じつは、今までのシステムと「まったく違う」わけじゃない…いままでの「CDプレーヤーに代わる」存在とは

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類稀なる高音質で、話題になったネットオーディオ。しかし、割高な価格とダウンロードのわずらわしさから一部のマニアにしか支持されませんでしたが、高音質定額制配信サービスの出現で、大きく変わろうとしています。

ベテランと言われるオーディオ愛好家の中にも、CDやレコードなどの「パッケージメディア(パッケージ音源)」によるオーディオなら知識も経験もあるが、ネットワークが重要になった最近のオーディオに関しては、専門用語の意味もわかりにくいと感じている人もいるかと思います。

はじめてネットオーディオに挑戦するオーディオファンや音楽ファンを対象に、機材の選び方、高音質ストリーミングのセッティング、煩わしいネットの設定などなど、聴き放題の“1億曲ライブラリー”を手にするノウハウをご紹介しましょう。

※この記事は、『ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう』の内容を再構成・再編集してお届けします。

ネットオーディオのシステムは、従来のシステムとどう違うのか

ネットオーディオのシステムの全体像とデータの流れを理解するために、既存のオーディオシステムとの違いを図に示しました。

これまでのオーディオ再生はCDなどパッケージメディアをプレーヤーで再生するという一方向のプロセスが中心で、LPレコードのようなアナログ信号の場合はデジタル/アナログ変換機能(D/Aコンバーター)も必要ありません(図「パッケージメディアシステム(既存のオーディオ)」。

信号の流れはシンプルで変換処理は最小限ですが、信号処理と伝送系の両方でアナログ特有の音質劣化が発生することは避けられません。

デジタルによる信号処理とデータの受け渡しが特徴のネットオーディオ

一方、ネットオーディオはネットワークプレーヤーの出口まですべてデジタルで信号処理とデータの受け渡しを行うことに特徴があり、NAS(ネットワーク接続記憶装置)からネットワークプレーヤーまでの信号伝送と、操作に必要な情報のやり取りに家庭内ネットワーク(LAN)を利用します。

さらに、定額制音楽配信(ストリーミングサービス)の場合はインターネット上のサーバーに音楽データが保存されているため、家庭のオーディオシステムにはインターネットを通じて配信されます。

ストリーミングはインターネットと家庭内ネットワークという2種類のネットワークを使用することに加え、信号処理のプロセスも複雑になりますが、方法を適切に選べば信号の変換や符号化/復号の過程で音質が劣化することはありません。デジタルならではの強みです。

ネットワークプレーヤーの役割

オーディオ機器の進化はネットワーク再生の普及と密接な関係があり、データ再生ならではの長所を取り込んだ結果、新たに生まれたアイデアが実を結んだと言えます。

一方、機能の統合や一体化が進んでいるとはいえ、ネットワーク再生を担うオーディオ機器の中心として「ネットワークプレーヤー」がいまも重要な役割を演じています。

そして、ひとくちにプレーヤーと呼んでいますが、現在では多くのバリエーションが登場しており、それぞれ接続方法や機能に違いがあります。機器の役割と機能に注目しながら整理してみましょう。

ネットワークプレーヤーの基本形は、ネットワークインターフェース(LAN/Wi-Fi)とアナログ音声出力を備える単独のプレーヤーで、従来のCDプレーヤーに代わる存

在とみなすことができます。ネットワークインターフェースとはLAN/Wi-Fiを経由してネットワークと通信する機能のことで、配信されたデータを受け取ったり、希望の曲をリクエストしたりする機能です。

アナログ音声出力というのは配信されたデジタルデータを、D/A変換によってアナログ信号にする機能です。

2007年にイギリスのオーディオメーカーのLINN(リン)が発売したKLIMAX DSが源流で、デジタル信号のデコード機能やデジタルアナログ変換(D/A変換)回路

を内蔵しています。KLIMAX DSはネットワークプレーヤーのなかでは最もシンプルな形態で、大半の操作はスマートフォンやタブレットのアプリで行うことが基本です。

ちなみにネットワークプレーヤーと内容は同じですが、海外製品を中心にネットワークプレーヤーを「ストリーマー」と呼ぶこともあります。

ネットワークプレーヤーは10万円以下の普及価格帯から500万円を超える超高級機(ハイエンド)まで非常に幅が広く、参入メーカーが多いので選択肢も豊富です。特に普及価格帯からミドルクラスの製品の充実ぶりが著しく、ストリーミングに重点を置いて本体での操作性を改善するなど、シンプルな操作感を追求した従来のネットワークプレーヤーとは異なる志向の製品も見受けられます。」

ネットオーディオの主役「ネットワークプレーヤー」

図にネットオーディオの全体像を示しましたが、この信号処理のなかに、音楽信号の符号化(エンコード)と復号(デコード)というプロセスがあります。ネットオーディオではおなじみの信号処理ですが、リニアPCMという比較的シンプルなデジタル変換技術を使っていたCD時代とは様変わりしていて、種々の音声圧縮技術を用いた「複数の形式(ファイル形式)の異なる音楽データ」が配信されています。

*関連記事「音声圧縮技術によるファイル形式」については、こちら:CD1枚には「たったの1時間」だけしか入らない…なんと、収録時間を7倍にする「データ圧縮」の、じつに驚くべき効果」

この記事シリーズで取り扱う高音質音楽配信の大半は、復号されたとき元の音楽データと異なり音質劣化(情報の欠落や変化)のある非可逆方式の符号化ではなく、元の音楽データと完全に一致する可逆方式の符号化を用いています。ただし、一部のダウンロード配信やストリーミングサービスでは可逆方式の符号化が使われている例もあります。

個々の符号化の仕組み(ファイル形式)を理解しておく必要はありませんが、ネットオーディオの方が信号処理は複雑になり、再生機側に「圧縮されたデータを元の音楽情報に復号するデコード回路」が必須となることは頭に入れておきましょう。

これまでにも触れてきたことをまとめると、つまりネットワークプレーヤー(あるいはストリーマー)は、データ再生の中心に位置する重要なコンポーネントと言えます。

主な機能はネットワーク経由で受信した音楽データの方式(ファイル形式)やサンプリング周波数などを識別して適切な復号(デコード)を行い、デジタル/アナログ変換を行って音楽信号を出力することです。復号とアナログ化の2つの作業です。

アナログ信号を出力するという点ではCDプレーヤーと変わらないので、アンプから見たらどちらもソースコンポーネント(音源を再生するプレーヤー)ということになります。

さて、このデータ再生の主役であるネットワークプレーヤーを選ぶ際のチェックポイントについて解説しましょう。

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ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう

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