「店長がかわいい」「ネイルが最悪」…物議を醸したラーメン店の「ギャル店長」驚きのいま…開店から2年、SNSでの投げ銭が「衝撃の金額」に!

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2022年7月、宮崎県の高原町(たかはるちょう)にオープンした「ムラタ拉麺」。特注の細麺にあっさり目の豚骨スープが絡む博多ラーメンが人気の店だが、同店は味以外の部分で大きな話題を呼んでいる。

茶髪に明るい色のネイル、ホットパンツ姿で厨房に立つこともある、通称「ギャル店長」の存在だ。

ラーメン店には似つかわしくないその姿に、「店長可愛い!食べに行きたい!」「女の髪、ネイル最悪」など、オープン当初からネット上では賛否が巻き起こった。

それでも、1年後には半数近くが閉店すると言われるラーメン業界にあって、2年以上にわたって順調に営業を続けている。

どんな歩みを進めてきたのか、この先の未来をどう見据えているのか、ギャル店長こと茺田亜利寿さんと、社長の村田健さんを直撃した。

まったくの未経験から店長に

ギャル店長のいる「ムラタ拉麺」がオープンしたのは、日本中がコロナ騒動の渦中にあった2022年。その場所は、人口8000人にも満たない(2024年9月1日現在)宮崎県の高原町だ。

分母の少ないこの町にラーメン店を開業した理由を、社長の村田さんは次のように話す。

「私はそれまで、宮崎市内で青果店をやっていたのですが、故郷である高原町のラーメン店が店主の高齢化などでゼロ軒になってしまうことを知り、地元の地域起こしとしてお店をやりたいと思いました。閉店するラーメン店を事業承継し、ムラタ拉麺をオープンしたのです」

しかし、人口の少ない田舎町。かなりリスキーな挑戦のようにも思える。

「地元のお客さんだけでやっていくのは、正直難しいと思っていました。では、他の地域から来てもらうためにはどうするか。ラーメンの美味しさだけではなく”人”の魅力が必要だと思ったんです。そこで、青果店をやっていた時に、アルバイトとして働いていて人気の看板娘だった茺田さんに店長をお願いしよう、となったのです」

村田社長いわく、茺田さんはそこにいるだけで周囲を明るくする天性の才能があるという。しかし、茺田さんは当時23歳。ラーメン業界も未経験であったが、店長就任の依頼を素直に受けたのだろうか。

「最初は『えっ!?』と思いましたよ(笑)。でも、なんでも軽く考えるタイプなので、とりあえずやってみることにしました」(茺田店長)

そんな「ノリ」で始まった店長としての道。実際に仕事をしてみて初めて気がつく苦労もあったようだ。

「想像以上に厨房が暑くて大変です。それに、お湯もかなり飛んでくるので腕に小さな火傷もできちゃって大変でした。それでも、店長になった2年間で辞めようと思ったことは一度もないですね」

他店にはない営業スタイル

「ムラタ拉麺」は、他の店舗とは一線を画す営業スタイルを取っている。それが、営業中の生配信だ。

「営業中の厨房の様子を、SNSで毎日生配信しているんです。なので、お店の衛生面だけでなく、自分の見た目も綺麗に保つことを心掛けています。髪の色もそうですし、ネイルも必ず月に1度以上はサロンに通っています」(茺田店長)

このユニークな取り組みもあって、SNSではフォロワーが急増。“ギャル店長”の知名度と人気はうなぎのぼりになった。それに比例するように、彼女の店長としてのマインドも充実していく。

「この時期は特に厨房が暑かったりもするのですが、常に笑顔ということはいつも考えています。お客様と世間話をすることもよくありますね。ラーメンを提供するだけでなく、コミュニケーションを取るのも楽しいです」

SNSでのファン獲得のためには、客とのコミュニケーションは重要だ。しかし、回転率が命のラーメン店からは逆行したスタイルにも思える。その点を、村田社長はどのように考えているのか。

