インタビューに答えるSOMPOダイレクト損保の中川社長(東京都新宿区で)

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 SOMPOダイレクト損害保険は、インターネットや電話など、顧客と対面せずに商品を提供するダイレクト型の大手だ。

 2024年10月、社名をセゾン自動車火災保険から変更した。価格やサービスを始め、競争が激しい分野の戦略について、中川勝史社長に話を聞いた。(聞き手・橋爪新拓)

事業効率いかに高めるか

 ――強みは。

 「2011年にダイレクト型保険に参入したが、最後発だった。現在はこの分野の自動車保険で2番目に位置する。何が理由かといえば、特徴のあるサービスを提供してきたことがある。当時は30〜40歳代がメインだったが、40〜50歳代のおとなの自動車保険が主力で、年齢別の保険料の仕組みも作った。年齢の違いによる条件もない。事故現場にかけつけるサービスでも先行している。強みを生かしていきたい」

 ――ダイレクト型は競争が激しい。

 「中期計画で、オーガニックな成長を実現する前提として、競争の源となる二つのことを進めるとした。一つはオペレーション。ネット型なので、お客様が求める価値は価格にある。価格競争力をつけるには、事業効率をいかに高めるか。代表的なものが、保険金サービスとコールセンター。1000人弱の全社員のうち、半分が損害サービスで働いており、その半分がコンタクト部門にいる。

 オペレーションを変えることが重要で、これまでは人の力、スキルを前提にしてきたが、契約が増えれば、その分、人を増やさないといけない。今の労働環境を考えると簡単ではない。オペレーションを自動化できれば、事業効率が改善する。海外では専門性や高いサービス品質を実現する方法があって、その通りにやればいいとも思わないが、変えていきたい。

 もう一つは、クレームセンターという損害サービスのオペレーションセンターを導入した。世界で豊富な実績があるシステムで、技術革新に対応した解決方法を示してくれる。フルに活用しながら、仕組みを変えていきたい。クラウド型のシステムで活用の余地が広がっていくと思う」

人がやる領域、専門性の高い部分に絞る

 ――オペレーションの改革はどう進めるか。

 「足元では業務管理を行っている。本当にやらなければいけないのは途中のプロセスで、人間がやらなくていい作業や判断をいかに自動化できるか。人がやる領域を専門性の高い部分に絞ることができれば、生産性も上がる。部分的な改善はこれまでもやってきたが、効果を感じにくい。最適な技術を組み替えていきたい。

 たとえば、保険金を支払う時のチェック。人の目や経験で判断しているものは多いが、そうではない部分もある」

 ――若者の自動車離れや修理代の上昇もあって、収益確保が難しい。

 「直近の決算も赤字だった。保険金の支払いが多くなっている。事故は、コロナ禍が明けて増えた。インフレ(物価上昇)がどれだけ修理費に影響しているか、見込みは立てられるが、将来はわからない。一方、自動車の性能が高まり、事故の発生率が減っていくという試算もある。両方の要素を考えながら、適正なリスク、ニーズにあった保険料を考えることが重要だ。

 新たに導入したシステムによって、ビジネスに関するデータが広くみられるようになった。意思決定や経営にも使える。(価格を決定する)プライシングも、早く実現したい。海外で実績を残した人材も採用した。結果として、お客様のニーズにあった商品を増やしたい。

 年代別では、20歳代が厳しい。免許を取る人が減り、親の車に乗っている人も多い。免許を持っていて、認知が高い40〜50歳代向けに力を入れたい」

 ――損保では代理店との関係が問題視されている。

 「大手だけでなく、損保業界そのものの課題だ。濃淡はあるが、対岸の火事とはせず、しっかりみていきたい。代理店チャネルに価値を感じている人もいる。ネット販売の特色を示して、この領域をしっかりと磨き上げたい。個社だけでなく、業界全体の信頼を回復したい」

 ――セゾン自動車火災保険から社名を変更した。

 「損保ジャパンの出資比率が100%になったのがきっかけだ。今までは社名よりも商品開発に力を入れてきた。今後は、お客様に新しい価値を提供するため、グループでプラスになるノウハウを一層共有していく。そうした点で、SOMPOの名前を掲げることには意義がある」

 ◆中川勝史氏(なかがわ・かつひと) 1995年神戸大経営卒、安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社。2023年セゾン自動車火災保険取締役副社長を経て、24年4月から社長。24年10月、SOMPOダイレクト損保に社名変更。大阪府出身。