何発も平手打ち、出血で顔面真っ赤…中国で退役軍人が「怒りの蜂起」!火を付けた公安幹部「愛人」の特権意識丸出し暴行事件の一部始終

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逆恨みの平手打ち十数発

山東省青島市の東部に位置する国家級「風景名勝地(風景名所)」崂山区(ろうざんく)の東端の海に面し、多くの観光客が訪れる景勝の地、青山村で、2023年8月28日の午後1時頃、交通事故が起きた。

村内の展望台付近を通る上下2車線の道路を通行していた「路虎車(ランドローバー)」が、進行方向の渋滞に業を煮やしたのか、突然ハンドルを切って対向車線へ進入した。2台前を走る大型観光バスの前方にできた空スペースに割り込もうとしたようで、無理やり対向車線を逆走したが、前方からRV車が走行して来たので慌ててハンドルを右に切り大型観光バスに追突して急停止した。因みに、ランドローバーのナンバープレートを見ると、地元の車両であることが確認できた。

急停止したランドローバーを運転していたのは、クリーム色の帽子をかぶって黒色のマスクをした女性だった。彼女は観光バスの運転手とは事故処理については了承を取り付けた。が、対向車線のRV車に対しては逆恨みの怒りが湧いたようで、交通指導員を押しのけるとRV車に向かった。RV車の運転席には地元の崂山区に在住する26歳の林某潤が座り、後部座席には彼の妻と思われる女性と子供1人が乗っていた。

女性は何の断りもなくRV車の助手席側ドアを開けると、車内に身を乗り出すようにして運転席の男性に迫り、「どこ見て運転しているだ」と叫ぶや否や男性の顔を平手で何発か叩いた。これを見ていた周囲の男たちが女性をRV車から引き離そうとしたが、それがかえって彼女の怒りに油を注いだようで、彼女は男たちを振り切ると、再び助手席側ドアを開けて半身を乗り入れて運転手の男性に悪態をつきながら、さらに何発か男性の顔面に平手打ちを食らわせた。

まだ気が晴れないのか、女性はEV車の運転席側に回り込み、開いていた窓から運転席に座る男性の顔にまたしても平手打ちを何発か食らわした。これに驚いた周囲の男たちは彼女をランドローバーの傍まで連れ戻したが、彼女はすぐにRV車の運転席側に戻ると、さらに運転席に座る男性の顔を平手で何発か叩いた。その後は鬱憤を晴らすかのように、彼女はRV車の車体後部を何回も蹴とばしてしたが、それでもまだ足りないのか、再度運転席側へ近づくと運転手の男性の顔を平手で連続して何発も殴ったのだった。この打撃が強烈だったのか、男性は口と鼻から激しく出血したが、それは顔の下半分が真っ赤に染まる程の流血だった。

男性は女性に対して「何をするのだ」と抗議したようだったが、女性は男性に向かって、「私(あたし)があんたを叩いたからって何なのさ。私が逆走したからって何なのさ。警察に通報したけりゃ、通報すれば良いけど、私はあんたを許さないからね」とわめき散らした。

女性の暴力に対して何の反撃もせずにずっと我慢を続けていた男性だったが、この言葉にはさすがに忍耐の限界を超えたようで、RV車から降りて女性に対峙しようとした。女性はランドローバーに乗り込むと逃走を図ろうとした。男性は女性を逃がすまいとランドローバーの前に立ち塞がったが、そこにそれまで女性を擁護するそぶりを示しながら傍観していた黒の上下を着た中年男が躍り出て、男性を脇に押しやってランドローバーに道を開けた。その間隙を縫って、女性が運転するランドローバーは一目散に逃げ去ったのだった。

女は地元公安幹部の「愛人」だった

RV車の男性は、青島市公安局崂山分局へ暴行事件として通報した。崂山分局はランドローバーの女性を見つけだして取り調べを行った。そして、8月29日付で次のような「情况通報(事態報告)」を発表した。

【情况通報(事態報告)】

2024年8月28日13時頃、王某(女、38歳、崂山区在住)は車で崂山区青山村の展望台付近を走行していた時に逆走し、車で正常に走行して来た林某潤(男、26歳、崂山区在住)が道を譲らないという理由で、下車した王某は林某潤に対して口汚く罵(ののし)り、殴打した。公安機関は通報を受けた後に迅速に任務を展開し、王某を逮捕した。

