雑談がうまくなるにはどうすればいいか。実業家のひろゆきさんは「雑談の目的は空気をやわらかくすることなので、きっかけを投げるだけでいい。相手が受け取りやすいきっかけをつくるための簡単なトレーニングがある」という――。
2011年5月、ワシントンDC・ホワイトハウス前で取材中のひろゆき氏(写真=Elvert Barnes/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)

■雑談は“接続”のためのチューニング

「雑談って、それ、意味あるの?」

そう思う人はけっこういるでしょう。

僕も昔はそうでした。

でも、雑談ができるようになると、生きるのが楽になります。「うまくやろう」とか「気をつかわれてると思われたくない」とか、そういう余計な考えが消えていく。要するに、人間関係で力を抜けるようになるんです。

雑談って、いわば「どうでもいいことを、どうでもいい感じで言う技術」です。それができる人は、どんな場所でも生きていけます。だって、世界の9割は“どうでもいいこと”で回っていますから。真面目な人ほど「意味のある話」ばかりしようとします。ですが、社会は“意味のない会話”で実はできている。

【Close-up】コミュ力が高い人の「絶妙な雑談」はこちら

「今日、寒いですね」
「そうですね、本当に」

これで十分。でもすでに、人間関係は生まれています。

ひと言で言えば、雑談とは“チューニング”。理屈臭く言えば、人と人が接続するための通信確認。「この人、敵じゃないよね?」っていうWi-Fiチェックのようなものです。この接続確認をせずにいきなり本題に入ろうとすると、エラー表示が出る。つまり、空気がズレる。だから、雑談はちっとも無駄なことではありません。むしろ、社会を滑らかに動かす潤滑油だと言ってもいいでしょう。

■社会は「効率が悪い会話」でできている

「いやいや、雑談とか時間の無駄でしょ」

そう思う人もけっこういます。

僕も昔はそうでした。

でも、そういう人ほど、あとで人間関係に苦労している。無駄を削ったはずなのに、周りとのコミュニケーションで“摩擦”が起きてしまう。さっきも言ったように雑談はエンジンオイルみたいなものですから、入れておかないとギアが焼き付く。効率ばかり求める人ほど、この“焼き付き”に気がつけないんです。

結局、仕事も人間関係もギクシャクして、「なんでこうもうまくいかないんだろう……?」と悩む。原因はだいたい、雑談不足です。くり返しますが、社会って「効率が悪い会話」でできているというのが、僕の持論です。だから僕の配信動画も、雑談から始めています。

そもそも僕は、雑談が大の苦手でした。

中学か高校の頃にそれを自覚しました。

みんなが休み時間に「昨日のテレビ見た?」とか話してるのに、僕はそういう輪の中で固まってしまう。なぜって、「なんか面白いこと言わなきゃ」って身構えちゃうからでした。

笑わせないと会話が続かない。面白くないと会話の意味がない。そう思い込んでいました。

でも、“面白い会話”ってけっこう疲れるんですよ。毎回ウケを取ろうとするのも、しんどい。しかも、そういう「頑張ってる感」は相手に伝わります。相手だって、しんどくなる。お互いに空回りするだけなんです。

■内容ゼロでも人間関係をつなぐ糸

転機は、高校時代の帰り道でした。ある日のこと、同じクラスの人と駅まで一緒に帰ることになりました。

でも、話題がない。歩く靴音さえ聞こえてきて、気まずい。このまま沈黙を続けるのは地獄だな、と思いました。

で、なんとなく「今日、暑いね」と口に出したんです。相手が「マジで。汗止まらん」って返してきた。それだけです。でも、すごくホッとした。「なに、この解放感」と思った瞬間、何かが変わったんです。

いろんな経験をしてわかったのは、世の中の会話の9割は「オチがない」ことです。

会話に正解は要らない。雑談にもオチは要らない。目的は「空気を動かすこと」。ただ、それだけです。

「最近、雨多くないですか」
「うん、なんか多いですよねー」
「ですね〜」

この「ですね〜」のひと言に、人間関係をつなぐ糸がある。内容ゼロでも、そこに「安心」が生まれる。つまり、話の中身じゃなくて、“流れ”をつくるのが雑談です。こちらから投げて、相手の反応があって、ちょっと笑って終わる。この小さな往復が、人間関係をつくっていく。

