4年ぶりのリーグ優勝を決め、甲斐捕手(右)からウィニングボールを受け取るソフトバンクの小久保監督(23日夜、京セラドーム大阪で)=吉野拓也撮影

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 プロ野球の福岡ソフトバンクホークスがパ・リーグ優勝を決めた23日、京セラドーム大阪(大阪市)で胴上げされた小久保裕紀監督(52)は、「この日のためにチーム全員でやってきた。最高でした」と会心の笑みを浮かべた。

 就任1年目での快挙は、選手やコーチらの力を最大限に引き出そうとする巧みなチーム運営がもたらした。

 1994年に入団し、翌年に就任した王貞治監督(現球団会長)に鍛えられた通算413本塁打のスラッガーは、球団史に輝くスターだ。現役引退後の2017年には、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表「侍ジャパン」を率いた。

 しかし、21年に就任したソフトバンクの一軍ヘッドコーチ時代に悔しさを味わった。前年まで日本シリーズ4連覇中だったチームの歯車をうまく回せずリーグ4位に沈み、「選手と距離を取り過ぎたのが反省点」と振り返る。ある球団関係者は「一流だけを見てきたから、チームの大半を占めるそうでない選手と向き合うことがなかったのでは」とみる。

 翌年から二軍監督に配置換えとなったが、ここでの“下積み”の2年間を無駄にしなかった。どうすれば選手育成という成果を出せる組織になるのか。コーチとの議論を歓迎し、トップの役割について考えを深めた。22年に二軍で小久保監督と働いた松山秀明二軍監督(57)は、「あれほどの実績があるのに、自分の感性を押しつけない。チームや選手にいいことであれば素直に聞き入れられるのが彼の強さ」と話す。

 一軍を指揮した今季、コーチや裏方とは密に情報を交換し、仕事を任せることで責任感を持たせ、選手がプレーに集中できる環境が整うように目を配った。ある選手は、「ヘッドの時は近寄りがたいイメージがあったけど、今年はよく見てくれていると感じる」と語る。

 小久保監督は「強いチーム、魅力ある組織であるために全員が同じ方向を向くことが大切」とスタートしたシーズンで、ぶれない姿を示し続けた。開幕直後から首位を走ったが、夏以降は投手に離脱者が相次ぎ、優勝目前の16日には中心打者の近藤健介選手(31)が負傷し、戦列を離れた。それでも、いら立ったり、迷ったりするそぶりはなかった。温かく、時に厳しく注ぎ続けたまなざしが先導し、チームを歓喜の瞬間へ導いた。(平島さおり)