2024年に結成30周年、2025年にデビュー30周年を迎えるSOPHIAが本日10月23日、ミニアルバム『BOYS and』をリリースした。同ミニアルバムは、1995年のデビュー作『BOYS』をオマージュしたもの。オリジナル作品としては11年ぶりのリリースとなる。

◆SOPHIA 画像 / 動画

新作『BOYS and』は、サウンド&アレンジやアートワークを含め、“SOPHIAがもう一度デビューする”をテーマとして制作された。初期代表曲のセルフカバーに加え、2023年に横浜Kアリーナで初披露された「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」、まっさらな新曲「I&I Wish」といった全7曲を収録。このほか初回限定盤にはデビュー当時限定販売されたVHS『blue on blue』を初DVD化した映像作品も付属するなど、原点も現在進行形も感じられる仕上がりだ。

インタビュー特集vol.1に続くvol.2は、当時のマル秘エピソードを振り返り、現在のメンバー5人が投影された『BOYS and』を詳細にわたって全曲解説。メンバー全員参加のロングインタビューから、SOPHIAの未来が見えるテキストとなった。


   ◆   ◆   ◆

■「State of love」「Like forever」は双璧
■僕の中ではこの2曲があって成立する


──アルバムタイトルの『BOYS and』の“and”の意味から教えてください。

松岡:ここで終わらないということです。『BOYS』という作品から繋がって続いていくという意味ももちろんあるし、今回の作品から“あなた”に繋がるという意味もある。とにかく“繋がって続いてる、一緒に”という意味の“and”です。過去に「-&-」という曲もありましたし、アルバム『ALIVE』のツアーに“そして僕らは老けて行く…”(philosophy-III TOUR'98「ALIVE」"そして僕らは老けて行く...")というのもありましたから。なので、作品単体で成立しているのではなくて、その前後を感じてもらえたらいいかな。

──そうなると、この先に『GIRLS』に繋がる可能性も?

松岡:あります。出しますよ、来年『GIRLS and』を。

──おぉ〜! ではまず、『BOYS and』収録曲について。ここには『BOYS』から「Kissing blue memories」「Secret Lover’s Night」「Like forever」のセルフカバー3曲が収録されたほか、3rdミニアルバム『Kiss the Future』から「State of love」、3rdシングル「Believe」のセルフカバーに加えて、復活後初の作品「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」、そして新曲「I&I Wish」の全7曲が収録されました。選曲の基準は?

松岡:これが面白いんですよ。まず、僕らの過去の歴史にまったく関わりがなかったけど、今トイズファクトリーでSOPHIAを担当してくれてる方。それと、僕らが'90年代中盤から'00年代初期までのトイズファクトリー在籍時に関わってくれて、SOPHIAを誕生から知ってる方。選曲は、そのお二人にお任せしました。10年ぶりの新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」を入れることは最初から決まってましたけどね。


▲松岡充(Vo)

──なるほど。確かにふたつの視点を感じる選曲かもしれません。では、そもそも『BOYS』はSOPHIAにとってどんな作品だったのでしょうか? 当時のエピソードを含めて教えてもらえますか?

豊田:今でこそアルバムを作るとなったら、まず曲を作って、それらを集めてというプロセスを踏んで作りますけど、『BOYS』は当時のライヴハウスで育てた楽曲を集めた作品集という感じかな。当時を振り返ると、自分は演奏能力もなかったし、メジャーでのアルバムの作り方やレコーディングノウハウもまったく知らなかったから、制作は大変でしたよ。今ではサクッとできることも、当時はもがいてもがいてましたからね。たとえば、そのときのレコード会社の人とかスタッフから「ロックバンドは一発録りで演るもんだ」と言われて、ベーシックは一発録りだったんですけど。その時点から苦労しました。

黒柳:事務所が決まったときにあった曲は、デモテープに入ってた4曲だけ。ライブでやってた曲を全部出すしかないという感じで、持ち曲のほとんどをレコーディングして作ったのが、当時の『BOYS』と『GIRLS』だった。

赤松:当時はシングルデビューするのが主流の時代だったんですよ。だけど、「たった1曲で自分たちが表現したいものを伝えるには無理があるから、ミニアルバムでデビューしたい」と松ちゃんが言って、『BOYS』でのデビューになったんです。

都:現代とは違って、知りたい情報をすぐ見つけられる術もなかったし。分かりやすくいうと、東京に出てこないとメジャーデビューもできないような時代だったわけですよ。その夢が叶って『BOYS』でメジャーデビューしたんですけど、華やかなお祝いとかすごい騒ぎが待ってるのかなと思いきや、そんなものはなにもなくて(笑)。アマチュアの頃に抱いていたメジャーのイメージとは違うな、と思ったのを覚えてる。

──『BOYS and』に『BOYS』収録曲を含め、“初期曲をセルフカバーしよう”というアイデアを聞いて思ったことは?

