「猫が壁ガリガリしても叱らないで」なぜ猫は爪をとぐの?専門家が伝える2つの理由

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“うちでは猫が爪とぎしても大丈夫なソファにしてますが、角が好きでカリカリ困ってます。”

“「さて!」みたいな感じで壁に爪とぎしようとしたので、慌てて爪とぎシートを貼りました。”

“以前のソファはあまりカリカリしなかったので大丈夫だと思っていたら今回のは好きみたいで……”

“台所で手を洗っていたら、玄関の方から、バリバリッっと物騒な音が! マットが‼”

Xには猫の爪とぎに困っている、または爪とぎ対策を語る投稿がたくさんあがる。

筆者の家でも、今秋3歳になったメス猫があっちの壁でガリガリ、こっちの椅子の座面をカリカリ、ソファの角をバリバリなどとやってくれる。

専用の爪とぎの上にわざわざ立ち上がって、壁の高い所を狙うことも。

なぜ、やりやすい専用爪とぎでやらない?

どうしたら“その大事な家具”から遠ざけられるのだろう。

東京大学、および大学院で獣医学を学び、在学中にカリフォルニア大学デービス校付属動物病院にて行動治療学の研究をされた高倉はるか先生の、ペットのお悩み相談に答える連載。ありがたくない場所にされる爪とぎを、どうしたらやめさせられるかを聞いてみた。

すると、「ペットと人の双方が楽しく快適に暮らす」ための提案をモットーとするはるか先生は、一方的にやめさせるのではなく、代わりの何かを与えてほしいと言う。

なぜなら、猫の爪とぎには、2つの重要な意味があるからだ。

叱ったり、やめさせると思わぬストレスになるという“猫のガリガリ”に、どんな意味があるのか、解説いただいた。(以下、はるか先生の言葉)。

猫の爪とぎには理由がある

猫の壁ガリガリは、無意味にやっているわけではありません。

大きく言うと、2つの理由があります。

お客の荷物にマーキングする理由は

そのひとつが、マーキングです。

マーキングには、ツメをガリガリさせることで視覚的な効果を狙うものと、指の間にある匂いの腺からの分泌物をこすりつけるための、2種類があります。飼い主に甘えるように、おしりや頭をこすりつけてくるのも後者。おしりのあたりや頭の側面にも匂いの腺があるからです。

オスなら壁などに垂直上におしっこをかけるのもそう(気の強いメスもやることがあります)。

うんちに砂をかけているように見せて、逆に「ここにあります!」と主張していることも。それも、視覚的な前者かもしれないですね。

猫がマーキングするのは、自分の匂いをつけて、縄張りを主張する意味もありますが、同時に自分を落ち着かせるためでもあります。

自分のテリトリー内で他の動物の匂いや、見知らぬ匂いをかぐと、不安になるものです。その不安を払しょくしようと、あたりをガリガリして自分の匂いをこすりつけて、落ち着かせます。

時々、家猫が外を歩く他の猫を見て、普段やらない場所で急にソファや壁をガリガリすることがあります。

これは見知らぬ猫にイラついたり、不安になって、興奮をおさえようとしています。飼い猫を観察すると、外にいる猫からちょっと隠れた、カーテンやソファで死角になる場所でやることが多くないでしょうか。それは、ケンカするつもりはないけど、このイライラを発散したい! そんな猫の気持ちを表しています。

家に珍しい人が遊びに来た時に、その人のコートやバッグにおしっこをひっかけることもあります。それも、ここに知らない人の何かがあります」と家族に知らせようとするマーキングのひとつです。

爪とぎをすると気分すっきり?

マーキングのもうひとつの理由は、ストレス発散です。

リビングなどで家族がくつろいでいる脇で、家族の顔を見ながらガリガリする時は、「構ってくれない」ことへの不満のアピールかもしれません。また、不愉快な匂いを感じたり、嫌な相手の近くにいる我慢を強いられている時も、ガリガリしたくなります。

こんな時のガリガリは、絶対怒らないでくださいね。

爪とぎを怒られると、余計にストレスがかかります。

ストレス解消しようと爪とぎをしたら、さらに怒られる。こんなにかわいそうなことはありません。

では、大事な家具や家を傷つけられたくない時は、どうしたらいいでしょう。

一番いいのは、猫の通り道に高価な家具は置かないこと。高価な家具は猫との同居はできるだけ避けてもらえたらと思います。

猫は、爪を研ぐし、おしっこをかけるかもしれない、ということを知っておいてほしいのです。

この部屋には入れません、という“禁止エリア”をつくるのもありですが、猫も(もちろん犬も)家族の一員として、できるだけ飼い主さんと一緒に過ごしたいと思っています。家族がみんなでくつろぐリビングを禁止エリアにするのは、かわいそうですね。

「うちのは人好きではないので、寄ってこないんです」という飼い主さんもいますが、それでも「猫の気が向いた時」には家族と一緒に過ごせる場所は確保してあげてほしいです。

猫は爪とぎする場所を決めている

家の中で爪とぎをする場所が決まっているなら、その場所に専用の爪とぎを置くのが一番です。

実は、猫が爪をとぐ場所というのは、どこでもいいわけではありません。部屋と部屋の間の柱とか、外が見える窓の近くのソファの脇とか、廊下に出る部屋の角とか、「ガリガリしたい場所」というのがあります。

そういう場所では猫が気持ちを切り替えやすい。なので、わざわざそこを選んで、やりに行くことが多いのです。

また、猫が「爪を研ぎやすい」素材というのもあります。

ツメがひっかかりやすい籐の家具や、少し古くなってきた革素材、ソファなどのファブリック。ほかにも、壁紙はビニールよりもざらっとした素材がやりやすいようです。

位置や素材を気に入ってしまうと、どうしてもそこでやろうとしてしまうので、そこで「やってほしくない」のなら、工夫をしましょう。

専用の爪とぎシートを貼り付ける、立て掛ける。見栄えが悪くなっても、効果的なのは隠す形で覆うこと。時間がたって、少しずつ脇にずらしていくと、だんだんとなくてもやらなくなったりすることもあるので、試してみてください。

とりあえず、今ここでやって困るなら、そこに爪とぎをおく。

他の場所にもいくつか置いてあげるといいと思います。

◇猫が飼い主の顔を見上げながら爪を研ぐのは、なにかを訴えたいことがあるのかもしれない。忙しくても手を止めて、「わかってほしい」猫の声を注意深く聞いてあげて欲しい。

一方で、猫を飼ったからお気に入りの家具をすべて「爪とぎシート」で覆うのも、今度は飼い主側のストレスにならないか。

そんな問いかけに、はるか先生が”猫の爪とぎしたい気持ちをそらす方法”があると教えてくれた。

後編「猫の爪とぎに悩む…プロが伝授、『猫の壁ガリガリ』を今すぐやめさせるとっておきの方法」では、具体的なその”方法”をお伝えする。

猫の爪とぎに悩む…プロが伝授、「猫の壁ガリガリ」を今すぐやめさせるとっておきの方法