『カブアカ』古賀真人の実践投資講座5 株式投資は「森羅万象」を読む力が重要だ

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森羅万象の情報を見る重要性

10月5日、石破茂自民党総裁の後継者として、高市早苗元総務相が小泉純一郎農水相を破って自民党総裁に選ばれました。これを受けて週明けの6日株価は一気に上昇。株価は一時4万8000円台後半を付けました。
その理由は高市新総裁がこれまで打ち出してきた経済政策が積極財政、金融緩和であることから、株高、円安、債券安の「高市トレード」が再始動したと見られているからのようです。
しかしながら、10月15日に開かれるとされていた臨時国会と首班指名については、与党公明党との連立維持、野党との協議がすすでいないため延期の可能性も出てきており、この先は見通せない状況になっています。

そこで思い起こされるのが、「為替は森羅万象が作用するので、不完全な情報しかないことを自覚し、謙虚にマーケットと対話する」という神田真人前財務官(現アジア開発銀行総裁)の言葉です。
私の投資スタイルはファンダメンタルズですが、神田前財務官の言葉から、これまではあまり重視していなかったチャートについても目を配るようになりました。テクニカル分析を推奨するつもりはありませんが、株式投資ではまさに森羅万象の情報を考慮する必要があると思っています。

少し前になりますが、このことを痛感したのはTOTO(5332)の株価でした。
TOTOといえば水まわり機器メーカーで、温水洗浄便座のトップメーカーです。中国人の日本での爆買いが始まった当初は、電気炊飯器と並んでTOTOの温水洗浄便座は人気の商品でした。
このTOTOの株価の水準が10年前とほぼ同じなのです。インフレが進む中でこんなことがあるのかと正直思いました。言い換えれば、10年前と企業価値が変わっていないということなのです。むしろ目減りしているとも言えます。
もちろん配当が出ているということで言い訳はできるのでしょうが、株価だけを見れば、このインフレ時代を考えれば現金と同じ価値ということで目減りしているという見方もできると感じました。

決算書の奥の奥を読みとく

株価が動かなかった銘柄としてはコニカミノルタ(4902)もその1つです。同社の第1四半期決算短信の決算書をよく見ると、違った一面が見えてきます。
同社の株価の推移を見ると、決算発表の翌日である8月1日の株価は542円まで一気に上がり、その後一気に下落しています。テクニカル分析をしている人であれば、たぶんここは損切りとなるところでしょう。
しかし、当時、私はコニカミノルタを有力銘柄として見ていました。
私が運営している『カブアカ』でのコニカミノルタの短信の評価は、下の画像のようなものでした。

表の色分けは、ピンクがポジティブ、黄色が中立、ブルーがネガティブで、太字が強調になります。そこでは、2025年3月期決算ではネガティブ/太字から、26年3月期の第1四半期の短信では一気にポジティブ/太字となり、注目銘柄にしています。

その理由は、同社の2020年の短信は、主力事業であった複合機や印刷の需要が減少し、コロナ禍によって販売サプライチェーンの停滞、医療機器・ヘルスケア事業の不振に苦しみ、経常赤字という内容でした。
そんな中で出された23年からの中期経営計画では、事業の選択と集中を行い、売れない事業を切っていくという会社の構造改革を実行するとうたっていました。そして、この中経の最終年度にあたる25年の決算は、剰余金は減少したものの、借入は一定という内容だったためネガティブとしました。

しかし、26年3月期の第1四半期では、借入が一定のままで剰余金が大幅に増えたことで、23年の中経を達成したと判断。さらに販管費・一般管理費も減少し、アメリカの相互関税に関わる影響については「非常に軽微」と発表していました。
この短信内容から、黒字転換し事業の構造改革も一通り終わり、新たな事業展開に移るであろうというのが、私が描いた今後のストーリーで見方もポジティブとしました。

さらにこれは私の希望的観測ですが、こうした事業転換の成功事例として富士フイルムがあること。また、競合大手のキヤノンも複合機から医療分野への事業転換を模索していることから、「自分たちならもっと成功させられる」とコニカミノルタ自身が考えていてもおかしくないだろいう思ったのです。
加えて将来的にはコニカミノルタのTOBなどにも視野にいれているのはないかとという勝手な妄想も浮かびました。

最終的にはPERは10.7倍、PBRは0.5倍と極めてリスクの低い銘柄に変わったことから、「金ピカ決算書」の銘柄として投資に値すると私は判断したのです。

下方修正、即、投資対象外とはならない

決算書と同様に、企業の株価に直結するものが上方修正や下方修正です。
企業は本決算発表後、翌期の業績予想を発表しますが、売上高が10%以上、営業利益・経常利益・当期純利益のいずれかが±30%以上予想値と差があれば、それが分かった時点で上方・下方修正を公表する必要があります。
当然のことですが、上方修正は株価にプラス、下方修正は株価にマイナスとなるわけですが、必ずしもそうとは言い切れない場合があります。
中でも下方修正は、その背景をしっかり見極めることでプラスとして捉えることもあります。

その典型的な例は、ペット保険最大手のアニコム(8715)でした。ペット保険は犬猫の数が子どもの数を上回る中で各社が参入してきました。しかし、すべてがうまくいくわけではなく、2024年にはアクサ損保が新規の保険販売を終了。アフラックも撤退を発表しています。
このうちアクサ損保は、既存契約をアニコムへと切り替えを進めました。アニコムはこの移管コストの発生によって、経常利益が40.7%減となり、下方修正を発表しました。
単に下方修正だけを捉えれば、マイナス要因に映ります。しかし、保険は継続性の高い商品です。一時的に利益がマイナスになったとしても、全体的な契約数は増えることになり、将来的にはプラスになります。ですから、この下方修正はプラスと判断できるのです。

ペットの医療費負担を軽減する保険の継続性は高い

ここまで過去の事例を元に決算書などから、私がその企業の将来像を想像しているかについて話をしてきました。
そこで今、私がもっとも懸念していることはアメリカの動向です。
それはトランプ大統領によって、アメリカはこれまでのアメリカではなくなってしまっているからです。
その典型例が、アメリカ政府によるインテル株の取得でした。これまでのアメリカであれば、大企業に手を差し伸べるということはなかったはずです。これをやってしまえば、挑戦者であるベンチャーの芽を摘み取りかねません。こうしたベンチャー企業が多く生まれてきたことがアメリカの強さであり、アメリカ経済を支えてきたアメリカンスピリッツだったはずです。その根本が大きく変わりつつあると感じているからです。

10月28日には、そのトランプ大統領が来日します。それに対峙するのが高市新首相であり、トランプ大統領と絶大な信頼関係を築いてきた安倍元総理の後継者ということで、アメリカと良好な関係を築いていってくれるものと期待しています。この首脳会談の方向性によって、また投資のチャンスが生まれるのではないかと注目しています。

東京市場の株価は上昇を続けていますが、高市新政権の与野党の枠組みは混沌としており、そんな高市政権の外交姿勢もわかりません。「投資は知の格闘技」といわれますが、まさに森羅万象の出来事・情報を幅広く集め、考え抜くことが、今、必要とされています。

■古賀真人『カブアカマガジン』
https://note.com/masatokoga

※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。