都:僕は単純に面白い企画だなと思いました。

赤松:僕もぶっちゃけ嬉しかったですよ。昔録った曲へのリベンジ…これはどのアーティストも絶対にやりたい気持ちがあると思うんです。そのリベンジの気持ちがライヴアレンジとして表れたりするんですけど、再び作品として残せるのは嬉しいことで。

──実際にレコーディングしてみていかがでしたか?

赤松:昔と同じように演奏しても今のテイストが入る、という意味ではやはり昔とは違う。それは、今回の変化ではなくて、『BOYS』リリース当時から現在まで、ライブを積み重ねていくうちに得た成長だと思うんです。だから、ありきたりな言い方をすると、お客さんと一緒にライヴで育てたアレンジですよね。つまり『BOYS and』に収録したセルフカバーはお客さんと作った、というのが僕の感触です。


▲豊田和貴(G)


▲黒柳能生(B)

──では、初期曲をセルフカバーするにあたって一番心掛けたのはどんなことでしたか?

松岡:今までのレコーディングではディレクターやプロデューサーが常にいて、その方と僕が中心となって作品の方向性やアレンジを創っていたんです。だけど、今回はそういう立場の方を置かずに、作曲者のやりたいことが第一優先。アレンジをあまり変えないのであれば、音色やフレーズを進化させたとしても、あの頃に聴いて感じたことを思い出せるものに。アレンジを大きく変えるのであれば、その曲が持つすべての思い出を包括して表現できるものに、というテーマで進めました。

豊田:自分が心掛けたことは原曲の良さを最大限に生かすということ。長い音楽経験で培ってきたものを使って調理して、曲をブラッシュアップした状態で収めるということですね。

黒柳:今、普通に弾いたらどうなるか、それをやった。俺は小節の中であっちに行ったりこっちに行ったりするようなフレーズを組み立てるんだけど、『BOYS』を作った当時そんな発想はなかったし、思ってもできなかった。今は普通に8ビート刻むだけでも当時とは全然違うし。

赤松:今の俺が過去に戻って、これらの曲を叩いてみたらこうだった、という答えかな。当時はここまで考えられなかったし、俺自身SOPHIAを離れて気づいたことがたくさんあって。活動休止の9年間のうちに培った、メンバーに寄り添えるドラムや歌心。それをモットーに叩きました。

都:僕は、“大人の音楽”。SOPHIAが年相応のロックバンドに見られるようなサウンドやアレンジを意識して創っていきました。今までのSOPHIAの概念にとらわれずに。

──と言いますと?

都:復活公演となった日本武道館や大阪城ホールであれだけの種類のキーボードを並べたり、<SOPHIA Premium Symphonic Night>でグランドピアノを弾いたのは、年相応の本物の音を鳴らしたかったからで。今回のレコーディングもその延長線上なんですよ。昔の『BOYS』を改めて聴いたら、“これはダメだ”っていうところが僕なりにいっぱいあったんですけど、それはそれでいい。デビュー作は、ほとんどのアーティストにとってそんなものだし、当時聴いてたファンにとっては、それが今も宝物だから。ただ、みんなが言ったように自分もその間、成長してきた。そこは今回、前面に出したかったし、そうでなければ年相応の音楽にはならないわけで。だからこそ今回僕は、全て手弾きにこだわったんです。音色ではなく音符で広げて、ハーモニーを豊かにすることも意識して。


▲都啓一(Key)


▲赤松芳朋(Dr)

──では、ここからは収録曲のひとつひとつについて解説をお願いします。1曲目は「State of love」。

松岡:僕の中で「State of love」と2曲目の「Like forever」は双璧なんです。1995年にメジャーデビューするとき、“俺らは無敵だ”と思っていた、だけど阪神淡路大震災があって、自分らの無力さを思い知らされた。そんな中でツアー<SOPHIA TOUR '95 もしもあなたに届くなら…>で全国7ヵ所を回ったんです。ボロボロになって助けを求めている地元を感じながら、俺たちは夢に向かって“イェー”って拳を上げて盛り上がってる…そこにすごく違和感があって。そのときに創ったのが「State of love」と「Like forever」。僕の中ではこの2曲があって成立するので、曲順もこうなりました。

