「腐る職場」のヤバい実態…「ボーナスカット」を脅し文句にする上司が組織を悪化させる

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根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

上司による八つ当たりは厄介

何らかの権限を持っている上司から八つ当たりされたら、本当に厄介だ。

大企業に勤務する40代の男性課長は突然部下を呼び出して「この案件はどうなっているんだ。注文が取れなければボーナスはカットだ」「なんでこのプロジェクトはなかなか進まないんだ。のろのろしていたら、お前を外すぞ」などと怒鳴りつける。

こういう爆発は、部長から業績のことで叱責を受けたり、会議で進捗状況を詰問されたりした後の数日間に多いそうだ。だから、やはり「置き換え」のメカニズムが働いていると考えられる。

課長は、本音では「売れる製品を出していないのだから、そんなに簡単に注文が取れるわけないだろ」「ぎりぎりの人員でやっているのに、そんなに早くできるわけないだろ」などと言い返したいのだが、そんなことは怖くてできない。だから、ぐっと堪えているが、どうしても怒りや欲求不満が溜まるので、その鬱憤を誰かにぶつけずにはいられない。そのへんの事情は部下も薄々わかっているようだ。

だからといって、自分が八つ当たりの対象にされることを許せる部下がいるだろうか。たとえいたとしても、ごく少数で、ほとんどは「ふざけるな。人をサンドバッグ代わりにしやがって」と怒鳴りたいはずだ。

しかも、厄介なことに、課長は、ボーナスをカットするとか、プロジェクトから外すとかいう脅し文句を口にしている。ある程度の権限を持っている上司からこんなことを言われたら、「本当にそんなことになったらどうしよう」と不安にさいなまれるかもしれない。あるいは、「大変だ。何とかしなければ」と考えて重圧に押しつぶされそうになり、「でも、一体どうすればいいのか」と悩むかもしれない。

いずれにせよ、ストレスがかかる状況であり、怒りや欲求不満が溜まる。必然的に部下もそのはけ口をどこかに求めずにはいられず、鬱憤晴らしの対象を探す。その対象はどうしても自分よりも弱い立場の相手になりやすい。後輩、とくに新入社員だったり、派遣社員だったり、パートタイマー・アルバイトだったりする。さらに、鬱憤晴らしの対象にされた側も、もっと弱い相手を探し求めて、当たり散らす。こうして「置き換え」によって、八つ当たりの連鎖が起きる。

このような連鎖が起きている職場では、いつ怒鳴りつけられるかわからないという不安から、みなびくびくしており、ぎすぎすした雰囲気が漂っている。そのため、仕事の能率が低下して、業績も悪化することが少なくない。

当然、それに対して激怒したトップもしくは管理職が部下を怒鳴りつけることは容易に想像がつく。すると、怒鳴りつけられた部下も、自分より弱い相手に対して同じことを繰り返す。結果的に悪循環に陥っていくのである。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。

どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体