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 阪神は21日、来季のコーチングスタッフを発表し、新任コーチ5人の記者会見を行った。今季までオリックスでコーチを務めた小谷野栄一氏(44)、梵英心氏(44)がそれぞれ1、2軍の打撃コーチに就任。22年まで1軍投手コーチを務めた金村暁氏(48)が3年ぶりに復帰し、片山大樹ブルペン捕手(49)がブルペンコーチ兼任となる。振興部アカデミーコーチの藤川俊介氏(37)は2軍野手コーチを託される。

 小谷野打撃チーフコーチの誠実な人柄がにじんだ。兵庫県西宮市内で臨んだ就任会見。打線強化への取り組みは「具体的に今、ここで言えることがない」と語った。選手の特徴を知らずに、何も答えられない。だから、とことん「見る」。V奪回へ共闘するナインと正面から向き合う。その方法が「全選手全打席チェック」だ。

 「一人一人の今年の打席とか映像を全部確認してからでないと、(コメントするのは)選手に失礼。ちゃんと全部、見てから。それぐらい、選手も覚悟を持ってやってくる」

 全選手の全打席チェックにはファームも含まれる。今季、1軍で打席に立った野手は23人で計5062打席、2軍は31人で計5002打席だ。足した1万64打席から、来季の契約を結ばない選手の打席数を省くと、計8751打席。主砲の快音も若虎の悔恨も刻まれた全てのバッターボックスをその目で確かめ、長所・短所を探す。

 「“どこまで見た?”とか、聞いてもらっても結構なので」とファクトチェックまで望むところという男の決意は本物だ。では、どこをどう見るのか――?

 「それ言ったらダメ。それは僕のアレ(企業秘密)ですから。1打席を1回(ずつ)見るわけでもなく、ただ…いろいろ見るんですよ」

 44歳。選手と年が近く、藤川監督とは同い年の青年コーチは朗らかに言った。終始明るい雰囲気で行われた問答。だが、指揮官へ抱く思いを語る際は、表情が引き締まった。

 「一緒になって戦うと決断した。勝つためにやれることはやる」

 「松坂世代」の2人の縁が深まったのは、藤川監督が阪神に復帰し、小谷野コーチがオリックスにFA移籍した15年以降だ。「いろんな野球のことを話すようになった。今となっては凄く勉強になることばかり」。楽天から始まった指導者人生は3球団目で、セ・リーグは初めて。「チャレンジ」と表現した就任で、強力打線の形成へ一役買う。(八木 勇磨)

 ≪2軍打撃コーチ梵氏育成に自信≫2軍打撃コーチに就任した梵氏は、23年から侍ジャパンの内野守備走塁コーチも務めており、兼務しながらスタートする。現役時代は広島でプレーし、社会人のエイジェックを経て21年から4年間はオリックスでコーチ。「本当にありがたいご縁をいただいた。今持っている引き出し、経験をファームの選手に教えていけるように」と言葉に力を込めた。藤川監督とは同学年。この日も言葉を交わしたといい、「とにかく勝ちたいという気持ちは凄く伝わってきた。僕はファームですけど押し上げていける選手をつくっていければ」と決意を口にした。

 ≪和田豊氏は1・2軍打撃巡回コーディネーター≫嶌村聡球団本部長は、新設した1・2軍打撃巡回コーディネーターに転身する和田豊2軍監督について「1、2軍を行き来しながら支えていってもらいたい。基本的に打撃に特化してもらう。当然ユニホームを着て指導してもらいます」と期待を口にした。ベンチ入りはしない見込みだが、動き方の詳細は「今後、藤川監督が考えられると思います」と説明した。