豊田:「State of love」はデビュー前からあった曲なので、懐かしかったです。青春です。最初に開催した無料ツアーから演ってましたね。

黒柳:5曲目の「Kissing blue memories」とか、『BOYS and』には入ってない「Early summer rain」もそうだけど、頭っからパーンとキーボードが鳴るSOPHIAらしい曲だよね。ギターのジャーンではないサウンドアレンジは、当時からSOPHIAにあったな。

都:そのイントロからしてキラキラしてますね。これは、少しファンクな感じで、ロックンロールなピアノアレンジにしました。

赤松:僕は技術が全くない状態でSOPHIAに加入しちゃったというのもあって、ドラムがすごく難しい曲でした。頭打ちや16ビート、どれも当時の自分がちゃんと叩けなかったビートのオンパレードで、悔しい思いをしたのを覚えてる。

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■SOPHIA復活をお祭りで終わらせないためにも
■音楽でちゃんと刻まないと、と思って創った


──2曲目は「Like forever」。

松岡:さっきも話したように、「State of love」と「Like forever」があのときに持っていたものは1mmも欠けてはいけないと、今回アレンジするにあたってそう思っていたので、「Like forever」に関しては最後までやり切りましたね。これは都が創った曲なので、まず自分の歌でアプローチして、もう一回創り直してもらったんですよ。そうしたら見事な形に仕上がった。

都:一番最初にベーシックは録ったんですけど、そこに乗った松ちゃんの歌を聴いたり話したりして、そこからまるっきりアレンジを変えたんですよ。夜中にスタジオに行って、頭からサビ手前までをアナログシンセを弾いて今の形にしたんです。そのあとのミックスのときかな? 松ちゃんと話して、「サビもこのままでいったほうがいいね」ってなったので、その場で弾いて変えましたね。

豊田:今のSOPHIAがやったらこうなる、という最新型サウンドになったと思います。

黒柳:ミドルポップだけどちょっと哀愁があるから、8ビートでガツガツいくよりも、しっかり聴かせる8ビート。実はこういうベースが演奏的には一番難しい。

赤松:阪神淡路大震災に対しての曲ですが、僕にとっては上京物語的な曲でもあるんですよ。松ちゃんとジル(豊田)くんが僕の実家に迎えに来てくれて。トラックに荷物を積んで、僕の家から神戸の景色を眺めながら東京に向かう。そのときの神戸の風景を今も思い出す曲です。僕はここから旅立って東京で頑張っていくんだという、自分に対する応援ソングのような存在でもありますね。


▲松岡充(Vo)

──そして復活後の第一弾新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」。

松岡:1曲目「State of love」と2曲目の「Like forever」が『BOYS and』の“and”の部分で、そこから繋がってこの「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」になったんだよ、ということを伝えるために、3曲目に収録しました。SOPHIAの歌詞の世界観のひとつにある、社会の中の自分や、社会と切っても切り離せない存在の自分っていうものを、当時は稚拙だったけど「State of love」と「Like forever」で表現した。

──なるほど。

松岡:「State of love」はあんなに明るい曲ですけど、“俺たちの愛の有様はこんなもんじゃないだろ”という疑問を投げかけた曲で、基本的には「Like forever」と同じ問題提起した2曲なんですね。そこから30年後、僕らはまだ「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」という曲でそこに向かおうとしている。そこが3曲に直結しているんです。「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」は、SOPHIA復活をお祭りで終わらせないためにも、僕らが生きていくための糧になり得るのであれば、それを音楽でちゃんと刻まないと、と思って創った楽曲です。

赤松:松ちゃんがそれぞれのメンバー特性をイメージして創ってくれた曲なので、レコーディングはそこに自分の色をプラスするだけでよかったんですよ。だから僕は、最初から馴染み深い感じがした曲です。

都:最初にデモをもらったときに話をしたら、松ちゃんが思い描く世界観とかイメージがすごく確立されていたので、それに従ってプレイした感じですね。この曲も今現在の年相応な音になるように、バックにアナログシンセでブラスみたいな音を入れたり。オルガンは今の自分のプレイスタイルが前面に出ていると思います。

