宇野昌磨インタビュー『ワンピース・オン・アイス』2024 前編(全2回)

 9月7日、8日にララアリーナ東京ベイ(千葉県船橋市)で再演される『ワンピース・オン・アイス〜エピソード・オブ・アラバスタ〜』。本番を前に行なわれたメディア向け公開リハーサル後、主人公ルフィを務める宇野昌磨が単独インタビューに応じてくれた。


『ワンピース・オン・アイス』でルフィ役を務める宇野昌磨

【熱中する楽しさを再認識できるショー】

ーー公開リハーサルを拝見しましたが、新しくつくられた約15分のスペシャルフィナーレがとてもカッコいいですね。

宇野昌磨(以下同) フィナーレと言うと数分のイメージですが、すごく長いですよね(笑)。再演でも去年とは違うものにできたことはとてもうれしいです。

ーー昨年、「心から仲間だと言える」とおっしゃっていたメンバー全員が集合しました。現役選手も含めての再集結です。

 そうですね。(友野)一希くんとか(渡辺)倫果ちゃんは、もう今シーズンの大会に出ていました。そんななかでも『ワンピース・オン・アイス』に出てくれます。

 現役生活を最優先にする選手が多いので、迷惑にならない範囲でという思いがあるんですけれど、それでも「ぜひやらせてください」と。(島田)高志郎くんや織田(信成)くんも含めてみんながそう言ってくださる。

『ワンピース・オン・アイス』はもちろん僕だけのショーではないですけれど、かけた時間が長いからこそ特別な思いが芽生えたショーで、それをみんなも大事にしてくれるというのが単純にうれしいですね。

ーー昨年は宇野さんも現役選手でした。『ワンピース・オン・アイス』は競技生活にどんなものを与えてくれましたか?

 優勝した世界選手権が終わった直後は、あまりプラスな気持ちではなくて。結果としてはすごくよかったですし、状況的にもあの演技ができたのはすばらしいことだったんですが、それまでの過程などを踏まえるととても苦しい......。と言うと、大げさに聞こえるかもしれませんけど、終わった直後も安堵のほうが強かったし、初めてがっつり練習するのはしばらく休もうと思ったんです。

 そんななか去年の夏、『ワンピース・オン・アイス』に初めてトライして、あらためてスケートに熱中しました。ジャンルはちょっと違いますけど、熱中する楽しさを感じました。昔は現役生活にも同じ熱量で頑張れたということを思い出しましたし、ひとつのことに熱中するのがやっぱり楽しい。そう思えるショーでした。

【現役引退を決めた胸のうち】

ーー休養ではなく引退してプロスケーターになると決断したことも『ワンピース・オン・アイス』の経験が影響したのでしょうか?

 スケートは他のスポーツと比べても、競技から退いたあとも活躍する場があるというのはとても恵まれていることだなと思います。『ワンピース・オン・アイス』に出会っていなかったらたしかに......。

ーーたくさんあるきっかけのひとつではある、と。

 この1〜2年は、現役での自分のスケートというものに悩み......までいく時もあれば、いかない時もある(笑)。そういう気持ちで。ただ、やめるという選択が自分のなかでなかなか決心できなかったんですが、スケートが競技の場だけではないことをあらためて感じられたので、休養ではなく引退としようと。

 それに休養と言ってしまうと期待させてしまうかなと思って。(現役)復帰することを。だから、僕の気持ち的にも引退のほうがしっくりくるというか、僕の今までの発言とかスケートに対する考え方からしても、思わせぶりな感じは違うかなと思いました。

ーー引退後の生活は今いかがですか?

 シーズンオフは現役の時もアイスショーは立て続けに出演していたんですが、今年が一番ショーは立て続けですね。スイス(のアイスショー)へ行ったり、『THE ICE』、『プリンスアイスワールド』などへの出演がずっと続きます。

 10月以降、オンシーズンにどうなるかが楽しみです。自分が現役だったら試合に出ていたけれども、現役じゃないからこそ時間が空いて、どんな仕事をするのか、何をするのかは自分自身すごく興味があります。

【フィギュアスケーターはやっぱり表現者】

ーー昨年は現役選手としてのルフィでしたが、今年はプロスケーターとしてのルフィです。ひと味違うぞ、という部分はありますか?

 うーん、どうだろう。もちろん去年の『ワンピース・オン・アイス』の時も現役のつもりでやっていなかったので、その点では変わらないですね。ほかのショーでは現役のプログラムをやったりジャンプをしっかり入れたりするんですけど、こんなに競技から離れたショーは初めてだったので。

ーー競技とは切り離されたものとして取り組んでいたのですね。

 そうですね。今年もリハーサルをやっていて、フィギュアスケートは本当にすばらしいスポーツだと思うんです。スケーターは氷の上で滑ることにみんな突出していますが、表現者としてどこに突出しているかというとすごく難しい。

(滑るプログラムでは)いろんなジャンルができるからこそ、ダンス、バレエなどそれぞれの得意な分野があって。そして今回のキャラクターを演じるというのも、フィギュアスケーターにとっては不慣れな方がけっこう多い。

 でも、やっぱり表現者なんだなって去年思ったんです。1カ月という短い稽古期間で『ワンピース・オン・アイス』をしっかりつくることができた。新しいアイスショーとして成り立たせることができたのは、みんな本当に表現者だし、やっぱりスケーターってすごいんだなと思いました。


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【プロフィール】
宇野昌磨 うの・しょうま 
プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には、全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。