調査を経て、王某の行為は『中華人民共和国治安管理処罰法』第42条、第43条の規定に違反するので、公安機関は法に基づき、王某に対し行政拘留10日間、罰金1000元(約2万円)の処罰を科した。

青島市公安局崂山分局   2024年8月29日

事件現場に丁度居合わせた人物が、大型バスに追突したランドローバーから女性が降りた時から、彼女がRV車の男性に暴力を振るった後にランドローバーに乗って逃走するまでの一部始終を動画で撮影していた。この人物は当該動画をSNSに投稿したが、動画は大いに注目を浴びて評判となり、中国全土へ拡散された。その結果、王某に対する処分が余りにも軽すぎるのではないかという世論が沸き上がり、これと同時にネットユーザーによる王某に対する身元調査が始まったのだった。

身元調査で当初に判明したのは、王某の本名は「王慧(おうけい)」であり、多くの企業の法定代表を務めており、その関連する企業は83社に上る。その後の追跡調査によって。王慧の身分は崂山区の「城市服務中心(都市サービスセンター)」の副主任であり、地元の役人仲間では遊び好きな女として知られていることが判明した。

青島市公安局崂山分局の分局長である黄継亮(きけいりょう)は青島市副市長で青島市公安局長の于瑞波(うずいは)に取り入ろうと王慧を紹介した結果、王慧は于瑞波の「小三(愛人)」になっていた。于瑞波は王慧を青島市公安局内の部署である「政治処」に転任させる手続き中であったのだが、王慧が大きな顔して威張り散らしていたのは、于瑞波が後ろ盾であったからだった。

調査によれば、ランドクルーザーが大型バスに追突した事故の発生直後に、王慧は慌てて于瑞波に電話して救援を要請した。要請を受けた于瑞波はすぐさま崂山分局副局長の王開磊(おうかいらい)に現場に急行して事故処理を行い、王慧の現場からの離脱を助けるように命じたのだった。事故現場に突然現れ、王慧を擁護し、王慧が現場から逃亡するのを助けた黒の上下を着た男こそが、于瑞波局長から命令を受けた王開磊であったのだ。

崂山分局の【情況通報】には王慧は行政拘留10日間の処罰が下されたはずだったが、ネットユーザーからの通報によれば、王慧は事件当日の夜に于瑞波、黄継亮、王開磊の3人と一緒に「怡情楼(いじょうろう)飯店」という名の料理屋で飲食を楽しんでいたとのことで、彼らは王慧の事件をたいしたことではないと見なしていたのだ。

全国退役軍人の抗議

一方、被害者である林某潤の負傷情況に関する「鑑定意見通知書」は8月29日に青島市公安局崂山分局名で公表されたが、そこには「林某潤が殴打された傷の程度は軽微である」との鑑定結果が記載されていた。この通知書の鑑定結果が王慧に対して行政拘留10日間と罰金1000元という軽い処罰が下された理由であった。但し、林某潤はその後に負傷の治療のために入院すると同時、自身が経営する民宿も営業停止を余儀なくされ、資金的に逼迫した情況に陥っていた。

林某潤は兵役を終えた退役軍人であった。事件の経緯と問題点を退役軍人事務管理局に訴えると同時に全国の退役軍人に対してSNSを通じて事件の全容を伝えて協力を要請した。この林某潤の要請に対して全国各地の退役軍人が声を上げて、青島市公安局の不埒な対応を非難した。青島市副市長で公安局長を兼任する者が、あろうことか自分の「小三」を擁護するために正義を踏みにじり、手加減して「小三」の罪状を軽微なものとみなして、処罰を軽減するとは何事かと抗議の狼煙を上げたのだった。

国家の為に軍役に就いた経験を持つ退役軍人をないがしろにして、自身の「小三」を擁護する人物を副市長兼公安局長にしておく青島市政府は何を考えているのか。各地の退役軍人たちはこの事態に憤慨して、兵役に就いて国家に貢献した軍人家庭に対して各省人民政府から贈られて名誉とされる「光栄之家」と書かれたプレートを住宅の門口から取り外した。この行為は、中国全土で次々と行われ、SNSには各地の退役軍人がプレートを取り外す動画が非常に多数投稿された。