ちょっと気取って言えば、雑談って「空気の循環」かもしれません。止まると淀む。回すと温まる。場が温まるんです。ですから雑談上手の人はよく「場を温めておいたよ」なんて言ったりする。まさにその言葉通りです。

■誰でもできる「雑談トレーニング」

じゃあ、どうすれば雑談上手になれるか。いえ、上手でなくても構わない。どうすれば雑談ができるようになるか。高校時代のエピソードに戻りましょう。

あの沈黙の恐怖を突破した日以来、会話は“面白い必要はない”とわかりました。

雑談の目的も、笑いじゃない。空気をやわらかくすることですから、「へぇ〜」「そうなんだ」、このリアクションがあるだけで、関係性は回り始めます。サービス精神が強い人ほど、「つまらないって思われないかな」と不安になりがちですが、実際そんなことを気にしてるのは自分だけ。相手はたいてい、自分の話をしたくてうずうずしてるものです。だから、こっちはきっかけを投げるだけでいい。

ボールを投げれば、相手はキャッチしてくれます。そのキャッチボールが雑談ですから、相手が受け取りやすい球を投げるのが、じつは最も大切です。どうすれば、いい球を投げられるか。

僕がした雑談トレーニングは、“独り言の練習”です。

とても簡単です。誰でも今すぐ始められます。家で、目の前のものを見たまま口に出すんです。練習ですから、きちんと声に出してみてください。

「コップに水がある。半分よりちょっと多いな。もう一口飲んだら、半分切る。注ぐか? いや、いいか」

これだけ。オチは要らない。雑学も不要。ただ、“見たまま言う”ことを続けていると、人と話すときにも自然に口が動くようになります。

写真=iStock.com/Orla
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Orla

■ “続ける力”ではなく“始める力”が会話力

要するに雑談の構造は、「独り言+相づち」。つきつめれば雑談とは、「独り言にリアクションが返ってくるだけ」のものです。

たとえば、僕が「コップの水、ぬるくなったなー」と言う。相手が「それ、ミネラルウォーター?」って聞く。そこで「うん、安いやつ」、と返す。これで十分、相手とのコミュニケーションが生まれる。すると「そういえば水で思い出したけど〜」なんて話は広がっていきます。だから僕は、雑談のコツを訊かれたら、必ず言います。「始めれば勝手に続く」と。会話って、“続けるもの”じゃなくて“始めるもの”ですから。

世の中には「雑談力を鍛えよう」みたいな本が山ほどあります。でも、たいていの内容は「話を続ける」ことばかり重視している。違うんです。大事なのは「話し続ける力」ではなく、「話し始める力」。

「いや〜、眠いっすね」「このコーヒー苦くないですか」「雨、降りそうですねー」

その一言だけで場が動く。話し始めればあとは勝手に起きていく。あえて言うなら、広がりやすいきっかけがいい。だから、相手と共有している目の前のことをただ言えばいいんです。

逆に、雑談が下手な人は、なんでも“自分の話題”に変えてしまう人です。相手はただ聞くしかありません。その話、知りませんからね。話題の主導権の取り合いの場からは、雑談は生まれません。そして決して、いい人間関係も生まれない。

■雑談は信頼関係をつくる“エアの握手”

「どうでもいい話」なら、誰でも話題に入れます。深い話をムリにしようとしなければ、そこに心理的な安全地帯が生まれます。その「ハードルの低さ」が大事なんです。

そしてそれは、ビジネスの場でも変わりません。

「この会議室、エアコン強くないですか?」とか「ミーティング、時間通りですね」とか、ちっとも意味などありませんが、それだけで場の空気が立ち上がる。結局、仕事の成果もそっちのほうが上がります。

写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

最後にもう一度言えば、雑談の本質は「確認作業」ですから、信頼関係の土台になります。

「この人、話しても安全だよね?」という“エアの握手”を雑談で交わして、相手との波長を合わせていく。うまくいけば、さらに合わせていける。雑談のチューニングで測れば、相性が良いか悪いかもわかる。「暑いですね」でも「寒いですね」でも、ひいてはそれが信頼関係のモトになる。

要するに、会話がうまい人って、話が面白いわけじゃない。“安心させるトーン”を出すのがうまいんです。「今ここに一緒にいるね」ということを、相手と確認するだけのこと。でも、それができればどんな場でも生きやすくなります。その第一歩が、雑談なのです。

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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)