夏が実家に帰ると、やさしい父母がビールを差し出す。「親になろうと思う」と言うと、彼らはあっさり受け入れて、ビールで乾杯。目黒蓮、さすが、ビールのCMふうな雰囲気が似合う。

自分も基春のようになることを怖れるのではなく、むしろ「海ちゃんのパパ、はじめようと思う」と前向きな夏。誰にも言えないことを言える相手が見つかって逆に背中を押してもらえたのかもしれない。

でもこれでハッピーエンドにはまだならない。父になろうと考える夏に、朱音(大竹しのぶ)は水季の遺言?を手渡す。またまた不穏である。

◆「こわいですねえ」と言う津野がこわい

そこには「夏くんの恋人へ」と書かれた一通が入っていた。手紙を渡された弥生は、津野(池松壮亮)に頼る。「こわいですねえ」と言う津野がこわい。なぜなら「恋人へってやつ」と津野は手紙の存在を知っていたから。

でも津野に頼る弥生もなんだかなあという気もしないでない。津野くんって誰にでも利用されてしまう人なのだなあ。

語らう津野と弥生の座る距離がまた絶妙な離れ具合であった。

「本音言えなくなってます」と夏のしんどさに弥生は気づいている。彼女がどんなに夏を好きでも、自身がまとう優しさと悲しさと生きづらさが夏の本音を封鎖してしまっているのだ。

やさしくて悲しい人たちの前で夏が壊れてしまうときが来てしまわないかやっぱり心配だけれど、そこを乗り越えるのがこのドラマの真骨頂なのではないだろうか。

目黒蓮が体調を崩して、1週、本編の放送が延期になった。逆境を乗り越えてほしい。
<文/木俣冬>

【木俣冬】
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami