『異世界生贄物語』より

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 異世界モノは今では定番のジャンルとして定着した。ただ、Xに9月下旬に投稿された『異世界生贄物語』は従来の異世界モノとは一線を画す、派手さはないものの登場人物の情緒にスポットライトを当てた優しい作品になっている。

(参考:異色の魔王が魅力的な異世界転生作品『異世界生贄物語』を読む

 学校に向かう途中の青年·羊は通学途中に交通事故に遭ってしまう。目が覚めるとそこには見知らぬ景色が広がっていた。困惑する羊の前に謎の男が立っており、状況が一切飲み込めない中、羊はその男に連れられて魔王のもとに向かう――。

 作者のaimiさん(@rokkakukeilove)は、学生の時から「商業漫画家になりたい」という夢はずっとあったものの、作品を描き切ることができなかったという。その後、社会人になってから『コミティア』にサークル参加した時、手がけた同人誌を出張編集部に持ち込んだところスカウトされ、本格的に漫画制作に取り組むようになったそうだ。異世界モノでありながらホッコリ感を与えてくれる本作の制作秘話など、話を聞いた。(望月悠木)

■異世界モノはほとんど読んだことがない?

――今回『異世界生贄物語』を制作した背景は?

aimi:「自分が異世界モノを描いたらどうなるのかな?」と思い付いたことがキッカケです。とはいえ、異世界モノをほとんど読んだことがなかったのですが、ただ「異世界モノと言えばトラックにはねられるところから始まる」という知識はあったため、それを導入にしようと決めました。

――ストーリーの方向性はどのように決めていったのですか?

aimi:「このキャラクターだったらどう動くかな?」ということを考えながらストーリー制作を進めていきました。また、漠然とですが「羊は最後にはもとの世界に帰る」ということが頭にあり、そこを着地点としてストーリーを構築しています。

--異世界モノでありながらもバトルや恋愛などはなく、登場人物の情緒に焦点を当てた内容でした。

aimi:異世界モノの王道をあまり知らなかったことが大きいです。なにより、キャラクターの感情を描くことが好きなので、キャラクター同士のやりとりを中心にする方向の展開になりました。

■地元で同人誌即売会を主催

--序盤に「そういえばサタン=魔王では?」「それならサタンはどこに向かっているのか?」と疑問を持ちながらも、後半にその謎が解決する展開が見事でした。

aimi:漫画はあまり読まないのですが、映画はそこそこ見ます。うろ覚えなのですが、今回のような後半になると謎が解決していく仕掛けの映画を見た記憶があり、それを真似した感じです。

――羊、サタン、ウルフの3人のデザインの決め方は?

aimi:羊はふわふわの髪、ウルフは強気な女性、みたいに名前から連想して描いています。サタンは自分の別作品のキャラクターを少し改造して作りました。キャラクターをリサイクルするようなことをよくします。

--また、サタンの“強キャラ感”が気に入っています。

aimi:サタンは感情の起伏が乏しく、あまり人間っぽくない感じを目指して描きました。そのことが“強キャラ感”につながったのかもしれません。

――今後の漫画制作における抱負など教えてください。

aimi:今後も漫画を描き続けたいです。今は短編漫画を描いてスキルや経験を積み、商業漫画家として活動してみたいです。また、自分の地元の秋田県で、11月9日(土)に開催されるオリジナルオンリーの同人誌即売会『だいせんサブカルマーケット』というイベントの主催を務めさせていただいています。そこで自分の本も販売しているので、もし興味があったら遊びにきてください。

(望月悠木)