豊田:復活したSOPHIAの久しぶりの新曲であり、久しぶりのレコーディングをした、その一発目ですね。


▲豊田和貴(G)


▲黒柳能生(B)

──続いて4曲目は「Secret Lover’s Night」。

松岡:「Secret Lover’s Night」と「Believe」は同時に創ったんです。「Believe」はずっとライブで演り続けて、今となってはSOPHIAの顔と言える曲になったんですけど、「Secret Lover’s Night」は同じ魅力を持っているのに、あまり演らなかった。こっちを演り続けてたら「Believe」じゃなくて「Secret Lover’s Night」が顔役の曲になっていてもおかしくない。代表曲ってそういうものですよね。

──分かります。

松岡:当時、SOPHIAはアイドル的な見られ方もしていたし、そういうワチャワチャしたバンドが演るメロディアスな8ビートっていう立ち位置の曲が「Believe」であり「Secret Lover’s Night」でした。ところが30年経ち、さまざまな歴史が重なって「Believe」は単純なラブソングではなく、ファンの人たちとSOPHIAの信頼関係の証というところまで発展したし、変容していった。一方の「Secret Lover’s Night」は当時のまま止まってる。だからこそ、'90年代にしかなかったコテコテの8ビートやフレージングをはじめ、無条件にハッピーになれる“これこれ!”って感じを今回はそのまま出したかった。『BOYS and』では3曲目までリアルを追い求めたからこそ、当時の『BOYS』の感情を思い出してもらうという気持ちで、4曲目に「Secret Lover’s Night」を置きました。

豊田:松ちゃんの言うように、長らく演ってない曲で、演奏すること自体久しぶりだったから、逆に新曲のように新鮮でした。とはいえ、結成当時から存在していた曲なので、僕にとっては、この曲も青春の欠片なんですよ。自分が影響を受けた'90年代バンドのフレーバーをいっぱい散りばめているんです。

赤松:うん。初期のライブの中でどんどん育っていった曲だったんだけど、あまり演らなくなって。自分の中ではもっと脚光を浴びてもらいたい曲ですね。

都:昔の形は残しながら、広げられるところは広げていきました。キーボード的には、全てをアナログシンセで弾いたので、音の感触はこれまでと違うと思う。

黒柳:俺がSOPHIAに加入する前からあった曲だよね。脱ヴィジュアル系みたいなものが、ポップなサウンドに表れていると思う。そういう気持ちがあったから、俺たちは最初から全員がステージネームみたいなものではなく、本名を名乗ってたんだよ。サウンドとしても、キーボードがいるヴィジュアル系バンドなんて、当時周りにはいなかったと思う。


▲都啓一(Key)


▲赤松芳朋(Dr)

──5曲目は「Kissing blue memories」。

松岡:都の曲なのでアレンジを任せたら、ハーフテンポにチェンジしてて、すごくびっくりした(笑)。

都:ははは。Bメロはハーフテンポにしたかったんですよね。それをレコーディング当日に言って、メンバーに演ってもらったんですけど、そこはガラッと変えた部分ですね。あと、この曲は出だしのところで上のコードをつけ加えました。そうすることで、もっと曲に広がりをもたせることができたかな。そういう細かなアレンジはいろんなところでやってますね。

豊田:だいぶ印象が変わったんじゃないかな。今のSOPHIAがプレイしたらこうなるというが、特に表れてる曲だと思います。昔のバージョンと聴き比べてもらったら、サウンドはかなり違うと思うし。これも最新型SOPHIAのアプローチって言える曲ですね。

黒柳:分かりやすくライヴで盛り上がる曲だよね。ベースソロも入っているんだけど、一番最初のデモからベースソロは入っていたと思う。

赤松:SOPHIAに加入して、2ビートというものを初体験したのが「Kissing blue memories」。さっきも言ったけど、僕は2ビートが苦手だったので、当時めちゃくちゃ練習しましたよ。今は全然余裕なんですけど。でもね、苦手だった頃の意識がライヴ中にパッと蘇ることがあって、今でも足が止まりそうになるんですよ。という意味では、僕にとってのトラウマ曲(笑)。もっと言えば、激しい中にもメロディアスで優しい一面があるというか。SOPHIAって1曲のなかでいろんな顔とかジャンルを見せたいバンドだから、器用じゃないとできないんです。今は、どんなジャンルの曲だろうが、歌を一番前に出すことが僕の仕事だと思いながら叩いています。

