要介護1〜5に該当する人は約161万人に上り、要介護者やその家族が公的サービスに頼るのは当たり前となっている(写真はイメージです)

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 埼玉県川口市で発生したケアマネジャー(介護支援専門員)殺人事件。ケアマネの女性を襲った60歳の男(のちに自殺)は、自ら110番通報した際、「お金をだまし取られたので殺そうと思った」と話していたという。男は90歳代の母親と二人暮らしで、被害者のケアマネは母親の担当だった。

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 社会部記者は言う。

「被害者は事件が起こった6月1日、男の母親が受ける訪問診療に立ち会うために現場を訪れたそうです。母親は高齢であることに加え認知症にもなっていたようです。その介護をしていた無職の息子が、ケアマネが玄関に入ったところ刃物で切りつけた。男は以前から『親族の高座から金がなくなっている』と周囲に話していたそうですが、母親や親族がお金をだまし取られた事実は確認できていません。どうやら息子の一方的な思い込みで、精神的な問題やカスタマーハラスメント(カスハラ)の延長と見る向きもあるようです」

要介護1〜5に該当する人は約161万人に上り、要介護者やその家族が公的サービスに頼るのは当たり前となっている(写真はイメージです)

 2022年1月には同じ埼玉県のふじみ野市で、在宅医療を担う医師が患者の家族に散弾銃で射殺される事件も発生している。

 厚生労働省の発表によると、2024年度に訪問介護サービスを受けた要介護1〜5に該当する人は約161万人に上る。要介護者やその家族が公的サービスに頼るのは当たり前になっている。

 ちなみにケアマネとは、要支援・要介護認定者、もしくはその家族からの相談に応じてケアプラン(介護サービスの給付計画)を作成し、介護サービスを実際に行う事業者や自治体、デイサービスなどとの連絡、調整などを行う立場だ。別の見方をすれば、支援や介護を受ける本人はもちろん、その家族からも無理難題を押しつけられる立場とも言える。

 日本介護支援専門員協会が昨年3月に発表した「居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員の“やりがい”と“カスタマーハラスメント”に関する実態調査報告書」と同年8月に発表したその「追補版」には、ケアマネが受けるカスハラについて興味深い内容が記されている。

「土下座をしろ」

 まず驚くのは、過去1年間にカスハラを受けたと感じたケアマネが33・7%もいたことだ。そして「誰からカスハラを受けたか」という複数回答のアンケートでは、「利用者本人」と答えたのは44・3%で、「利用者の主介護者やキーパーソン」が71・8%と圧倒的だった。

 報告書にはカスハラの実態もまとめられている。その一部を抜粋しよう。

《耳が遠い方が多く、耳元で話して欲しいと傍に行くと太腿を手で触られたり、「夜が眠れんけ一緒に寝てくれ」等と言われることは日常茶飯事》

 ケアマネには気の毒だが、これなどはまだ可愛いほうだ。ホームヘルパー(訪問介護員)などからの相談を受けるのもケマネの役割だ。中にはこんな相談もある。

《買い物代行のための1時間のなかで、自分の話をされるので、買い物ができない。いざ、買い物に行ってくれば、買い直しをさせられる》(追補版より)

 まるで召使いのようにこき使う利用者もいるのだ。だが、その家族となるとさらにタチが悪い。

《サービスの調整段階で、希望する日時の調整ができず、代替案をお出ししているところで「私たちはこれだけ忙しいのに介護支援専門員は何をやっているのよ」と言われた。最初は、ご子息の配偶者(義娘)から勢いよく話をされたため、申し訳ない、万全ではないということをお伝えしていたが、代替案等を話しているうちに、ご子息からは一時間以上怒鳴られ、「土下座をしろ」という話になった。土下座はできませんとお答えして帰ってきたが、次の訪問時に心の負担になった》(追補版より)

 思い当たる節のある人はいないだろうか。エピソードはさらに続く。

「証人になってほしい」

《個人的には、利用者自身よりもキーパーソンやその他の親族からのハラスメントが多いと感じる。一番辛い思いをするのは、金銭や財産問題が絡んだ時に特に感じる、利用者が亡くなった後にも家族が相続問題で揉め始めると、キーパーソンを含めてそれぞれの親族が、電話をかけてきては、いろいろ聞いてきたり、自分の方が介護をしていたとか言い始めて、裁判をするので証人になってほしいなど言ってくるケースが何度かあった。こんなことに対応をしていたらとても仕事にならない》

 利用者の死後に家族のケアまでしなければならない。ケアマネの苦しみは次の一文からわかる。

《エピソード自体をあまり思い出したくありません》

 状況は深刻だ。さらに、食事や排泄の世話、着替え、洗濯、買い物などを行うホームヘルパー(訪問介護員)は利用者宅への訪問頻度も多い。全国ホームヘルパー協議会に聞くと、

「川口市の事件はたまたまケアマネの方が襲われただけで、ホームヘルパーが襲われた可能性も否定できません。ヘルパーが訪問介護を行う際は、実質的に密室状態と言えます。今回のような事件を予防するためには“単独では行かない”ということくらいしか思い当たりませんが、そうなると倍の人員が必要になります。ヘルパーの確保ですら難しい今、現実的な策とは言えません……」

デイリー新潮編集部