習近平の「台湾侵攻」をひそかに待ち望んでいる「意外すぎる国」の実名

写真拡大 (全3枚)

わずか25年前から、世界情勢は恐ろしく変化した。だがこの先25年は、さらに大きな変化が待ち受けている。一体どうなるのか─―多角的な視点から精緻に予測してみよう。

シリーズ連載『「大阪で日本語が通じなくなる」「2000万人が消失」「世界の食料争奪戦に巻き込まれる」…2050年の日本で起きる「想像を絶する事態」』より続く。

2049年までにアメリカを超える

「1945年から今日まで、世界は史上稀に見る平和な時代を謳歌してきました。地域紛争が起きても世界大戦に発展しなかったのは、覇権国アメリカが火種を未然に防いでいたからです。しかし今後アメリカの優位が崩れれば、もはや『世界の警察官』としての役割は期待できない。2050年の世界では、まったく異なる秩序が誕生していてもおかしくありません」

こう予想するのは、立命館大学教授の上久保誠人氏だ。

9・11同時多発テロとイラク戦争、リーマン・ショック、ロシアによるクリミア侵攻とウクライナ戦争、世界的なコロナ禍と、21世紀に入って世界は大事件をいくつも経験してきた。これから先の25年間、はたしてどんな激変が生じるのか。

2049年――世界中のチャイナ・ウォッチャーたちが、この年に注目している。2022年10月に行われた中国共産党の第20回全国代表大会で、習近平国家主席(71歳)が「建国100年を迎える2049年までに、米国を凌駕する超大国になる」と宣言したからだ。

共産党の悲願である「台湾統一」は、野望に向けた通過点に過ぎない。日米が懸念しているのは、老境に入って毛沢東を超える功績を残したい習近平が、3期目の任期が切れる'27年までに台湾に侵攻するシナリオだ。

中国のGDPは約35兆2900億ドル(2024年)で、対峙する日米台3ヵ国の合計(約37兆2900億ドル)と比べてもすでに遜色はない。一方で国内では景気が低迷し若者の失業率も高止まりが続いていて、習近平政権の経済政策に原因を求める声も増えてきた。

国民の不満が高まると国外に敵を見つけて「はけ口」とするのは、共産党による統治の常套手段と言っていい。このまま経済的な苦境が続けば、数年内にガス抜きのため台湾侵攻に踏み切る可能性も考えられる。

一方で、地政学に詳しいアメリカのジャーナリストのロバート・カプラン氏は、中国が20年以上かけてジワジワと台湾を併合するのではないかと予想する。

「中国政府は香港の実質的併合を果たした経験を活かして、プロパガンダやデマなどで台湾国民を揺さぶり、『自由な政治体制のまま統一される』と誤認させようとするでしょう。しかし待ち受けているのは香港と同じく、共産党の一党独裁です」

台湾侵攻を期待するアメリカ

ただし中国政府が武力に頼らない道を選んでも、暴走した人民解放軍が侵攻に踏み切るリスクは捨てきれない。そこを逆手に取って、むしろアメリカが中国の台湾侵攻を誘発するとの見方もある。

「台湾が侵攻されて得するのは、中国よりもアメリカでしょう。中国と台湾は経済的に密接につながっているため、武力侵攻は中国経済にも被害が大きい。あえて台湾海峡周辺の守りを薄くして中国が武力侵攻しやすい環境を作れば、ライバルが暴発し自滅してくれるわけです」(前出の上久保氏)

現在アメリカ政府は多額の補助金を出して、台湾のTSMCの半導体工場を米本土に誘致している。GAFAMはじめIT企業にとって必須の半導体を国内で製造できるようにして、台湾有事に備えていると言われるが、こうしたシナリオを想定しているのかもしれない。

こうして進む台湾侵攻は、日本にとっても決して他人事ではない。防衛省関係者が懸念するのは、在日米軍基地がある沖縄が攻撃されるリスクだ。

「人民解放軍は着々と軍備を増強しているものの、台湾近海で米軍と互角に戦えるようになるのはまだ先でしょう。しかし準備が整っていない段階で台湾に侵攻するならば、沖縄や佐世保の米軍基地を先制攻撃して叩かれる前に叩くしかない。

そのうえ台湾から与那国島まではわずか110キロメートルです。将来的に台湾を足掛かりに沖縄へ侵攻し、撤退した米軍に代わって居座る可能性も否定できない」

後編記事『「プーチンをヒグマから守った男」が次のロシア大統領に…これから25年間に世界で起こる「大事件」』では引き続き、各国の情勢を予測していこう。

「週刊現代」2024年10月5・12日合併号より

「プーチンをヒグマから守った男」が次のロシア大統領に…これから25年間に世界で起こる「大事件」