「自分にまったく自信がなくて……周りの視線が本当に怖かったんです」

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 そう静かに語ったのは、2016年の映画『イタズラなKiss THE MOVIE』でヒロイン・相原琴子を演じた麻木玲那(旧芸名:美沙玲奈)さん(32)だ。

 少女漫画の実写化作品の主人公という華やかな役柄とは対照的に、学生時代の彼女は自分の容姿に自信が持てず、登校中も教室でもマスクが手放せなかったという。なぜ、それほどまでに「自分を嫌いになってしまった」のか――。

 現在は少しずつ前を向き、芸能活動を続けながらも実業家や裏方としての顔も持つ麻木さんに、コンプレックスを抱くきっかけになった10代のつらい記憶について詳しく伺った。(全5回の1回目)


麻木玲那さん ©細田忠/文藝春秋

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天真らんまんなヒロインとは真逆の性格だった

――映画『イタズラなKiss THE MOVIE』では、天真らんまんなヒロイン・琴子を演じられました。ご自身の学生時代と重なる部分はありましたか。

麻木玲那さん(以下、麻木) 出演した当時は、「琴子のイメージにぴったりだね!」と言っていただけることもありました。でも、正直に言うと、自分は琴子とは真逆の性格だったんです。

 琴子は明るくて前向きで、恋にも一途な女の子ですよね。でも私は、どちらかというと根暗で、人前に出ることが苦手なタイプでした。

――琴子とはまったく違う学生時代だったのですね。

麻木 そうですね。教室でも積極的に話すタイプではなくて、休み時間はみんなの輪に入らず、ずっと机に突っ伏していることが多かったです。女子高だったので恋愛とも無縁でしたし、学園ドラマのように先輩に憧れるような青春を送った記憶もありません。

――休み時間も一人で過ごされるほど、人の輪に入れなかったのはなぜでしょうか。

麻木 もともと体が弱くてマスクが手放せなかったこともあるのですが、それ以上に、自分の顔にまったく自信がなくて……。高校時代は学校にいる間、ずっとマスクを着けて、前髪で目元を隠して、できるだけ顔を見られないように過ごしていました。

――そこまでご自身を隠そうとしてしまったのには、どんな思いがありましたか。

麻木 周りの視線が本当に怖かったんです。お昼ご飯の時は、マスクを少しだけずらして食べていました。今思うと、周囲は察して見守ってくれていましたが、当時は今みたいにマスクを着けている人なんてほとんどいなかったので、逆に目立っていたんだと思います。

 クラスメートの半分くらいは私の素顔を知らなかったんじゃないでしょうか。マスクを外して街を歩いていても、私だと気づく人は少なかったと思います。

いじめや誘拐未遂が重なって「全部、私が悪いんだ」

――当時、どうしてそのような心理状態になってしまったのでしょうか。

麻木 小学校ではいじめがありましたし、クラスのみんなから無視されたりもしました。このお話をすると、「綺麗だから嫉妬されてたのでは?」と言ってくださる方もいらっしゃいますが、かわいくて人気者の子は、ちゃんと周りから愛されていたので、私はそう思いません。

 だからこそ、「全部、私が悪いんだ」と思い込むようになってしまいました。

――その思いが、先ほどお話しされていた、マスクで過ごしていた日々にもつながっていくのでしょうか。

麻木 そうですね。ずっとマスクをしていて表情が読めないからか、先生からも嫌われていましたし、学年で集まっている場で名指しされて怒られたり、生徒指導室へ呼ばれて、「クラスがまとまらないのはお前が黒幕だからだろ」と言われたこともあります。風紀違反なんて何もしていないのに、理不尽なことばかりで、本当に生きづらかったですね。

――それでマスクを手放せなくなったんですね。

麻木 幼少期のトラウマも大きいのかもしれません。実は、小学1年生の時、学校から帰宅して玄関のドアを開けようとした瞬間、後ろから知らない男性に突然抱き上げられて、マンションの地下へ引きずり込まれそうになったことがあるんです。

 本当に一瞬の出来事で、何が起きたのかも分かりませんでした。だけど、祖母がお守りとしてランドセルに付けてくれた鈴が鳴って、母がその鈴の音に気づいて駆けつけてくれたんです。

 犯人は警察が来る前に逃げてしまい、結局捕まることはありませんでしたが、大学生くらいの若い男性だったことだけは、今でも覚えています。

 その日はたまたま、母と習い事の見学へ行く約束をしていたので助かりましたが、もしあの日、約束をしていなかったら……。そう考えると、今でも怖くなります。その事件以来、男性に対する恐怖心が強くなり、学校へ行けなくなってしまった時期もありました。

「私はかわいくないんだ」と思うようになっていった

――幼い頃からさまざまな出来事を経験されてきましたが、その積み重ねが、ご自身の気持ちにも影響を与えたのでしょうか。

麻木 そうかもしれません。誘拐未遂やいじめなど、嫌な経験が重なってしまって、自分のことがどんどん嫌いになってしまったんです。

 それに、周りにはかわいい子がたくさんいましたし、いつもその子たちと比べてしまって、「私はかわいくないんだ」と思うようになっていました。

――その頃に抱いた思いは、今も心のどこかに残っていますか。

麻木 今でも鏡を見るたびに、「今日もブサイクだな」「今日は外に出たくないな」と思ってしまう日があります。

 もし、「自分のことが好きですか?」と聞かれたら、今でもすぐには「はい」とは答えられません。自分にしか分からないコンプレックスって、誰にでもあるものなのかもしれません。

「目覚めると運転席に知らない男が」18歳で車ごと連れ去られ…『イタズラなKiss』ヒロイン・麻木玲那(31)がロングヘアをバッサリカットした“切実な理由”〉へ続く

(佐藤 ちひろ)