──6曲目は先ほども少し話があった代表曲「Believe」。

松岡:原曲に忠実に、8ビートの良さを残すほうに重きを置いたかな。本当は最初、ド頭にヴォーカルソロをつけたり、コーラスももっと入れてたんですけど、それもかなりカットして。5ピースの削ぎ落としたサウンドをメインにしたほうが、「Believe」が持ってるものを守れるんじゃないかなと思ったので。

豊田:今でも思い入れが強い曲です。初期から現在までSOPHIAを引っ張ってくれた代表曲のひとつ。

黒柳:“SOPHIAとして最初に作った曲だ”というところにファンのみんなが思いを投影して、物語がどんどん生まれて、曲が育っていく。それがバンドの中で一番うまくいった曲じゃないかな。

赤松:SOPHIAに加入するために、一生懸命練習した曲ですね。「Believe」のテンポが当時の僕には速すぎたんですよ。そのことを松ちゃんに相談したら「大丈夫。お前が楽しそうに叩いてればみんなは認めてくれるから」って言われて。その通りに演ったらSOPHIAに入れました。今はこのテンポも余裕ですけどね(笑)。

都:アレンジはストレートな形にしました。今回、ピアノは全曲生の音で入れたかったので、自分のスタジオではなくてビクタースタジオで録りました。ピアノの音をキレイに録れるスタジオがあるんですよ。あと、「Believe」はもう少しだけ跳ねた感じを出したいというのが自分の中にあったんです。昔のビートロックみたいな感じですよね。だから、イントロのオルガンバッキングを少し変えて、Aメロのコードももっと滑らかで美しい流れにしましたね。

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■あなたは僕自身、僕はあなたなんです
■それこそが究極の願いなのかな


──そして7曲目、ラストナンバーが新曲「I&I Wish」。

松岡:人に付加価値を与えるものが音楽であったり、エンタメだと言われがちですけど、僕は生きるために、人が立ち上がるために、またはボロボロになった人の支えになったり、勇気になったり、救いになるのがエンタメだと思っているんです。そうなった例は過去にもあって。今回、この曲のモチーフになったのはボブ・マーリーなんです。僕は彼の超ファンではないけど、リスペクトするアーティストの一人。当時、ボブ・マーリーのライヴが内戦を収めた歴史があるじゃないですか。もし僕らが演っているエンタメに意味があるのであれば、先人として演ってる人たちが音楽で世界を変えたり混乱を止めたりしたという歴史を、いつか僕らもできたらという願いがあって。今、日本に内戦があるわけではないけど、「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」でも言ってるように、現代には現代の戦いがある。

──はい。

松岡:それはインターネットの中であったり情報社会にあるわけで。潤いや優しさ、思いやり、自分自身をもっと大切にしようよ、と。一個人からそれが周りに広がっていけば、もっともっと平和な世界になるんじゃないかなと。そこに少しでも気づいてもらうためのエンタメ。それなら創る意義があるんじゃないかなと思っているんです。それは僕だけの願いじゃなくて、あなただけの願いじゃなくて。あなたは僕自身、僕はあなたなんですよって言えるような…それこそが究極の願いなのかなと思ってこのタイトルになりました。

──まさに「I&I Wish」ですね。

松岡:“You&Me”だと、“今は一緒にいるけれど、あなたはあなたの人生、私は私の人生”という感じで、あなたと私は別の人という考え方になると思うんですね。だけど、ラスタ(ジャマイカの宗教)の考え方は、“あなた=You”って言葉を使わない。“あなた=I”なんです。子供にも、街を歩いてる人に対してもそうで、“I&I”って言うんです。“あなたの痛みは私の痛み、私の喜びはあなたの喜び”という考え方なんですよ。それがボブ・マーリーが奏でるような音楽になり、争っていた人々がビーチで踊り出すという。USAフォー・アフリカの「We Are The World」もそうじゃないですか。SOPHIAも同じ音楽であると考えれば、僕らも目指したいですよね、エンタメの力を。そういう考えのもとに創った楽曲です。


