「パニック発作」が起きるのは、決まって電車の中。「広場恐怖」の真実

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

前編<「パニック症」になるのは気が弱いだけ? よくある世間の誤解を名医が解説>

発作はいつも電車内で起こります。パニック症でしょうか?

電車に乗ることだけを恐れ、無理に乗るとパニック発作を起こすというのであれば、限局性恐怖症かもしれません。

しかし断言はできません。電車内での発作をくり返すうちに「別のところでも発作が起こるかもしれない。起きたらどうしよう」「いつ、どこで発作が起こるかわからない」という不安がみられるようになっているのであれば、パニック症の可能性があります。

パニック発作が起こりやすい場所のひとつに、混雑した電車の中など、閉鎖された空間で人が多いところがあります。これは、二酸化炭素の濃度をキャッチするセンサーが鋭敏であることが関係しています。二酸化炭素濃度の高まりをいち早くとらえ、「ここは危険」と認識するために逃げ出したくなるのですが、それができない状況にあるために不安が募っていくのです。

広場恐怖とはなんですか? 限局性恐怖症との違いは?

パニック発作に対する強い恐れから、「発作を起こしたときに助けを得にくい」などと思えるような状況や場所を強く恐れるようになっていくことがあります。「広場恐怖」といわれる状態です。

恐怖の具体的な対象は、実際に発作を起こしたことがあるところだけでなく閉ざされた空間(閉所)、高いところ(高所)、暗いところ(暗所)など、いろいろです。ある特定の状況や場所に対してのみ、強い恐怖感がみられる状態なら限局性恐怖症といいますが、そうしたところがいくつもあれば広場恐怖症と考えられます。

たとえば次のようなところです。

・公共の交通機関

・映画館や劇場

・人ごみ

・橋やトンネル

・商店街やデパート

・その他、家の外でひとりで過ごす状況

「逃げにくい」「助けを得にくい」と思えるような状況や場所はいつでもどこでも度を超した不安や恐怖に襲われるため、家から外に出ることが難しくなったり、常にだれかといっしょでなければ行動できなくなったりするなど、生活に大きな支障をきたします。

広場恐怖は、パニック症なら必ず起こるというわけではありませんが、深く関連します。恐怖の対象が広がらないうちに、適切な対応を始めることが大切です。

「パニック症」になるのは気が弱いだけ? よくある世間の誤解を名医が解説