300万円未満家庭と600万円以上家庭の「放課後の体験格差」の現実

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習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか?

低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。

発売たちまち6刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。

*本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。

今回の調査では、子どもたちの学校外での「体験」を、主に「放課後」に行うものと、「休日」に行うものに分けている。このパートでは、主にスポーツ系や文化系の習い事やクラブが含まれる「放課後」の体験についての調査結果を見ていこう。

ここで対象となる「体験」の多くは、野球のコーチや楽器の講師など「大人の指導者」がいて、かつ一度きりではなく「定期的な参加」が前提となっているものが多い。

スポーツ系でも文化系でも

世帯年収別にスポーツ系と文化系のそれぞれについての参加率を見ると(グラフ8)、どの年収でもスポーツ系のほうが文化系よりも高い参加率となっている。

また、スポーツ系でも文化系でも、世帯年収が高いほど参加率が高くなっている。

まずスポーツ系を見ると、300万円未満の家庭では36.5%の参加率であるのに対し、600万円以上の家庭では59.8%となっている。1.6倍を超える格差だ。

同様に、文化系でも、300万円未満の家庭で17.6%、600万円以上の家庭で31.4%と、1.8倍近くの格差となっている。

結果として、スポーツ系であれ文化系であれ、「放課後」の体験の機会を一つ以上得ている割合は、世帯年収600万円以上の家庭であれば7割を超えているのに対し、300万円未満の家庭では半数に満たない。

要するに、300万円未満の家庭では子どもの半数以上が「放課後」の体験がゼロだということだ。

これら「放課後」の体験においても、最も大きな壁となるのはお金の問題だ。定期的な費用として数千円の月謝(数万円のものもある)がかかり、加えてことあるごとに用具や楽器、移動や宿泊などに関する費用もかかってくる。

なかには参加費がほとんどかからない場合もある。ボランティアが放課後に学校の体育館等で運営するクラブなどだ。しかし、それでも「送迎」や「当番」の問題は折り重なってくる。

スポーツ系は保護者の当番が必要だがそんな時間は仕事中なので当番も送り迎えも出来ない。ひとり親なので仕事をしなければお金が入らない。ひとり親家庭は金銭的にも時間的にもまったく何もさせられない。(鳥取県/小学4年生保護者)

お金という意味でも、時間という意味でも、様々なリソースが乏しい低所得家庭、そしてひとり親家庭の保護者にとって、子どもたちに「放課後」の体験をさせることにはいくつものハードルが存在している。

つづく「意外と知らない「子どもの体験」の実態、一番格差が大きいのは「水泳」だった」では、人気の水泳と音楽で生じる格差についてデータから深堀りしていく。

意外と知らない「子どもの体験」の実態、一番格差が大きいのは「水泳」だった