40年に及ぶ「脳研究」で”ついに解明”、どんな人でも「ケタ違いの能力」を発揮できる「潜在能力のすごい使い方」…!

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「潜在能力」と聞くと、どんなイメージを抱くだろうか。きっと「表に出ていない、内に秘めた才能」のようなものだと考えている人が大半だろう。

しかし、潜在能力とはそんなに簡単なものではないと語るのは、数々のアスリートを育成してきたスポーツ脳科学者の林成之氏。氏によれば、潜在能力は、一定の考え方と行動を伴うことによって、いつでも発揮できるものであり、それを十全に発揮すれば、想像していなかったレベルの成果が得られることもあるという。

このたび、『運を強くする潜在能力の鍛え方』を刊行するに当たった経緯や本書に記された内容を、担当編集者が教えてくれた。

「僕が死ぬ前に出す最後の本になる」

実は近々『運を強くする潜在能力の鍛え方』という本を出す予定なんです。たぶん僕が死ぬ前に出す最後の本になると思います。手前味噌ですけど、この本にはすごいことが書いてありますよ。

潜在能力というと単純に、自分の中に眠っていて、表に出ていない力のことだと思うでしょう? 私も昔はそう思っていました。だけど本当は、子供も大人も潜在能力という“才能”を秘めている。そしてそれは工夫次第で進化させることができるんです。(略)独創的な発想や神業と呼ばれる技術、こういった人間の高次元の営みは「こころ」の働きを伴います。これらの高度な営みを生み出す潜在能力は、その基盤になる本能を鍛えることで高められるんです。このことを最後に伝えたくて、原稿を何度も何度も見直しています――。

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スポーツ脳科学者の林成之氏が、弊誌『致知』の中で述べた言葉である。林氏は、脳低温療法を開発し、脳蘇生治療の第一人者として世界にその名を知られるだけでなく、脳科学をスポーツに応用し、北京オリンピック競泳日本代表の北島康介選手らの金メダル獲得に貢献したことでも有名だ。

現在85歳を迎えた林氏から、「潜在能力と運に関する原稿を書いたので、もし興味があったら一度、家に来てほしい」と連絡をいただいたのは、今年1月のことだった。ご自宅で話を伺い驚いたのは、3年前から立て続けに重病を患っておられたこと。心筋梗塞に始まり、鬱血性心不全、腎不全、前立腺がん、糖尿病、そして眼底網膜剥離……。一度は心臓が止まったこともあるそうで、なんとか意識は回復したものの、能力の低下は著しく、さまざまなことができなくなり、これは病気と年齢のせいだと、さすがに一度は諦めかけたという。

しかしこれまでの体験と研究とを振り返る中で、それは思い込みだと考え直し、「自己保存の本能を克服し、潜在能力の高め方をお伝えしたい」というように、人のために生きたいという原点に従って猛烈に仕事を始めたところ、衰えたと思った能力が、静かに、だが確実に回復を見せてきたという。

冒頭に紹介したインタビューの中で、林氏は「僕が死ぬ前に出す最後の本になると思います」と述べていたが、氏はいまその言葉を覆し、次なる本の執筆へと取りかかっている。85歳のいまなお、自らの中に眠る潜在能力を発揮し、日夜原稿に向かうその姿で、何歳からでも、どんな状況からでも潜在能力は発揮でき得ることを自ら証明して見せている。まさに行動する脳科学者である。

このたび発売となる『運を強くする潜在能力の鍛え方』(致知出版社)の刊行に寄せる林氏の思いと、そこに記されている潜在能力の発揮の仕方について一部を紹介したい。

潜在能力はいつでも発揮できるもの

人間は潜在能力というもの凄い才能を持っています。潜在能力というと、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか? 潜在能力とは「表に出ていない、内に秘めた才能」だと思っておられる方が多いのではないでしょうか。

生成AIに尋ねても、「潜在能力というのは隠れた能力で、いざとなったら発揮する能力」という答えが返ってきました。おおよその人の理解はこの程度にとどまっていて、潜在能力について深く考えたことがないというのが普通の感覚でしょう。しかし、潜在能力とはそんなに簡単なものではないのです。

それは一定の考え方と行動を伴うことによっていつでも発揮できるものであり、潜在能力を十全に発揮すれば想像していなかったレベルの成果が得られることもあるのです。

私は脳外科医であり救命救急センターの医者として、長年、人の命の瀬戸際を見てきました。常に気の抜けない緊張を強いられる状況の中、全力投球を続けていました。

ある意味、常時極限状態にいたため、潜在能力が出やすい環境に置かれていたといえるかもしれません。実際に、信じられない力を発揮する人を身近に見ましたし、奇跡としか思えないような体験も数々目にしてきました。それらは、紛れもなく潜在能力の発現によってもたらされたものなのです。

しかし、全員が全員、いざとなったらもの凄い潜在能力を発揮するわけではありません。それをいつでも発揮する人もいれば、全く発揮しない人もいます。発揮する人でも、超ハイレベルの潜在能力を持つ人から低いレベルの人までピンからキリです。それはどういうことでしょうか。

私は脳科学者という立場で、多くのアスリートに助言をしたり、指導をしたりという経験も積んでいます。そういう中で、桁違いの潜在能力を発揮して国際大会でメダルを獲得した選手をたくさん見てきました。一方で、高い潜在能力を持ちながら、それを発揮できないままで終わった選手もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。