▲『BOYS and』ジャケット

──素晴らしい。

松岡:それと、ひとつ種明かしをすると、歌詞の最後に“I Believe to myself”って入れてるんです。“to myself”とは『GIRLS』収録曲の「MY SELF」のこと。歌詞の“もしもあなたに届くなら”はさっきお話した最初のツアータイトルだし、“I Believe”の「Believe」は僕たちが信じた真実。初期に使っていたワードをいろいろ入れ込んで、次の『GIRLS and』に繋げています。この曲にはシタールの音を入れているんですけど、それは「君と揺れていたい」の音をフィーチャーリングしたくて、わざわざ入れたんですよ。SOPHIA初期を総括するように、この曲のエンディングではトモ(赤松)がドラムで「街」のフレーズをフィーチャーしてるんです。

赤松:この曲は松ちゃんの必殺技ですよね。キタキタ!と思いました。ただ、ドラムパターンはあまり叩き慣れてない感じだったので、ちょっと難しかったです。そもそもテンポが遅い曲って難しいんですけど、SOPHIAはそういう曲が多いんですよね。

黒柳:俺もデモテープの段階からTHE松岡充だなと思った。なにか伝えたいことがあるとき、サウンドメイクも、その演出のひとつなることを表せた曲。その最新版だよね。

豊田:ここでこんな曲を持ってくるということは、ずっと温めてたのかなと思いました。デモからアコギが入っていたので、都とディスカッションしながら、ディレクションしてもらいながら、今回のレコーディングを進めていったんです。

都:キーボードは、曲の展開がより分かりやすく伝わるようにピアノフレーズを入れたり、伝えたいことが音でさらに伝わるように、というのを念頭に置いてアレンジを考えていった感じです。

──『BOYS and』はどんなSOPHIAが詰まった作品になったと思いますか?

豊田:揺るぎないSOPHIAサウンドですね。各自の役割分担、その役割を全うして、それが融合して一番いい形のサウンドになってると思います。

黒柳:当時は下手くそだったから練習するしかなくて。「ああでもないこうでもない」って言いながら、説明書がないプラモデルを作ってた感じ。「どれが合うかな?」って言いながら、みんなでね。だけど、今の俺らは完成図に向かって図面を見ながら話ができる状態だから。どっちが正解かは分からないけど、それは今のSOPHIAサウンドを聴けば分かると思う。

都:サウンド的には、豊かにしたかったし、それが年相応の見せ方として形になったと思います。


▲初回限定盤付属ミニポスター

──初回限定盤には『blue on blue』を初DVD化した映像作品が付属するところも注目です。

松岡:初海外のイタリアロケで、現地に到着するなり撮影で。めちゃくちゃ恥ずかしかったですよ。イタリアの街中で“ヴィジュアル系の衣装着てなにやってるんだろう”って思いましたから。その撮影が終わったと思ったら、「夜のロケもあるから」と言われ。

──スケジュールが詰め込まれていたわけですね。

松岡:そう。で、あの「KURU KURU」のストーリーは僕が考えたんです。どういう作品に仕上げたかったかというと、モンキーズのMVみたいにしたかったんですよ。ビートルズじゃなくてモンキーズなんです。モンキーズは、ビートルズに触発されたアメリカの音楽業界が作り出したアイドルグループだったと言われているじゃないですか。僕は当時彼らにシンパシーを感じてたんですよね。「ロードムービー風にして、8ミリで撮ってくれ」って映像テイストもリクエストしました。

黒柳:そうだね。ビデオじゃなく全編8ミリフィルムで撮ってる。ロードムービーみたいな感じは、これも脱ヴィジュアル系の映像だよね。あとは、俺たちSOPHIAの初海外。初海外でイタリア。めちゃめちゃバブルだったよね。ありえない。

豊田:松ちゃんが言ったように、現地ではめっちゃ撮影が詰め込まれてて大変だったんですけど、ご飯は美味しいし、初海外だからとにかく楽しかったという記憶です。僕は、この映像を見た皆さんの「SOPHIA、めっちゃ若っ!」っていう反応が楽しみです。

赤松:兵庫県の片田舎で生まれ育った人間が、20歳のときにいきなり東京に連れ出され、その1年後にデビューしたと思ったら、急に海外に連れていかれ。頭の中がまったく追いついてないから、この映像を見ても夢の中の出来事みたいな感じでフワフワしてるんです。こっぱずかしくて見られない(笑)。

都:僕はまだこのビデオを持ってますよ(笑)。恥ずかしいですよ、いまさらながら。でも、ファンの人たちが喜んでくれて、これで少しでもCDを手にとってくれる方が増えるのであれば、それはそれでいい。


