ゲイカップルは「部屋探し」で一番苦労する…知らないところで行われている「意外な差別」

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少子高齢化や働き方の多様化(非正規化)など日本社会が抱えるさまざまな問題が絡み合い、近年急増しているという“住宅弱者”。国籍、セクシュアリティ、経済力、社会的立場など多岐にわたる理由で、賃貸への入居や住宅購入で高いハードルを感じる人は多いだろう。

現行法上、同性婚が認められていない日本で、これまで住宅ペアローンを組めずにきたのがLGBTQカップルだが、2017年のみずほ銀行を皮切りに同性パートナーを住宅ローンの配偶者の定義に加える銀行も増えているという。

今回は不動産会社「家や不動産」の代表で住宅弱者支援専門家の會田(あいだ)雄一氏に、同性カップルが新居探しの過程で晒される偏見について話を聞いた。

フレンドリーを謳っていても実際は現場任せ?

「住宅弱者支援に本格的に力を入れ始めたのは、住宅ローンの返済で困窮している方を支援する団体の説明会に参加したことがきっかけです。長年、不動産業界に携わってきた中で何か社会貢献したいと思っていたんですが、その団体でなら自分の知見を生かせるのではないかと思いました」(會田氏、以下同)

「家や不動産」の住宅弱者支援の柱は住宅ローンの返済困窮者・離婚(ひとり親/住宅ペアローンの解消)・LGBTQの3つ。相談件数の割合はそれぞれ3割ほどで、住宅価格高騰で住宅ペアローンでのマンション購入が増えていることなどもあり、最近は少しずつ離婚関連の相談も増えているようだ。

「離婚されるご夫婦はバチバチの紛争状態にあることも多いので、新居探しやペアローンの手続きにまで気持ちも頭も回らない。なので、第三者の人間がフラットに質問や相談できる場が大切なんです。

LGBTQフレンドリーで有名な不動産屋は我々だけでなく、例えば新宿や福岡などにも有名な会社さんがありますが、数としては本当に少ないです。ホームページなどでフレンドリーを謳うところはけっこうありますが、実際は現場の担当者任せで、対応の仕方や考え方にもバラつきもあることも多いようですね」

同居を希望する同性カップルの場合、そのセクシャリティを理由に不動産会社や物件オーナーから部屋を貸し渋られるケースも少なくないようだ。

「入居を断られたり、住居を探してもらえなかったり。そもそもルームシェアできる間取りの賃貸の絶対数が少ないこともあり、管理会社や大家サイドが立場的に強く、入居者を選びやすい立場にあることも背景にはあります。

レズビアンやゲイといった同性カップル、とくに男性同士で入居できるお部屋探しは難航しますね。「まだ女性同士だったらよかったんだけど」などと言われてしまうケースも過去にはありました」

とくに強い偏見にさらされるゲイカップル

同性カップルの中でもゲイカップルのほうが部屋探しでより苦労しやすい。その背景にあるのは、ただのイメージと偏見でしかないと會田氏は指摘する。

「女性同士の賃貸探しのほうがやりやすいというのも、ゲイカップルよりもまだマシというレベル感ですが、ゲイカップルが忌避される具体的な理由があるわけではありません。

不動産業界のLGBTQに対する偏見も9割以上は世間の偏見に基づくもので、要するに風評被害を恐れているんです。特定のパートナーのいない人たちの出会いの場、いわゆるハッテン場的なイメージなどもあるのかもしれませんね」

同性カップルは関係が長続きしにくいといった話を聞くこともあるのだが、例えばゲイカップルの関係の破綻による賃貸契約の解消が多いといったことは実際にあるものだろうか?

「LGBTQと一口に言っても、実際にはいろいろな考え方の人たちがいるんですよね。確かに特定のパートナーがいても遊ぶのが好きなゲイも中にはいるかもしれませんが、そこはストレートの男女だって変わらない。個人的には“同性だから”という理由でそんなに大きな差はないと思います」

とくにゲイカップルに関しては、世間のイメージから実態が大きく乖離しているようで、一部のストレオタイプなイメージやカルチャーが先行しすぎるようだ。

「メディアでゲイが誇張して取り上げられがちなことも大きいと思います。少なくとも普段の生活では自分のセクシャリティを隠し、ひっそりと暮らしている人が大半で、ご近所さんや大家さんとトラブルに発展するようなこともまずありません。むしろ普通の人より悪目立ちしないように暮らしている人がほとんどだと思います」

「フリーランスで働くLGBTQの当事者も多い」

「家や不動産」では公正証書やパートナーシップ証明書の取得など、同性パートナー向け住宅ペアローンのための手続きもサポートしている。「パートナーシップ宣誓」は自治体が性的マイノリティのパートナー関係を認める制度で、その証明書の取得が住宅ローン審査では必要になる。

現状では9割型の自治体で整えられている制度のようだが、住民票のある区などの自治体が変わると新たに申請する必要があり、結婚制度のように全国一律で関係が認められる制度ではない。

「LGBTQカップル向けの住宅ペアローンを提供している銀行は複数あります。ようやく去年からはフラット35も利用できるようになりました。LGBTQ当事者は企業・職場で困難を感じ、フリーランスとして働いている方も多く、LGBTQ×フリーランスだと住宅ローン審査をクリアするのは二重で大変でした。

業務委託で収入を得ている人でも確定申告書で利用できて、団体信用生命保険への加入が任意のフラット35が使えることになったのは、大きな前進だと思います」

會田氏によると、プライドパレードなどに参加する不動産事業者も一時期よりも見かけることが増えた印象を持っているそうで、少しずつではあるがLGBTQに理解を示す同業者も増えてきていると感じているという。

「不動産業界って偏見の塊みたいな業界だと私は思うんですが、いちいち“LGBTQフレンドリー”なんて謳う必要性もなくなるくらい、それが当たり前の時代になればいいのかなと。不動産業界のアンケートの性別欄などは基本的に今すぐなくしても支障ないと僕は思っていますね」

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