私は昔、髪の毛に針を刺すほどの技能を持っていて、アメリカでゴッドハンドと呼ばれていました。ところが不思議なことに、病気をした後、その能力がパタッと消えてしまいました。

潜在能力が完全に落ちてしまったのです。ところが、今、その感覚が少しずつ戻りつつあるのを感じています。それは、本書を書くにあたって、どうすれば潜在能力を引き出すことができるのかを深く考えたことに理由があります。

実は、潜在能力を引き出すには、ある条件があるのです。それをクリアできれば、誰もが潜在能力を開花させ、自分の思うような成果を手にすることができるようになるのです。現在は、周りの人はもちろん、本人すらその才能に気づかずに、自分で自分の「潜在能力」の才能を放棄している人たちが多くなっています。なぜそうなのかについても、はっきりとした理由があります。

本書では、それらの理由を明らかにしながら、潜在能力をどのように鍛えるかということを一貫したテーマとして話を進めていきます。

「潜在能力」と「本能」を引き出す魔法の言葉

初めにご紹介するのは、2011年開催のサッカー女子ワールドカップで日本勢初の優勝を成し遂げたなでしこジャパンです。大会に入る以前、当時の佐々木則夫監督に「先生、頭を強くする方法はありますか」と相談を受けました。そのときに教えたのが「そうだね」という言葉です。

この「そうだね」は、お互いを肯定するポジティブな言葉で、このような言葉は相手の脳に入りやすいのです。そして、相手の脳に入るから気持ちが一体化して、その後の話も聞きやすくなります。だから「合宿などで話をするときは、必ず『そうだね』と言ってから話すといいですよ」と佐々木監督に伝えました。

これとは逆に、否定的な言葉は相手の脳に入っていきません。そして、相手の気持ちを遮断してしまいます。人間は自己保存の本能で自分を守りたいので、意見が違う人とは絶対に仲良しにはなれません。

だから、否定語は使わず、意識的にポジティブな言葉を発することが大事なのです。その意味で、「そうだね」は、お互いの気持ちを結びつける魔法の言葉と言ってもいいでしょう。

脳には「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」といった本能があります。この本能を生かす言葉が「そうだね」なのです。つまり、仲間になりたい本能とも繋がっているので、まず「そうだね」と同調してから会話を始めると、その後に何を言うかに関係なく、話す側は否定されることへの恐怖がなくなります。また、聞く側も相手の言うことに興味を持って、肯定的に受け止めるようになります。これによって、お互いの潜在能力が本能のレベルから引き出されることになるのです。

なでしこジャパンは、ボールを持ったら仲間がいないところへ迷わず蹴る、という常識破りのパス回しを生み出して相手を翻弄しました。仲間のいないところにボールを蹴るというのは恐怖を伴うことでしょう。仮に相手にボールを取られたら、一気にピンチに陥るかもしれません。普通であれば、無難に仲間がいるところにボールを蹴りたいと思います。

「そうだね」は相手への尊敬を表す

しかし、誰もいないところに蹴れば、最初に駆けつけた人がボールをキープできます。それが味方の選手であれば、チャンスは拡大します。そして、人のいないところに蹴るというのはチームの仲間だけしか知らないので、チームメートを信頼して無人のスペースにボールを蹴り出せば、日本の選手が真っ先に駆けつけることができる可能性が高いのです。

佐々木監督が考え出した世界一のパス回しと称賛されましたが、あれはまさに「そうだね」で生まれた信頼関係がベースにあります。まさにチーム一丸になって潜在能力を発揮した結果が優勝をもたらしたのだと思います。 女子バレーボール日本代表の中田久美監督に「先生、どうやったらチームが強くなりますか?」と聞かれたときも、「『そうだね』という言葉を合言葉にしなさい」とアドバイスしました。それ以来、日本女子バレーチームはチームが一つになって強くなりました。

この「そうだね」という言葉は、のちに女子カーリングチームのロコ・ソラーレの選手が競技中に使って流行語になりました。ロコ・ソラーレを指導するきっかけになったのは、吉田知那美選手からもらった手紙です。吉田選手が失敗を重ねてみんなからだめ出しされたとき、私に手紙を送ってきたのです。

軽井沢合宿で初めて会ったときに、私は吉田選手に「『そうだね』と言ってからチームプレーしたらいいよ」という話をしました。そうしたら、ロコ・ソラーレはあっという間に強くなりました。「そうだね」という言葉がメンバーの合い言葉になって、チームが一丸となり、平昌オリンピックの女子カーリングでは銅メダルを取りました。皆さんよくご存じのように、「そうだね」の北海道訛り「そだねー」は、2018年の新語・流行語大賞にも選ばれました。

このように「そうだね」は、チームの潜在能力を高める魔法の言葉なのです。これを日常会話に活かすなら、「面白そうだね」「楽しそうだね」とポジティブな言葉を使いながら話すとよいでしょう。子どもでも「そうだね」「そうなんだ」と言ってあげると、自分が認められたように感じて嬉しくなります。「そうだね」とか「なるほど」という言葉は、子どもを育てるときの合言葉にもなります。

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自分の中に眠る潜在能力を最大限に発揮するには、一体どんな言葉を使い、どんな意識で生きていけばよいのだろうか。どんな人でも桁違いの能力を発揮できる方法が、40年以上に及ぶ脳研究を通じて明らかになる。

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