──最後にミニアルバム『BOYS and』について、みなさんからメッセージをお願いします。

豊田:今現在のSOPHIAサウンドが『BOYS and』にあることに間違いないんですけど、これをきっかけに過去作『BOYS』も聴いてほしい。今改めて『BOYS』を聴くと、涙が出るぐらい可愛い俺たちの青春なんです。今作をきっかけに過去の俺たちとも繋がってほしい。

黒柳:好きとか嫌いで判断してもらうのは構わない。だけど、こうでなきゃダメだという先入観だけで排除してしまうことは、すごくつまらないと俺は思ってる。最初から拒絶するんじゃなくて、チャンスがあるなら聴いてみたらって俺は思ってる。

赤松:収録曲は皆さんに聴き馴染みのあるものなんですが、アレンジも含めて、全曲新曲だと思って聴いてほしい。原曲は30年前のものなので、音楽的には今ではやらないようなキメもあったりするんですけど、サウンドは現代的ですし、楽しめるはず。今の世代の人には一周回って新鮮に感じるのかなと思います。若い人たちのお父さんお母さんはSOPHIA世代だろうし、家族みんなで聴いてほしいですね。

都:「30年前と変わってない」と言われるのは絶対イヤだと思ってたんですよ。だから、“SOPHIAはこういう風に生まれ変わった”ということがちゃんと伝わるものにしました。それが伝わらないと、休止していた意味がないから。活動休止期間中はメンバーそれぞれ…たとえば僕は都啓一というブランドでいろいろなことをやってきた。自分の人生において、それを刻まないといけない一番のタイミングが『BOYS and』だったと思う。

──はい。

都:聴いてみて、もしかしたら“これは違う”と感じる人もいるかもしれない。けど、“それは申し訳ない。でも、これが俺のミュージシャンとしての人生だから”と思ってる。年齢も年齢だし、あとどれくらいステージに立てるか分からない。音楽家、いちミュージシャンとしての自分を大事に、その上で“しっかりといいものを創ったよ”と自信を持って言える作品です。

松岡:めちゃくちゃ新鮮なものができたと思います。“新曲は1曲で、あとはオリジナルのカバーか”っていう感覚で聴くと、全然違う味がすると思う。噛めば噛むほど、すごく残るもののある作品に仕上がりました。

取材・文◎東條祥恵
撮影◎小松陽祐 (ODD JOB LTD)
ヘアメイク◎戸倉陽子/狩野典子

■ミニアルバム『Boys and』

2024年10月23日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
TFCC-81109〜81110 \5,500(税込)
CD 全7曲収録
DVD:『blue on blue』(「Eternal Flame」「KURU KURU」+ Private in Rome)
【通常盤(CD)】
TFCC-81111 \2,420(税込)
CD 全7曲収録
▼CD収録曲
1. State of love
2. Like forever
3. あなたが毎日直面している 世界の憂鬱
4. Secret Lover's Night
5. Kissing blue memories
6. Believe
7. I & I Wish
https://sophia-eternal.jp/contents/856330








■30th Anniversary第二弾 <スターライト>復活+<シンフォニックナイト>再演

▼<SOPHIA Premium Symphonic Night in 横浜BUNTAI>
10月30日(水) 神奈川・横浜BUNTAI
open17:30 / start18:30

▼<SOPHIA LIVE 2024 “スターライトヨコハマ”>
10月31日(木) 神奈川・横浜BUNTAI
open17:30 / start18:30

▼<SOPHIA LIVE 2024 “スターライトコウベ”>
11月04日(月/祝) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
open16:00 / start17:00

【チケット】
・一般指定席:11,000円
・着席指定席:15,000円
一般発売(先着):10/5(土)10:00〜 ※予定枚数に達し次第、販売終了
・mu-mo TICKET:http://r.y-tickets.jp/sophia2402
・イープラス:https://eplus.jp/sophia/
・チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/sophia/
・ローソンチケット:https://l-tike.com/sophia/






■ミニアルバム『GIRLS and』

2025年春リリース予定

■ライブ映像作品『SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール』

2024年秋リリース予定

■『SOPHIA 30th Anniversary × JOYSOUND直営店コラボキャンペーン』

実施期間:10月2日(水)〜12月1日(日)
※キャンペーン開始時間および終了時間は各店舗の営業時間に準じます
キャンペーンサイト:https://shop.joysound.com/campaign/sophia_2024/






関連リンク

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◆SOPHIA オフィシャルTwitter
◆SOPHIA オフィシャルYouTubeチャンネル
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