香港、アジアを先行するトランジション・ファイナンスセンター構築加速

香港のビクトリア湾。(資料写真、香港=新華社記者/陳鐸)

 【新華社香港10月15日】中国香港特別行政区政府財政司の陳茂波(ちん・ぼうは)司長はこのほど、香港グリーンファイナンス協会(HKGFA)が開いた年次フォーラムで、世界は低炭素化への移行において、大きな資金不足に直面しているが、香港の「トランジション・ファイナンス(脱炭素への移行を支援する金融)」の発展に対し、独自のチャンスをもたらしていると指摘した。香港はアジアを先行するトランジション・ファイナンスセンターの構築を加速させる意向を示した。

 陳氏によると、香港では直近3年間のグリーンボンドの年平均発行額が630億ドル(1ドル=約150円)を超えた。証券や先物取引を管理する「証券及期貨事務監察委員会(証監会)」が認可したESG(環境・社会・企業統治)ファンドは今年6月時点で230社を超え、運用資産は1600億ドルを上回り、3年前より60%増加した。

 こうしたデータは、整った管理枠組み、必要な金融インフラ、発達した金融市場、基準の策定やコンプライアンスに関する専門知識などを含む、トランジション・ファイナンス市場を発展させるための確かな基礎を香港が持っていることを示すと指摘。「今必要なのは、トランジション・ファイナンスの必要性と成長性に対する人々の認知を高めることだ」と強調した。

 米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーのリポートによると、2021年から50年までの間に、世界が温室効果ガスの実質排出ゼロ(ネットゼロ)の実現に必要な実物資産の支出は、年平均9兆2千億ドルに達するが、現時点で年間3兆5千億ドル不足している。

 HKGFAの馬駿(ば・しゅん)主席は香港がここ数年、世界のグリーンファイナンス(環境金融)センターの構築において大きく進展したと振り返る。特区政府の後押しを受け、香港はアジアで最も活力のあるグリーンファイナンス市場の一つとなり、革新的な金融商品を相次いで発表するとともに、グリーンファイナンス分野の国際的対話と基準の相互運用を促したと指摘。トランジション・ファイナンスは世界のグリーンファイナンスの発展を代表する重要な流れであるとし、香港は世界の金融センターとして、地域の対話を促進する有利な位置にあり、この分野で可能性が高いとの認識も示した。

 HKGFAは18年の創設以降、これまでに7回の年次フォーラムを開催している。今回のテーマは「アジアのネットゼロ移行に向けた資金調達」で、各界の代表者約1500人がオフラインとオンラインで参加した。