TSMC

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あまり好調でも問題だ。世界の先端半導体生産を事実上独占している台湾TSMCをめぐる微妙な気流があちこちで感知されている。相次ぐリスクを解決できなければ最近の成功がかえって毒杯になりかねないという警告まで出ている。

IT業界によると、中国シャオミは最近スマートフォンの頭脳の役割をする独自モバイルアプリケーションプロセッサ(AP)開発に成功したという。シャオミはこのチップをTSMCの最先端4ナノメートル(ナノは10億分の1)あるいは3ナノプロセスで来年から生産する方針だ。シャオミはファーウェイとともに中国を代表するIT企業で、アップルとサムスン電子に続き世界のスマートフォン市場で3位を守っている。

米国防総省は2021年にシャオミを中国軍との関連性を理由にブラックリストに上げたが、当時米国の裁判所がシャオミ側の手を上げシャオミは起死回生した。その後ファーウェイが米国の制裁により製品生産に支障が出る隙に食い込んで世界市場でシェアを拡大した。米国クアルコムと台湾メディアテックなどに依存したモバイルAPも最近では独自設計の割合を高めるなど技術自立に出た。

台湾のトレンドフォースはこの日、シャオミが新型チップ生産にTSMCの3ナノプロセスを利用するならばファーウェイなど他の中国企業もシャオミを通じて事実上TSMCの技術を活用できるだろう」と指摘した。現在アップルのほかにもエヌビディア、クアルコム、インテルなど多くの米国顧客がTSMCの最新3〜4ナノプロセスを利用している。半導体業界関係者は「こうしたことが繰り返されるほどTSMCの最先端半導体製造技術がむしろ中国企業の発展を助けるのではないかという米国の疑念は大きくなるだろう」と話した。

◇米商務省、TSMCを調査

米当局もついにTSMCに「イエローカード」を出した。米IT専門メディアのジ・インフォメーションは17日、消息筋の話として米商務省がこの数週間にTSMCにファーウェイ向けスマートフォンやAIチップの製造に関与したのか問い合わせたと報道した。

まだ調査は初期段階にあるが、米商務省がTSMCとファーウェイの取引で輸出規定違反を確認した場合、米国技術に対する一時的なアクセス制限や罰金などの制裁を加える可能性があるという。米商務省は先端AI半導体製造を渇望するファーウェイが仲介会社を通じてTSMCが作ったチップを迂回購入した可能性も念頭に置いているという。TSMCは「(米国の)輸出統制を含むすべての関連法律規定順守に専念している」と明らかにした。

半導体業界は「チップ製造独占段階に入ったTSMCに対する米国の牽制が始まった」とみる。アップル、エヌビディア、インテルなど自国の主要企業がいずれもTSMCで半導体を作るだけに、米国政界では「TSMCを統制しなければならない」という声も大きくなっている。米国が先端半導体工場を自国に移すことを望むのと違い、TSMCは主要工場を可能な限り台湾に残そうとするためだ。

ザリガニはカニの味方?…「TSMCジレンマ」

TSMCの財務報告書によると、4−6月期TSMCの中国売り上げの割合は16%水準で米国に次いで2番目に大きかった。TSMCの立場でも巨大な中国市場を完全にあきらめるのは難しい状況だ。両岸関係は複雑だがTSMCは2004年に自社初の海外工場を中国・上海に置いたほど中国と密接な関係を続けている。

これに対し顧客が望む半導体を作るサービスで成功したTSMCのジレンマも大きくなる様相だ。サムスンやインテルなど競合会社が事実上当分TSMCを追撃するのが難しくなった状況でファウンドリー(半導体委託生産)王座を占めたがそれだけ気を遣わなければならない部分も多くなった。

最近TSMCが価格などの生産条件と歩留まりをめぐり最大顧客であるエヌビディアと神経戦を行ったという話が出るほどすでにファウンドリー独占体制に対する半導体業界の不満が大きくなっている点もTSMCには不安要素だ。この会社の7−9月期営業利益率は47.5%に達した。半導体業界関係者は「ビッグテックの間ではすでに内部的に単独供給会社になったTSMCをめぐるリスク要素に対し苦悩している」と話した。