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 この秋、超新星がスクリーンに現れる。西川美和監督の5年ぶりとなる新作「わたしの知らない子どもたち」(10月16日公開)に主演する13歳の小八重葵美だ。性別を隠し、少年として生きることを選んだ戦争孤児の少女を力強くもしなやかに体現。映画関係者からは「とんでもない逸材」と絶賛の声が相次ぐ。直撃すると、緊迫した役柄とは正反対のあどけない中学1年生らしい素顔があった。(山内 健司)

 「うれしくてニヤニヤしちゃった」。デビュー2作目にして初主演作の完成品を見た時の感想を聞くと、素朴な笑顔がはじけた。チャームポイントはパッチリとした目元。そこに宿る「目力」が西川監督に評価され、500人超が参加したオーディションを勝ち抜いた。「お仕事始めてから目を褒められることが多くて、最初は戸惑ってたけど、だんだんうれしくなってきました」

 その愛くるしい目が、映画では一変。力強くもはかなさを秘める。少女たちも性的搾取の危機にあった戦後の混乱期に、髪を切り“少年”となって仲間と盗みなども働いて必死に生きる役を熱演。性別を捨て、世の中を敵視したようなまなざしは「反抗を意識した」。一方で、発育により女性である現実に引き戻される空虚な瞳も繊細に表現した。

 あぐらなどの普段しないしぐさには苦労したが、「先のことなんかいいんだよ。俺たちはこれでいいの」などの悪ガキらしい言葉遣いは難なくクリア。実生活で姉1人と弟2人がおり「けんかすると口悪くなっちゃうから」で、「難しくなかった」と得意げだ。撮影序盤は緊張で硬さもあったが、西川監督の「もうちょっとオーバーにやっていいよ」という助言で殻を破れた。「徐々に顔つきも変わって“強い少年”になれたと思うし、自信になった」と手応えを口にした。

 難役を演じ切ったその才能は芸能界に入る前から片りんがあった。小4時に漠然と「テレビに出たい」と思い、スカウトされることを狙って東京・原宿へ母、姉と出かけた。だが、声がけされたのは姉。諦めずに「“こっち見て”と、おやつを欲しがる子犬ぐらい過去一可愛い顔をしました」と“名演”。面接に呼ばれて道が開けた。

 学校生活の話題になると、表情がより和らぐ。「自分から話しかけられなくて友達はあまり…」と赤裸々に明かしたり、アニメや漫画が好きであること、入部した剣道部のことを楽しげに話す様子は、まさに等身大。今月にはトロント国際映画祭に参加するためにカナダへ渡る。「初海外で楽しみ。ポテト好きだからカナダのポテトを食べてみたい」と目を輝かせる姿には無邪気さも感じさせた。

 目標は「自分の名前を聞いて“その人知ってる”ってなるくらい有名になりたい」。映画関係者は「本人も作品も多くの映画賞に絡むのは間違いない」と断言する。この秋、「小八重葵美」は誰もが知る子供になる。

 《撮影前に原爆ドーム訪問》撮影前には資料館や原爆ドームへ足を運び、戦争への理解を深めた。少女には兵役へ行った兄(櫻井海音)がいて、軍人が身分証明書と履歴書を兼ねた軍隊手帳を持っていたことを知ると、「(少女の)お兄ちゃんも持ってたのかな」と思いを巡らせて役の解像度を深める機会にもなった。小学校では学ばなかった戦争孤児については「つらい思いをした子供たちがいたと知って悲しい気持ちになった」。戦争から遠く離れた世代だが、学んで演じたことで伝える使命感が芽生えた。「この映画で戦争のことを知ってほしい」と真っすぐに訴えた。

 ▽「わたしの知らない子どもたち」 西川監督が原案・脚本も手がける、戦争で家族も居場所も失って社会からこぼれ落ちた子供たちを題材とした作品。少年として生きることを選んだ少女(小八重)の姿を描く。ダブル主演の二階堂ふみ(31)演じる、敗戦で全てを失った教師の再生物語とともに紡がれる。トロント国際映画祭のコンペティション部門に出品され、オープニング上映作品に日本映画で初選出された。現地時間9月10日に上映予定。

 ◇小八重 葵美(こやえ・あみ)2013年(平25)5月28日生まれ、千葉県出身の13歳。25年4月公開の「#真相をお話しします」で映画デビュー。最近ハマった漫画は「万事快調<オール・グリーンズ>」。カラオケでよく歌うのは大森靖子。身長1メートル50。