著作権が侵害された際の対応策として、専門機関がオンラインサービスプロバイダーに命令して違法サイトが検索の上位に表示されなくしたり、サイト自体をアクセス不可能にしたりといったブロッキング措置が実施されています。イタリアの著作権保護プラットフォームが著作権侵害対策を実行した結果、誤ってGoogle関連のドメインがブロックされ、Googleドライブが12時間以上アクセスできない状態になったことが報じられました。

Google Drive Blackout in Italy After Another Major Anti-Piracy Blunder * TorrentFreak

https://torrentfreak.com/google-drive-blackout-in-italy-after-another-major-anti-piracy-blunder-241020/



イタリアは2023年12月に、スポーツの生中継を違法にストリーミングするサイトを排除するために設計された「Piracy Shield」というサイトブロッキングスキームについて、すべてのISPやパブリックDNSサーバー、VPNサービスが参加することを義務付ける法律が可決されました。権利保有者がPiracy Shieldに対して、違反がどのように発生したか証拠を沿えて報告すると、30分以内に違法サイトのIPアドレスがブロックされるという仕組みになっています。サイトブロッキングのリクエストは、権利者によって司法審査なしで行われます。

Piracy Shieldには適切なチェックが足りておらず、その上で即IPアドレスのブロックというアンバランスな措置であるため、一部の専門家は有効性について疑問の声を上げていました。そして、Piracy Shieldの正式な開始からわずか数週間後である2024年2月に、Cloudflareに含まれるドメインおよびIPアドレスが誤ってブロック対象となった結果、複数の学校サイトや通信会社、チケットサービスなどがアクセス不可になるという問題が発生しました。

Amazon Web Servicesでテクニカルアカウントマネージャーを務めるジョルジョ・ボンフィリオ氏は当初からPiracy Shieldの危険性について指摘しており、実際にトラブルが発生した際には「私はPiracy Shieldが議題に挙がっていた時から、『複数のコンテンツが1つのIPから提供される場合、そのコンテンツの一部をブロックする方法は非論理的でおそらく違法である』『コンテンツ提供元のIPアドレスは非常に簡単に変更できてしまう』『かつてIPを割り当てるのは複雑で費用がかかるものだったが、現代ではブロッキングへの回避も容易』という理由を指摘し、Piracy Shieldのリスクについて話しました。サイトのIPアドレスについて、外部の観察者が理解するのは不可能です」と述べています。



同様のPiracy Shieldによるブロッキングトラブルについて、ボンフィリオ氏は2024年10月20日に「Piracy ShieldはGoogleドライブのドメインをブロックしました」とXに投稿しました。ボンフィリオ氏の投稿によると、ブロックされたGoogleのドメインにアクセスした場合、イタリアの通信産業規制を行う政府機関であるAGCOMの通知が表示されたそうです。



著作権侵害に関するトピックを扱うオンラインメディアのTorrentFreakは、Googleドライブがブロックされた原因について「ドメインが誤って、もしくは故意にPiracy Shieldシステムに入力され、その後の全てのチェックを通過しています」と述べ、システムの粗さを指摘しています。

Googleドライブのブロックは現地時間の午後6時過ぎに報告され始め、午後9時頃にはほぼ全面的にアクセスが不可能になったと見られています。ボンフィリオ氏によると、最初のブロック要求から約12時間経過した翌朝午前7時の段階でも、13.5%のユーザーがIPアドレスブロックの影響下にあり、3%がDNSでブロックされていたとのこと。



トラブルは現地時間の土曜から日曜にかけて発生したため、TorrentFreakは「もしこの災害が平日に起こっていたら、どれほどの被害が出たか誰にも分かりません。また、その後Googleドライブへのアクセスは復旧しましたが、イタリア政府およびPiracy Shield機関からGoogleドライブが使えなくなったことに対する補償金などはないと考えられる点も、責任の所在について疑問が残ります」とTorrentFreakは指摘しています。ボンフィリオ氏は「イタリアでは数時間もの間、仕事や勉強を妨げられましたが、その間も(Piracy Shieldが保護を目的としている)スポーツの試合を観戦することは可能でした。国が何を優先事項としているのかがよくわかります」と非難を述べています。