用中の薬や病状について歯科医師へ伝えて、医科の主治医とも十分に連携をとることが大切です。
お互いの医師が情報を共有したうえで治療計画を立てることが、副作用のリスクを抑えて歯の健康を守ることができるでしょう。
歯周病と骨粗しょう症になりやすい人

歯周病と骨粗しょう症はそれぞれ気を付けないと徐々に症状が進行しやすくなってしまうので注意が必要です。
運動習慣や喫煙習慣、口腔内環境、栄養不足など、いずれも普段の生活習慣の行動が蓄積することで発症しやすくなる傾向にあります。
それでは、歯周病になりやすい人、骨粗しょう症になりやすい人を解説しましょう。
歯周病になりやすい人

日頃の歯みがきが不十分で口腔内に歯垢や食べかすなどの磨き残しがある方は、歯周病菌などの細菌が繁殖しやすいので発症リスクが高まります。
口腔内の環境が悪い状態を放置していると、口腔内でどんどん虫歯菌や歯周病菌が繁殖してしまい、徐々に歯や歯茎を侵食してしまいます。
また、喫煙習慣がある方も血流が阻害されて歯茎の免疫機能が低下するので、症状が急速に悪化しやすい傾向にあるでしょう。
唾液の分泌量が少ない乾燥した口腔内環境や、糖尿病などの全身疾患を抱えている状態も感染を招く要因となります。
さらに、歯並びの悪さや噛み合わせの問題、精神的なストレスによる免疫力の衰えも患いやすさに深く関係する要素です。
これらの特徴にあてはまる場合はさまざまなリスクを自覚し、日頃から丁寧なお手入れを継続して予防に努める必要があるでしょう。
骨粗しょう症になりやすい人
閉経を迎えた女性は女性ホルモンの分泌が急激に低下し、骨の代謝バランスが崩れて骨密度が減少しやすくなります。
加齢に伴って骨の形成能力が衰える高齢の方や、運動習慣がなく骨への適度な刺激が不足している方も注意が必要です。
また、極端なダイエットによる栄養不足や、カルシウムやビタミンDの摂取量が欠乏している生活も発症リスクを高めます。
さらに、過度な飲酒や喫煙の習慣がある場合は、骨の形成が妨げられて骨が脆くなる傾向が強まるので気をつけましょう。
遺伝的な要因や特定の病気、ステロイド薬の長期服用なども発症に影響するので、早めに対策することが大切です。
歯周病と骨粗しょう症の治療方法

歯周病と骨粗しょう症を発症したとしても、しっかりとした治療法があります。
症状の進行度によって治療期間は大きく違いますが、根気よく対処すれば問題ありません。
それでは、歯周病と骨粗しょう症の治療法を解説しましょう。
歯周病の治療法
歯周病治療の基本は、原因となる歯垢や歯石を徹底的に取り除いて口腔内環境を清潔に整える処置から始まります。
軽度の段階ではスケーラーと呼ばれる器具を用いて、歯の表面や浅いポケットに付着した汚れをきれいに除去するのが一般的です。
症状が進行している場合は麻酔を使用して、歯茎の奥深くに入り込んだ歯石を専用器具で丹念に取り除きます。
重度の歯周炎で骨が大きく破壊されているケースは、歯茎を切開して汚れを取り除く外科的処置が必要不可欠です。
定期的なメンテナンスを継続して、細菌の再繁殖を防ぐ対策が歯周病の進行を抑えるうえで大きな役割を果たします。
骨粗しょう症の治療方法
骨粗しょう症の治療は、骨折を予防して骨密度を維持・増加させる薬物療法を中心に進めていくのが基本です。
処方される薬剤には骨の吸収を抑えるビスフォスフォネート製剤や、骨の形成を刺激する注射薬など多種多様な種類があります。
薬物療法と並行して、骨の材料となるカルシウムやビタミンDを積極的に摂取する食事療法も大きく貢献してくれるでしょう。
ウォーキングなどの適度な運動を取り入れて骨に刺激を与える習慣も、骨の強度を高めるうえで効果的です。
患者さんごとの症状や年齢に合った治療方針を継続して、定期的に骨密度を測定しながら管理していく対応が欠かせません。
歯周病と骨粗しょう症の予防法

歯周病と骨粗しょう症の予防法は、以下のとおりです。
バランスのよい食事を摂取する
適度な運動をする
カルシウムやビタミンDなど必要な栄養素を摂取する
歯磨きや歯間清掃などのセルフケアを行う
定期的に歯科検診を受ける
それでは、歯周病と骨粗しょう症の予防法について解説しましょう。
バランスのよい食事を摂取する

