開発者のこだわりが詰まった個性豊かなバーガー。ドムドムハンバーガー浅草花やしき店にて(写真・福田ヨシツグ)

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“攻めすぎ” と話題の商品で、SNSを盛り上げる「ドムドムハンバーガー」(以下「ドムドム」)。1970年に東京都町田市で誕生した日本最古のハンバーガーチェーンだ。最盛期は全国400店舗以上を展開したが、現在は26店舗まで縮小し、一時は “絶滅危惧チェーン” と呼ばれた。

 しかし近年は、独創的な商品開発を武器に注目を集め、5年連続の黒字とV字復活を遂げている。なぜ、彼らは挑戦的な商品を次々と生み出せるのか。本社の商品開発現場を訪れ、その秘密に迫る!

 ドムドム本社があるのは東京・浅草の雑居ビル。本社内の一角にあるわずか6畳ほどのキッチンが、数々の話題作を生み出してきた商品開発の現場だ。

 調味料や調理器具が並び、作業台が不足すれば冷蔵庫の上まで活用するこの場所は、かつて全国チェーンだった企業の “心臓部” としてはあまりにコンパクトな環境だ。

 ここで週2〜3回、新商品の試作を重ねるのが、2017年から商品開発を担当する営業本部本部長兼商品開発責任者の浅田裕介氏だ。

「当社の商品開発は、私ともう一人の2名体制。毎月1品ペースで新商品を発売しており、そのすべてがこの小さなキッチンから生まれています」

 この日、試作で腕を振るっていたのは、名古屋エリア向けに構想中の「丸ごと!!カニバーガー 名古屋みそ味」だ。

「現在は26店舗の規模のため、オリジナルソースを工場で大量生産するのは非現実的です。代わりに市販のソースを取り寄せて厳選し、必要に応じて複数ブレンドして独自の味わいを追求しています」

■「売れるわけない」のに売れたワケ

 驚かされるのは、商品化までの圧倒的なスピードだ。

「大手チェーンだと、商品会議の日程を調整したり、何段階もの決裁を経たりと、新商品の完成まで半年近くかかることも珍しくありません。ですが、うちは社長や社員に食べてもらってその場で意見をもらい、またキッチンへ戻って改良します。早ければ2週間ほどで商品化が決まることもありますよ」

 そう話しながら、浅田氏は出来たての試作品を担当社員へ手渡した。受け取った社員が向かう先は、藤崎忍社長がいるすぐ隣の会議室だ。

 数分後、会議室から小走りで戻ってきた社員は開口一番、「社長が『美味し〜い!』って!」。浅田氏は思わず笑みを浮かべ、社長の “合格点” に胸をなで下ろした。現場が緊張から解放され、安堵感が垣間見えた瞬間だ。

「商品開発は、いつもこんな流れです。毎回『おもしろい食材が手に入ったから食べてみて』『こんな組み合わせを考えたので感想を聞かせて』と声をかけ、試食してもらっています」

 思い立ったらすぐに試作し、改良を重ねて生まれた代表作が「丸ごと!!カニバーガー」だ。今では “ドムドムの顔” ともいえる存在だが、誕生までの道のりは順風満帆ではなかったという。

「当初は奇抜なメニューが少なく、商品会議で『冗談でしょ?』『見た目がグロテスク』『こんな高額バーガーが売れるわけがない』とさんざんな評価でした(笑)」

 ソフトシェルクラブを1匹丸ごと挟むという常識外れな発想は、社内でも “攻めすぎ” と受け止められていた。

 ところが、必死のプレゼンで発売にこぎつけると、状況は一変する。

「調理風景をSNSに投稿したところ瞬く間に拡散され、2カ月ぶんの在庫が数日で完売しました。輸入業者からも『国内からソフトシェルクラブが消えた』と言われるほど。会社全体の売り上げは約1.5倍に跳ね上がりました。カニさまさまです」

 この成功体験は “常識にとらわれない商品開発” を後押しする転機となり、「こうした商品も受け入れられる」という自信に繋がったという。

■メインターゲットは40〜50代&家族層

 SNSではインパクトの強い商品が注目されがちだが、浅田氏は「奇抜さだけを狙っているわけではない」と力説する。

「たとえば、過去に販売した『今夜は まいたけバーガー』には1個に約200gの舞茸をどっさり使用し、『春菊かき揚げバーガー』も特有の香りを存分に楽しめる量を使いました。いつも根底にあるのは、食材そのものの魅力を思い切り堪能していただきたい、という発想なんです」

 だからこそ、見た目だけを優先することはないという。

「インパクトだけでは長く愛されません。新作を待つお客様の期待に応えるため、『また食べたい』と思える味のクオリティを最優先しています」

 商品ラインナップにも、独自のバランス意識が光る。

「年間12種類以上の新商品を展開するなかで、インパクト重視のものばかりにならないように配慮しています。鶏胸肉の竜田揚げを使用した新発売の『ジンジャーチキンバーガー レモンタルタル仕立て』のように、 “美味しさ” をピュアに追求した商品も、必ず組み込んでいます」

 奇抜な商品がSNSで話題を呼ぶ一方で、同社が見据えるメインターゲットは、意外にも若年層ではないのだとか。

「店舗はスーパーやショッピングセンター内が多いので、お客様は40〜50代やファミリー層が中心です。ですから、若者向けの濃い味つけのジャンクフードではなく、甘すぎず重すぎない、やや大人向けの味作りを心がけています」

 浅田氏は、現在300本以上の新商品アイデアをストックしているが、本人は「余裕なんてないですよ」と苦笑する。

「似た商品を他社に先行されることもありますし、店舗運営の教育カリキュラム作成など、幅広い業務を兼任するようになり、商品開発だけに専念できるわけではありませんから。アイデア切れには、常にヒヤヒヤしています」

 そう謙遜しながら、大胆不敵な笑みを浮かべた浅田氏は、いつもの作業台へと戻っていった。

写真・福田ヨシツグ
取材/文・鮎瀬舞子(A4studio)