「うちが他のラーメン屋さんと違うのは、お店での飲食代だけが客単価ではないところです。営業中の様子を毎日生配信することにより、お客様が茺田店長を応援してくださり、SNS上で投げ銭を頂けるようになったのです」

「厨房側にカメラを向けて、基本的には私が必死にラーメンを作っているところを垂れ流しです(笑)。でも、手が空いた時はコメント返しも頑張っています」(茺田店長)

調理をしながらSNS対応。一人二役のような稼働になるが、その甲斐あってSNSが店の経営を支えていると言っても過言ではない状況が生まれていた。

「SNSでの投げ銭は、平均でいうと一人分のその日の人件費を賄えるくらい、いただいています。多いときは、営業中の3時間で20万円近くになることもあります」(村田社長)

批判の声も多いが……

他店よりも目立ってしまえば「出る杭は打たれる」の言葉通り、否定的な意見も届くだろう。まして、職人気質を大事にする風潮もあるラーメンの世界。若い女性が店主をしているというだけで、やっかみもありそうだ。

「お店に来て直接言われることは全くと言っていいほどないです。でも、TikTokで営業中の配信をしていると、コメントでいろいろ言われますね。『ネイルした手で作るラーメンが美味しいわけない』とか『髪型が派手すぎて、食べ物を提供する店にふさわしくない』とか」(茺田店長)

確かに、飲食店で働く人のネイルや派手な髪形はタブー視されているかもしれない。しかし、同店の新しいラーメン店のスタイルは、常連を始め地元民にも受け入れられているようだ。

「もちろん、茺田店長を一目見ようと訪れる新規のお客様はとても多いです。しかし、実は地元の方の常連さんも多いんですよ。元々、地元にラーメン屋さんがなくなったことがきっかけでお店を始めたので、高原町の方が通ってくださるのはとてもうれしいです」(村田社長)

SNSの運用代行の仕事も受注

開店から2年、店舗内においては「始めたことを丁寧にやる」という考えもあり、マイナーチェンジ以上のことはしていないという。一方、SNSではさらなる広がりを見せていると茺田店長は話す。

「フォロワーが増えてからは、PR案件が来るようになり、SNS自体で売り上げが出るようになりました。そうしているうちに、SNSの運用代行の依頼もあり、他の企業さんのアカウント運用をやったりしています」

物価高騰など、飲食店にとっては痛手と言える情勢。本業であるラーメン店以外の収入源があることは非常に大きなことである。SNSに力を入れてきたことによって信頼を勝ち取り、仕事としての依頼まで来るようになっているのは進化と言えるだろう。

それでも、村田社長は堅実な店舗運営の信念も持っていた。

「マイナスになることをしないということは、ずっと決めています。◯周年記念などでも、替玉無料のような『赤字覚悟』のキャンペーンはしないようにしています。とにかく、プラスになることだけをこれからもやっていきます。あくまで、本業は高原町にあるラーメン店です」

ムラタ拉麺の未来をどう見るか

飲食店苦境の時代に生まれた「ムラタ拉麺」は2年で大きく成長して来た。今後の展望について茺田店長はこう話す。

「今、SNSではショート動画を中心にあげています。それを続けながら、きちんと作ったYouTubeの長めの動画もあげたいと思っています。そちらでは、田舎の暮らしのリアルな部分や、その中でラーメン屋さんをやる日常を伝えていけたらいいなと思っています」

一方、村田社長は開業時の思いである”地元の活性化”を今でも追い続けながら未来を見据える。

「たとえば、お店で販売しているドレッシングの原料は苗から自分たちで栽培して作っていて、ふるさと納税に登録して地元に還元されるようにしています。これから始める予定の長い動画では、こうして高原町の振興に関わっていることも伝えていきたいです」

一見、チャラついていることもあり、一過性の話題だと予想した人もいたかもしれない。しかし、店長の笑顔と天性のポジティブさ、そして社長の信念と堅実さによって、ここまで成長を遂げてきた。そして、この先もさらなる活躍が期待できそうだ。

<取材・文/Mr.tsubaking>

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