一方、全国各地の退役軍人たちが林某潤の擁護を目的に青島市へ押しかけた。遼寧省大連市からは青島市公安局に対する抗議行動を実施するとして退役軍人の集団が大型バス21台を連ねて青島市へ向かった。彼らは退役軍人による暴走を恐れた中央政府によって高速道路の通行を阻止されるなどの妨害を受けたが、それでも最終的に青島市に到着した。

必死で隠蔽を図る青島市公安当局

事件を取り巻く情勢が不利と見た青島市公安局は9月3日に中国語で1800文字という長文の「情况通報(事態通報)」を発表して事件の鎮静化を図った。その要点を列記すると以下の通り。

1)容疑者の王某(女、38歳)はかつて茶葉販売店や個人運送業を営んでいたが、現在は決まった職業はない。

2)事件当日、王某は医院を予約していたが、渋滞で予約時間に間に合わないので、前方に割り込もうと車を逆走させたが、前方からRV車が走行してきたので、衝突を避けようとハンドルを切って観光バスに追突した。

3)8月29日付で発行された林某潤の負傷情況に関する「鑑定意見通知書」は、林某潤の顔面と上半身の傷は軽微な打撲と鼻血であり、損傷程度は軽微であった。このため、加害者の王某には林某潤を殴打したこと対し行政拘留10日間と罰金500元(約1万円)、林某潤を侮辱した行為に対し罰金500元を科した。

4)王某は公安局崂山分局に出頭した後に、自身の違法行為を後悔し、林某潤宛の「道歉書(わび状)」を書いて、林某潤に対して謝罪し、林某潤の医療費用を負担し、損害を賠償する意向を表明した。なお、林某潤は本件による医療費用と経済損失を請求する民事訴訟を裁判所へ提起することができる。

5)現場の動画に出現した上下黒の服を着た男は公安警察官ではないかという噂がSNSで飛び交っているが、当該男子は青山村在住の個人事業主である。当時の彼は車で現場を通りかかって渋滞に巻き込まれていたが、偶然に王慧が林某潤に対して暴言を吐き、暴行するのを目撃して車から降りて、感情的になっている王慧をなだめようとしていたものである。王慧が逃亡しようとした際には、王慧の車のナンバープレートをメモするように林某潤に進言したのであって、決して王慧の逃亡をほう助したのではなかった。

中国語の文章を日本語に翻訳すると、通常は1.5倍の長さになる。9月3日の「情况通報」は、日本語なら2700字となるが、こんな長文の「情况通報」を筆者は見た覚えがない。

そこには青島市公安局が必死で真相を隠蔽しようとする欺瞞が見え隠れしているように思える。

退役軍人の圧力が

青島市公安局が言うように、王慧が決まった仕事がない無職の人間であるならば、高級SUVのランドローバーを所有していることも不思議だが、自分が逆走したことを棚に上げて、怒りに任せて林某潤に暴行と暴言の限りを尽くした異常さを考えると、その理由は自分には確たる後ろ盾がいるという慢心以外には考えられない。

中国人女性は一般的に自己主張が強いと言われるが、王慧のように男性が抵抗しないのを良いことに、調子に乗って相手の顔面を流血するまで叩き続けるようなことは極めて稀なことだと考えられる。そこには確固たる後ろ盾の存在があるからであり、王慧が青島市副市長で公安局長である于瑞波の「小三」である可能性はますます強まったと言えるのではないだろうか。

なお、8月31日に中国退役軍人事務局は公文書を発信し、次のように述べた。即ち、「同事務局は本件の被害者である「戦友」の林某潤と既に連絡を取っており、彼に無料で法律支援を提供して、退役軍人の合法的権益を全力で擁護することを伝えた」。これに呼応する形で、林某潤はSNSサイトに文章を投稿し、事件発生後に崂山区の退役軍人事務局の指導幹部が林某潤にわざわざ会いに来てくれたことを報告したのだった。

中国退役軍人事務局が林某潤に支援を約束し、崂山区退役軍人事務局の指導幹部が林某潤に面会したことを知って安心したのか、わざわざ青島市入りした退役軍人たちは帰途に就いたし、各地の退役軍人たちも鎮静化して平静を取り戻したものと思われる。本件は青山村の展望台から始まった小波(さざなみ)が、退役軍人の蜂起という大波になって青島市を襲った特筆すべき事件であった。

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