歯周病と骨粗しょう症を同時に予防するには、骨や歯周組織の健康を支える栄養素を日常的に取り入れる必要があります。
骨の主要な構成成分であるカルシウムに加え、その吸収を助けるビタミンDを意識して摂取するのが効果的です。
さらに、コラーゲンの生成を促すビタミンCやタンパク質を補うことで、歯茎や骨の代謝機能を正常に保ちやすくなるでしょう。
栄養が偏った食生活を続けていると免疫力が低下し、口腔内の細菌感染や骨密度の減少を招きやすくなります。
特定の食材だけに依存せず、多種多様な食品を組み合わせて必要な栄養をまんべんなく補う習慣が予防につながるでしょう。
適度な運動をする
日常的な適度な運動は骨に適度な負荷を与えるので、骨密度を維持して骨粗しょう症を防ぐ大きな役割を果たします。
ウォーキングや筋力トレーニングを習慣にすると、骨の発育が促されるだけでなく全身の血液循環も促進されるのがポイントです。
血流が改善されると歯茎のすみずみまで十分な栄養が行き渡るようになり、口腔内の免疫力が高まる効果も期待できます。
さらに、運動によるストレスの発散は歯ぎしりの防止や自律神経の調整を通じて歯周病の悪化を防ぐ点でもおすすめです。
無理のない範囲で身体を動かす習慣を長く継続することが、全身と歯の健康を同時に守る基盤となります。
カルシウムやビタミンDなど必要な栄養素を摂取する
カルシウムは骨や歯を構成する主要な成分であり、十分な量を補うことが骨密度や顎骨を保つ基礎となります。
骨への定着を助けるビタミンDや、骨の質を高めるビタミンKを一緒に摂取するのもおすすめです。
さらに、タンパク質やビタミンCを補給すると歯茎の組織であるコラーゲンの生成が促されて免疫力が維持されます。
必要な栄養素が不足すると骨がもろくなって歯周病菌に対抗する力も衰えてしまうので注意しましょう。
乳製品や魚介類、緑黄色野菜などを日々の食事に取り入れて、栄養のバランスを考慮した摂取を心がける必要性があります。
歯磨きや歯間清掃などのセルフケアを行う

日々の丁寧な歯磨きや歯間清掃は、歯周病の原因となるプラークの蓄積を防ぐために欠かせません。
歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを落としきれないので、デンタルフロスや歯間ブラシの併用が効果を発揮します。
歯周病による顎骨の吸収を防ぐ対策は、骨粗しょう症で骨密度が低下している方の歯を守る点でも重要となります。
毎食後の正しい歯磨きを習慣化して、プラークをしっかり取り除くお手入れの継続が大切です。
自分の口腔内状態に合った清掃器具を選んで、磨き残しを可能な限り抑える丁寧な磨き方をマスターしておきましょう。
口腔内の清潔を保って歯茎の健康を守る習慣が、将来的に自分の歯を一本でも残すための強力な基盤を築きます。
定期的に歯科検診を受ける
定期的な歯科検診の受診は、自覚症状が少ない初期の歯周病を早期に発見して対処する手段です。
歯科医院で専門的なクリーニングを受けると、日頃のセルフケアだけでは落とせない頑固な歯石が除去できます。
口腔内の炎症を抑えて歯槽骨の破壊を防ぐ対策は、骨密度が低下しやすい方の歯を守るうえでも重要です。
また定期的にチェックを受けることで、骨粗しょう症の治療薬による副作用のリスク管理にもつながるでしょう。
口腔内の健康状態を専門家に継続して管理してもらう習慣が、将来の抜歯リスクを大幅に減らすのがポイントです。
まとめ

歯周病と骨粗しょう症は骨の代謝を介して深く関係しており、双方の理解と対策が欠かせません。
どちらも症状が進むたびに深刻な症状が現れてしまうので、歯周病と骨粗しょう症がどんな病気なのか、何が原因で発症しやすくなるのか知ることが重要です。
生活習慣の改善や栄養摂取、丁寧なセルフケアと定期的な歯科検診を組み合わせるのがおすすめです。
日頃から口腔内と全身の健康管理を意識して、早めの予防に取り組んで健やかな生活を守りましょう。
参考文献
骨粗鬆症の予防|健康日本21アクション支援システム
歯周病と骨粗鬆症の関連|日本歯周病学会会誌
ビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死|厚生労働省
歯周病とは?|日本臨床歯周病学会
骨粗鬆症|日本整形外科学会
歯周病が全身に及ぼす影響|日本臨床歯周病学会
歯周病の治療方法|日本臨床歯周病学会
骨粗鬆症|慶應義塾大学病院 KOMPAS
