「大阪で日本語が通じなくなる」「2000万人が消失」「世界の食料争奪戦に巻き込まれる」…2050年の日本で起きる「想像を絶する事態」

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わずか25年前から、世界情勢や科学技術、自然環境は恐ろしく変化した。だがこの先25年は、さらに大きな変化が待ち受けている。一体どうなるのか、人口推計から精緻に予測してみよう。

日本はフロンティア国家

「日本は地球上で最も高齢な社会であり、世界のどの国も経験していない領域に入っている。その意味では、日本は人類にとってフロンティア国家である」

英国のジャーナリスト、ヘイミシュ・マクレイが『2050年の世界』でそう述べるように、世界は今、人類史上初めて直面する高齢化・人口減少社会に日本人がどう対処するかを注視している。

2050年の日本は、平均寿命が男性84.45歳、女性90.50歳と、現在よりも3歳ほど延びている。では実際のところ、私たちはどこでどのように暮らし、どんなことが社会に起きているのだろうか?

今からおよそ25年後の社会を正確に予測することは難しい。だが、現在の確定した人口から将来の人口を算出していく推計だけは、大幅に外れることがない。

その統計データに基づいて、日本社会の変貌を考えていこう。

食料争奪戦に巻き込まれる

'24年の日本の人口は1億2400万人ほどだが、「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所。以下、社人研)によると、'50年の人口は約1億469万人。

今後25年で、実に約2000万人も日本人が消えてしまうのである。

人口がまだ1億人を超えているのだから、それほど問題にならないのでは……そう思うのは大間違いだ。今の社会では考えられない厄介な問題が起きるのである。

累計100万部を突破した『未来の年表』シリーズの著者でジャーナリストの河合雅司氏は、'50年までに起こる深刻な問題は食べ物不足だと語る。

「農林水産省によれば、現在の日本で農業に従事している人の8割は60歳以上の高齢者です。今から25年経つと、農業を続けている人が極端に少なくなるので、国内の食料生産量が減ります。おそらく、'35年頃には農業従事者の減少による食料不足が深刻化するでしょう。 “令和の米騒動”どころの話ではありません。果物も野菜も収穫量が大きく減ります」

では、今以上に海外から穀物や野菜を輸入すればよいではないか……その考えは甘い。

日本の人口が急減していくのに対して、世界人口は今後も増え続け、'50年には現在の約82億人から約97億人となる見込みだ(「国連世界人口推計2024年版」による)。

「今後、インドやパキスタンなど南西アジアは人口が大幅に増え、経済発展して食料消費の中心地となります。中東やサハラ砂漠以南のアフリカ諸国の人口も同時に増えていきますから、日本は食料を輸入しにくくなる。'50年頃には世界的な食料争奪戦が起きているでしょう」(河合氏)

大阪で日本語が通じなくなる

社人研の推計では'50年の日本の出生数は約62万人と予測されている。だが、想定外のコロナ禍の影響で下振れしている。

「過去5年の日本の出生数は前年比5%台の減少が目立ち、予想よりも早いペースで落ち込んでいます。これが続くと、30年後の出生数はわずか15万人ほどに減ってしまう。'50年頃には大企業でも新卒採用が難しいところが出てくるでしょう」(河合氏)

現在の日本の外国人比率は、ほんの2.7%。人口減少による労働力確保のために、移民を受け入れる選択肢は、すでに本腰を入れて議論すべき時期を迎えている。

しかし、移民の受け入れによって意外なことが起きる。

「今でもコンビニやファストフード店に行くと、外国人店員が外国人客と母国語で会話する場面に出くわしますよね。今後、日本の若者が減り、20〜30代に占める外国人労働者の比率が20%ほどに高まったとき、ほぼ間違いなく、彼らの母国語がビジネスの公用語になります。

外国人が増えると、企業側も彼らの言語を使わざるを得なくなるので、楽天のように英語を社内公用語化する会社も増えてくる。'50年までには東京や大阪のような大都市で、日本語の通じなくなる地域も広がってきます」(河合氏)

患者不足で、病院が閉鎖

地方都市に目を向けてみると、人口が減少していくにつれ、ローカル線など交通インフラはどんどん縮小する。

また、とくに給水人口の少ない地域では水道料金が値上げされ、'43年までにひと月1400円も上昇するとも見込まれている。

要するに、田舎に住む生活コストは高くなってゆく一方なのだ。したがって、人々は田舎暮らしをやめ、大都市や地方の中核市に集まらざるを得ない。

国土交通省の資料によると、'50年までに、現在人が住んでいる地域の半分で、人口が半減するという。そればかりか、人が今住んでいる地域の2割が無居住化する

地方都市のシャッター通りはそのまま打ち捨てられ、廃墟と化す可能性が高い。

「飲食店や娯楽施設などのサービスが撤退していきますが、着目すべきは、人口が激減する地域で'30年代には患者が不足して病院経営が成り立ちづらくなること。地方の医療機関はどんどん閉鎖され、救急車を呼んでも搬送先の病院まで40〜50分もかかってしまうでしょう」(河合氏)

'50年頃は日本人の7割超が災害リスクのある場所に集住している(国交省の試算)が、天災は現在よりもはるかに甚大な被害をもたらす。

ひとたび災害救助要請となれば、60代の自衛官たちが80代、90代の命を必死に救う姿が日常となる。そして病院にはなかなか辿り着けない……それが日本各地で起きる現実なのだ。

後編記事『豊洲のタワマンが廃墟に、荒川区・足立区が衰退、年金を払った額だけもらえない……2050年の人口減少日本で起きる「異常事態」』に続く。

「週刊現代」2024年10月5・12日合併号より

「タワマンが廃墟に」「荒川区・足立区が衰退」「年金は10万円以下」……2050年の人口減少日本で起きる「異常事態」