「パニック症」の治療は、仕事を辞めて専念するべき?

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

<前編>パニック症は治るもの? その治療期間は?

仕事をやめて治療に専念したほうがよいですか?

パニック症の診断がついたからといって、必ずしも治療に専念しなければならないわけではありません。とはいえ、広場恐怖を伴っている場合などは、実生活上の問題も出やすくなります。この場合、一定期間休職するなど、治療に専念できる環境を整え、療養することも考えます。とくにうつ状態がみられる場合、心身ともにゆっくり休んで回復をはかることが必要です。

治療への専念が必要と判断される目安

・「 死んでしまいたい」という気持ちがある

・ほとんど毎晩寝つきが悪い、夜中に目が覚め寝つけなくなる、

早朝、まだ暗いうちから目が覚めてしまうなど、睡眠に問題が生じている

・朝、目が覚めても布団から出て活動を始める気力がわかない

・食欲がない日が続く、過食をくり返すなど、食生活に変化がみられる

・なにをしても楽しくない。以前には好んでいた娯楽や趣味も楽しめない

パニック症の発症後、それまでと同じようには仕事ができなくなることもあります。たびたび遅刻したり、職場で大きな発作を起こしたりして、これまでの生活を続ける自信を失ってしまう人もいます。だからといって「退職するしかない」と判断を急がないでください。「ほかの人に迷惑だから、私はやめなければ」という考えは、うつ症状の現れかもしれません。病状が改善すれば、また活躍できる日も来ます。主治医や産業医、職場の人とよく相談し、対応を考えましょう。

辞職より休職を検討しよう

・まずは休職を検討働き方、勤め先にもよりますが、休職制度などを用意している職場も多くあります。就業先に、どのような制度や支援のしくみがあるか確認し、その利用を検討してみましょう。

・休職中はしっかり休む休職中、上司などと連絡を絶やさないことは、職場とのつながりを失わないために大切ですが、負担感が強まったり、気持ちが落ち着かなくなったりすることもあります。必要な面談や手続き以外の用事で会社に立ち寄ったり、あらかじめ決められた頻度や方法を超えて、会社の上司や同僚と連絡をとり、仕事の状況などを尋ねたりするのはやめましょう。とくに休職初期は職場との距離を置き、ゆっくり心身を休めるようにします。「せっかくの休みだから」と、仕事や、仕事にかかわる勉強をするなどといったこともやめましょう。

療養期には、休養も治療の重要な柱です。十分な睡眠をとり、日中も活動する意欲がわかないときは無理せず休み、人に任せるようにします。予定や約束は入れないようにしたほうがよいでしょう。プレッシャーになるだけでなく、予定どおりにいかなかった、約束が守れなかったという場合、さらに気持ちが落ち込んでいくおそれがあります。焦らず、ゆっくり休みましょう。

体調が戻ってきたら、モードを切り替え、認知行動療法にも取り組んでいきましょう。

パニック症は治るもの? その治療期間は?