その先に待つのは「収入ゼロ」…定年後もマインドリセットができない「悲しい人たち」の末路

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元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。『老いた今だから』では、歳を重ねた今だからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。

※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。

現役時代のプライドが邪魔をする

定年後はマインドリセットが必要だと言われても、「○○会社の××部長」として大勢の部下を率いていた自分が、単純労働をするなんてプライドが許さない、そんな姿を昔の部下に見られたくない--という思いから抜けきれないようでは落第です。

現役時代に高いレベルの仕事をしてキャリアを積んできた人たちを、定年後に高い報酬で雇い入れるようなシステムは、これから先も日本には出てこないと思います。

みなさんは当然おわかりだと思いますが、そういう人たちは概して、定年後もどうやっていい生活を維持できるか、どうやって遊ぼうか、どうやって友達を増やそうか、といったことに考えが向きがちで、高給を払って雇っても、仕事の現場では役に立たないことが多いからです。

経営者の立場からすれば、「これまで高給取りで豊かな生活をしてきて、定年後もさらに豊かな生活をするためにお金がほしいのであれば、儲かる分野で、自分の力で戦ってください」ということになる。それが現実なのです。

一方、収入はほどほどでいいという人には、福祉関連や地域貢献などの仕事に就き、社会のために自分を使うという道があります。

現実を受け入れないと…

駅前やスーパーの駐輪場で自転車をきれいに並べたり、小学生の登下校時に学童擁護員として横断歩道で旗を振ったりする高齢者を、私もよく見かけます。いくつになっても人の役に立とうと懸命に働いているのは、本当に立派だと思います。

「そういう仕事なら、わざわざ働くことはない」と思っている人に、私は言いたい。「社会のためになる仕事の何が悪いんだ!」と。

ただ、こうした仕事をしばらく続けるうちに、それだけでは物足りなくなってくるケースもあるようです。たとえば、地域社会のために毎日公園の周囲を掃除して、それなりの収入を得られるとしても、今まで何十年も会社勤めをしてきた人にとっては、それを「仕事」としてとらえることができず、物足りなさを感じるようになるのかもしれません。

多くの人は、歳をとっても自分のキャリアやスキルを活かせる仕事がしたいと思っていますが、ものごとは自分の考えていたとおりきれいに進んでいくとは限りません。むしろ、思いどおりにならないことのほうが多いものです。

税理士や一級建築士のような資格をもち、自分で事務所を構えている人でも、歳をとるにつれて仕事は減ってくるかもしれません。生活レベルを落としたくないなら、土日に軽作業などをアルバイト的にやるのもやむを得ない、ということになります。子供が何人もいて、いちばん下の子が大学を卒業するまでは頑張らなければいけないという人は、五〇代でそういう生活をするかもしれません。

会社員であれ、自営業であれ、資格や専門スキルの有無にかかわらず、現実を受け入れ、現実をベースにしてものごとを考えなければいけない、ということです。

さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。

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