InstagramやTikTokなどのソーシャルメディアが、若者を意図的にSNSに依存させ、これによって青少年の心身の健康を損ねたとしてアメリカの19の州の学区がソーシャルメディア大手4社を訴えた裁判で、原告の訴えを一部認める判決が下されました。これにより、ソーシャルメディア企業は合計150件以上の訴訟で損害賠償を請求される可能性があると報じられています。

Meta, Google, TikTok Must Face School Districts’ Suits Over Addiction Claims - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-24/social-media-giants-must-face-school-districts-addiction-claims

Meta, Google, TikTok, Snap fail to stop lawsuits claiming their apps are addictive and harmful | Mashable

https://mashable.com/article/meta-google-tiktok-social-media-addiction-lawsuit

School Districts Notch a Win in Tech Addiction Case Against Top Platforms | PCMag

https://www.pcmag.com/news/school-districts-notch-a-win-in-tech-addiction-case-against-top-platforms

今回の大規模な集団訴訟は、SNS大手を相手に複数の教育当局が提起していた個別の訴訟を、多地区訴訟司法委員会が2022年10月に一本化してまとめたことにより発生しました。その結果、カリフォルニア州など19の州の学区が、Meta(FacebookおよびInstagram)、Google(YouTube)、ByteDance(TikTok)、Snap(Snapchat)の4社を相手に、ソーシャルメディアが若者に与えるもろもろの悪影響への責任を追及する裁判が始まりました。

裁判で学校側は、ソーシャルメディア企業がペアレンタルコントロールやセッション制限などの機能を適切に実装せず、無限スクロールやターゲティングアルゴリズムなどを駆使して子どもをSNS依存に陥らせたことにより、睡眠不足から深刻な精神衛生上の問題まで、子どもたちの心身の健康を損ねるようなさまざまな被害が発生したと主張しています。



そして、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事は2024年10月24日に、棄却を求める企業側の訴えを退けつつ、審理の対象となる学校側の訴えの範囲を狭める判決を下しました。

判決ではまず、コンテンツを表示するアルゴリズムなど特定の機能についての訴えは、インターネットやオンラインサービスの利用に伴う問題に関するプロバイダーの責任を免除する通信品位法230条に基づいて却下されるとの見解が示されました。

その一方でロジャース判事は、SNS各社がサービスの強迫的な使用を意図的に助長し、これによって子どものメンタルヘルス問題に取り組む学区に大きな負担が発生したことを認めた上で、企業はその責任の追及を免れないと指摘しました。

ロジャース判事は(PDFファイル)判決文に「『学区と地方自治体が主張する損害は、法律の救済を受ける範囲から遠すぎるか、または軽微すぎる』と被告らは主張していますが、裁判所はほとんどの点でこれに同意しません。原告となった学区の主張は、各州の過失法の範囲に十分収まっています」と記しています。



この結果について、学校側の主任弁護士であるレクシー・ハザム氏とプレヴィン・ウォーレン氏は、「この判決は若者のメンタルヘルス危機の最前線に立つ学校、教師、管理者にとっての勝利」と称賛し、判決を歓迎しました。

弁護士らは声明で、「Instagram、Snapchat、TikTok、YouTubeの依存性のある設計により、生徒たちは苦しんでいます。苦境に立たされているのは学校も同じで、予算が限られる中、危機的状況にある子どもたちを支援しなければならないという追加の責任がSNSのせいで発生することは、もはや教育的使命から逸脱しています」と述べました。

他方で、SNS各社は判決に反発しており、Googleの広報担当者のホセ・カスタネダ氏は「当社は若者たちや、メンタルヘルスおよび子育ての専門家と協力して、若者に年齢相応の体験を提供し、親には強力な管理を提供するためのサービスとポリシーを構築しています」と述べました。

海外メディアのBloombergによると、今回の判決によりSNS各社が直面する可能性のある追加訴訟は150件超に上るとのことです。