てんびん座の方向・約146光年先の恒星「HD 137010」を公転しているかもしれない、地球とよく似たサイズと公転周期を持つ太陽系外惑星候補「HD 137010 b」の発見が報告されました。


この天体は、表面が氷に閉ざされた、いわば「凍った地球」のような状態である可能性が高いものの、条件次第では液体の水を保持できる可能性も残されています。


【▲ 太陽系外惑星候補「HD 137010 b」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/Keith Miller (Caltech/IPAC))】

発見を報告したのはサザンクイーンズランド大学(研究当時)のAlexander Vennerさんを筆頭とする研究チームで、論文はThe Astrophysical Journal Lettersに掲載されました。NASA(アメリカ航空宇宙局)が2026年1月27日付で、研究チームの成果を紹介しています。


推定されるサイズと公転周期が地球とほぼ同じ

今回発見されたHD 137010 bは、すでに運用を終了しているNASAの宇宙望遠鏡「Kepler(ケプラー)」が、延長ミッション「K2」で2017年に取得した観測データから見つかりました。


解析の結果、HD 137010 bの半径は地球の約1.06倍と推定されています。また、主星であるHD 137010の周りを約355日という、地球の1年(約365日)に極めて近い周期で公転していると考えられています。


なお、主星のHD 137010は「K型」の主系列星に分類されています。太陽と同じく中心部で水素の核融合反応が起きていますが、「G型」の太陽よりもやや小さくて軽く、温度も低い恒星です(太陽と比較して半径は約0.71倍・質量は約0.73倍、表面温度は約4500℃)。


ハビタブルゾーンの外縁を公転か 環境は「大気」次第?

地球と似たような軌道ではあるものの、主星のHD 137010が太陽よりも小さく低温であるため、HD 137010 bは天体の表面に液体の水が存在し得る領域「ハビタブルゾーン」の外側の縁付近に位置していると推定されています。そのため、HD 137010 bが主星から受け取るエネルギーは、地球が太陽から受ける量の約29%に留まるとみられます。


ハビタブルゾーンには、惑星の歴史の大半を通じて液体の水が存在し得る「保守的なハビタブルゾーン(conservative habitable zone)」と、一時的にでも水が存在し得る領域まで含めた「楽観的なハビタブルゾーン(optimistic habitable zone)」という2つの定義があります。


観測データに基づくモデル計算によると、HD 137010 bが保守的なハビタブルゾーンに入っている確率は約40%、より範囲の広い楽観的なハビタブルゾーンまで含めると約51%と見積もられています。つまり、残りの約半分の確率で、ハビタブルゾーンの外(より寒冷な外側)にあると考えられるのです。


研究チームによると、HD 137010 bの平均表面温度は最大でもマイナス68℃程度と推定されています。これは、火星の平均気温(約マイナス65℃)よりも低い温度です。仮にハビタブルゾーンから外れていたり、地球と同じような大気しか持たなかったりする場合、惑星全体が氷に覆われたスノーボールアース(全球凍結)の状態(表面温度はマイナス100℃近く)になっていると予想されます。


しかし、研究チームは、液体の水が存在できる温暖な環境である可能性を完全に否定しているわけではありません。もしも惑星の大気に二酸化炭素が豊富に含まれていれば、温室効果によって表面温度が上昇し、液体の水が存在できる穏やかな環境になっている可能性があるからです。


さらなるトランジット検出に期待

今回の発見は、惑星が主星の手前を横切る「トランジット」という現象を利用したものですが、Keplerの観測データで確認されたHD 137010 bのトランジットは、わずか1回だけでした。通常、トランジット法(後述)で惑星の存在を確認するには複数回のトランジットの観測が求められるため、現時点ではあくまでも「惑星候補」という扱いになっています。


それでも、これほど近くにある太陽に似た恒星のハビタブルゾーン付近で地球サイズの太陽系外惑星が見つかることは稀であり、重要な発見として注目されます。今後、NASAの「TESS(テス)」やESA(ヨーロッパ宇宙機関)の「CHEOPS(ケオプス)」といった宇宙望遠鏡による追加観測が行われれば、この惑星が存在するのか、存在するのであればどのような環境なのかが、より詳しく解明されるかもしれません。


参考:太陽系外惑星の観測方法について

太陽系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。


「視線速度法」とは、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。


惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、ドップラー効果によって周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を得る分光観測を行うことで検出されています。


視線速度法の観測データからは、太陽系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。



【▲ 参考動画:太陽系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】


もう一つの「トランジット法」とは、太陽系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法です。


繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を知ることができます。トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。


近年では、トランジットの周期に生じるわずかな変動をもとに、重力を介して相互作用する別の惑星を捜索する手法「トランジット時間変動法(TTV法)」も用いられるようになっています。



【▲ 参考動画:太陽系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】


また、太陽系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。


惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、惑星の大気組成を調べることができます。


【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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