びわこ成蹊スポーツ大学「パワハラ隠蔽疑惑」当事者が「国スポ式典委員長」を任されていた不可解な判断

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びわこ成蹊スポーツ大学(滋賀県大津市)は’03年の開校以来、多くのプロアスリートを輩出してきた。30名以上のJリーガーや、シンクロナイズドスイミングの北京五輪代表として活躍した青木愛(39)も卒業生に名を連ねる。

前学長の大河正明氏(66)はJリーグ理事を経て、Bリーグのチェアマン、現Vリーグのチェアマンを歴任するなど、同学の教員達もスポーツ界に強い影響力を持っている。

今月9日には、サッカー部員など約50人が琵琶湖でのカヤック航行の”研修中”に遭難し、一時的ではあるものの安否不明者が出るなど、大きな騒動となったことでも耳目を集めた。

スポーツの名門に何が……

そんなスポーツ名門校を発端とするある疑惑が今、県内で物議を醸しているという。地元のマスコミ関係者の解説を聞こう。

「同校で管理職を務めていた教員X氏が生徒へパワハラ行為をしていた疑惑が持ち上がっています。当のX氏は今春、退職しており真偽は不明ですが、“パワハラ行為を一因とする懲戒解雇処分だったのではないか”という噂も聞こえてきている。ところが、そのX氏が’25年開催予定の『わたSHIGA輝く国スポ・障スポ』という県を挙げ開催するスポーツイベントの式典委員長を務めていたのです。公益性が高いイベントだけに、『パワハラ疑惑のあった人物を要職に就けていいのか』と庁内では懐疑的な声が上がっていました」

県下で囁かれる疑惑は事実なのか。FRIDAYデジタルには複数の情報提供があった。同校の職員は取材に「X氏のパワハラ行為については、かねてから同校内で問題視されていた」と答えた。

「X氏が特定の教員にパワハラ行為をしていた、一部の生徒に陰湿なハラスメント行為をしていた……という声は、以前から職員たちにも聞こえてきていた。パワハラにより精神的疾患に苦しんだ学生もおり、保護者から大学に抗議があったといいます」

「センシティブ情報」

パワハラ行為があったのか、なかったのか、うやむやのままX氏は同校を去っていったという。同校の元教員はこう証言する。

「今年6月いっぱいまで学長を務めていた大河氏から『ハラスメント事案に伴い、X氏は懲戒解雇処分を受けた』という説明が、4月の緊急教職員会議で突然発表されたといいます。ただし、詳細は『内部にも公表しない』ということでした。その後、X氏の名前は大学のHPからひっそりと消えていました。教員からは、『懲戒解雇したのなら公表すべきでは』という意見も出たようですが、大学側は意に介する様子はなかったそうです」

事実確認をすべく、FRIDAYデジタルがびわこ成蹊スポーツ大学の広報担当者に問い合わせると、X氏の懲戒解雇処分については否定も肯定もせず、「当件は人事に関わることなのでお答え出来ません」と淡々と答えるのみだった。

そこで、同大学を運営する大阪成蹊学園へ「X氏のパワハラは事実なのか」、「大河前学長の『公表しない』という発言は事実なのか」、「X氏の処分はどういう経緯で下されたのか」について問い合わせると、人事本部より以下のような回答があった。

「ご質問事項に関しましては、X氏(回答では本名)のセンシティブ情報が背景にあるものと捉えており、総合的に考慮した結果、本学としては回答(公表も含みます)すべきではないと判断しております。それゆえ、人事に関することはお答えできないという回答で統一しており、今後もその予定です」

道義的な観点で、X氏に式典委員長を任せていいのだろうか。滋賀県の見解を聞くべく、「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ実行委員会」に取材すると、担当者が実情をこう明かした。

「当該の委員は、7月31日付けで既に自主退職しております。自ら辞められた理由は分かりませんが、ハラスメント行為や大学側の処分については、こちらでは把握しておりませんでした。委員としての活動に何か問題があったわけではないため、大学の処分についてこちらから本人に確認することもなく、また自ら説明されることもありませんでした」

X氏はすでに県スポの委員を辞職しているという。その一方で、大学が処分を公表しないことを一因とし、X氏は一大イベントの式典委員長という要職にしばらく就いていたのも事実だ。

「事なかれ主義」への批判

筑波大学名誉教授で学校法人東京家政学院理事長大学を務める、大学ガバナンスに詳しい吉武博通氏は同校の対応に疑問を呈す。

「もし大学側が懲戒処分を行ったという事実があれば、一般的なハラスメント事案の事実・処分については公表すべきでしょう。再発防止とともに学校としての姿勢や規律を内外に知らせる観点からも必要です。大学は公教育機関であり、私立大学も国から補助金の交付を受け、収益事業以外は非課税です。加えて、学生や保護者が学校を選ぶうえで、良い事実も悪い事実も出来るだけ公表することがのぞましい。

処分を受けた者の権利への配慮から、氏名はじめ個人が特定される形での公表は避けなければなりませんが、事実を伝えることは必要です。それが結果として県への情報提供になったかもしれません。大学は地域や社会の支持の上に成り立っています。その点からも公教育機関としての姿勢や規律を示してほしいと思います」

X氏に懲戒解雇処分の事実を確認すべく自宅にも連絡したが、携帯電話に転送されるだけで応答はなかった。前出の元教員がため息をつく。

「公教育機関としての社会的責任の欠如、何よりパワハラを受けていた被害者への配慮に欠けた大学の姿勢には憤りを感じる。少なくもと懲戒解雇処分の有無は明らかにすべきだったと思います。今回の件で同校の隠蔽体質が広く知れわたるのではないか」

民間企業ですら不祥事に対しての公表や素早い対応が求められる昨今、公的組織であるびわこ成蹊スポーツ大学の“事なかれ主義”に厳しい視線が注がれている。