なぜ「ガソリンスタンド」減少? 30年で“半分以下”の理由は? 燃費向上で給油量減が要因? 今後存続するためには何が必要なのか

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30年で半分以上が減っている!?ガソリンスタンドを維持していくために行われていることとは?資源エネルギー庁に聞く

 現在のガソリンスタンドの数は2万7000軒あまりで、30年前と比べて半減以上の数字となっています。
 
 ガソリンスタンド(サービスステーション)が減っている背景にはどのような理由があるのでしょうか。
 
 そして地域のインフラが失われないためにどのような取り組みが行われているのでしょうか。

30年で半分以上が減っている!?ガソリンスタンドを維持していくために行われていることとは?資源エネルギー庁に聞く

 クルマを日常的に運転する人は、ガソリンスタンドの数が減っていると強く実感しているのではないでしょうか。

【画像】「えぇぇぇぇ!」これが給油口の 「意外な構造」です(24枚)

 1994年 に6万軒を超えていたガソリンスタンドは、2023年には2万7000軒あまりとなっています。30年間で、50%を超える減少幅です。

 まず率直に、何が原因でガソリンスタンドが減少しているのでしょうか。

 資源エネルギー庁の担当者は、経営者から見た「SS運営上の課題」(SSはサービスステーション)というグラフをはじめ、さまざまな資料を見せてくれました。

課題の筆頭として挙げられているのが、「燃料油の販売量減少」です。

 ハイブリッド車(HV)などの登場でクルマの燃費が向上し、それがガソリンスタンドにとっては痛手になっているということです。

 また、ガソリンスタンドの維持には、次のような問題も。資源エネルギー庁の担当者は次のように話しています。

「SS業界には、『ワンオーナー・ワンSS』という言葉があります。

 1人のオーナーが運営するガソリンスタンドの数は1軒を意味するものですが、同時に家族経営となっているケースが多いということです」

 そのため後継者がいなければ、そのまま廃業となってしまうことも少なくありません。

 この点は、SS運営上の課題にも「後継者の不在」という回答として表れているほか、同じく「施設や設備の老朽化・維持コスト捻出」の回答とも関連するといいます。

「タンクの入れ替え費用はケースバイケースですが、概ね2000万円ほどかかります。

 そのため、タンクの更新時期なのでこれを機に廃業する、という事業者さんがいらっしゃるのも事実です」(前出・担当者)

資源エネルギー庁「資源・燃料政策を巡る状況について」という資料に掲載されているSS運営上の課題のグラフ

 地域ごとの状況も見てみましょう。

 資源エネルギー庁では、ガソリンスタンドの数が3カ所以下の市町村を「SS過疎地」として定義。

 2024年10月11日に発表された最新のデータ では、計372市町村が該当します。

 内訳は以下のとおりです(2024年度末のデータ。かっこ内は2023年度末 の数)。

 0カ所:10町村(8)
 1カ所:96町村(97)
 2カ所:122市町村(114)
 3カ所:144市町村(139)

 具体的な地名を挙げると、東京の小金井市や神奈川の逗子市といった比較的、都市部に近い市町村の名もあります。

本当にあるの? 公設民営のガソリンスタンドとは?

 SS過疎の場所に住んでいればガソリンや灯油の入手に困ってしまうと消費者は思うでしょうからできるだけ過疎はなくしてほしいものです。

 一方で、資源エネルギー庁としてSS過疎対策を講じる理由は、何なのでしょうか。

「地域の燃料供給体制の維持が不可欠であることが1つ。

 もしガソリンスタンドがなければ、灯油配送が滞るなどで、自力で買い物に行けないいわゆる『交通弱者』に該当する人がさらに困ってしまう状況にもなりかねません。

 さらに、災害時においてガソリンスタンドは重要な燃料供給拠点となります。

 緊急車両や作業をするクルマにとって不可欠な拠点ですし、停電時に避難所や医療機関などが暖房を利用する際にも燃料が必要です。

 こうした国民の皆さんの安全・安心を守るため、SS過疎対策に取り組んでいます」(前出・担当者)

売木村のガソリンスタンド(画像提供:資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料流通政策室)

 それほど大切な場所であれば公営のガソリンスタンドをつくれないのか、と思う人もいるかもしれません。

 こうした意見に近い取り組みが、長野県売木(うるぎ)村でガソリンスタンドが維持された事例です。

 同村はかつて地元業者が営業していた村内唯一のガソリンスタンドを残すため、観光協会と村民有志で運営を続けてきました。

 しかし、そのガソリンスタンドもタンクの入れ替え時期が迫るなどで存続の危機に。

 そこで、SS過疎地対策検討支援事業の補助金を得て新たに建設し、運営は民間で行う「公設民営」のガソリンスタンドが、2020年から本格営業を開始しています。

「建設などにかかるコストを下げるため、タンクを地下ではなく地上に設けたガソリンスタンドです。

 これは実証段階のもので、国内でも売木村のガソリンスタンドだけにあるものとなっています」(前出・担当者)

 また、既存のガソリンスタンドを維持していくため、前出の『SS過疎地対策ハンドブック 』にはカフェやコインランドリーなどを併設する経営多角化がガソリンスタンド経営者に提案されています。

 もっとも、「ワンオーナー・ワンSS」が少なくない状況では、多角化するため人員を確保するなどの課題もあるといいます。

※ ※ ※

 なお、災害時の燃料供給拠点になるという話がありましたが、担当者は「災害時だけでなく平時からもお近くのガソリンスタンドを利用していただき、関係性を築いていただきたいと思います」と語ります。

 普段は値段でガソリンスタンドを選び、有事の際だけ地元のガソリンスタンドに頼ってしまうと、経営の持続性が失われてしまうからです。

 利用する私たち自身でガソリンスタンドと地域を守っていくためにも、次の給油は近所に行ってみるのもいいかもしれません。