Uber Eats」で注文を受け付けてくれない、商品が届かないという事態が最近頻発しています。その原因は「報酬アルゴリズム」改定による報酬減により、配達員が集まらないことのようです。今、Uber Eatsに何が起こっているのでしょうか。

報酬計算の改定で「Uber Eats」が人手不足?

 Uber Eats(ウーバーイーツ)が2016年9月に日本初のシェアリングデリバリー(配達代行サービス)を開始したことをきっかけに、フードデリバリーの配達員が働く姿はすっかり日常の光景となりました。

 彼らはスマホアプリから注文を受けると、バイクや自転車軽自動車などを使って食事を顧客の元に届けることが仕事です。短時間から働ける配達員と運営会社との間には雇用関係は結ばれず、スポットの仕事を仲介することで、時間や件数に応じた報酬を受け取る仕組みになっています。

 ところが、最近になってフードデリバリーの配達員を見かける機会が減っているようです。それというのも、業界最大手の「Uber Eats」による「報酬アルゴリズム」の改訂が影響しているらしいのです。


「報酬アルゴリズム」の改定で報酬が下がり「Uber Eats」は人手不足。注文しても商品が届かない、配達員のマッチングができずに店が用意した料理を破棄する事態が頻発している(乗りものニュース編集部撮影)。

「報酬アルゴリズム」とは、配達に費やす予定の時間と距離、配達先の数、注文数のほか、同じ時間帯で稼働している配達数などに基づいて報酬を決定するコンピューターによる計算方法のことで、2021年3月までは商品受け取りで265円、走行距離1kmあたり60円、商品受け渡しで125円が基本料金とされていました。すなわち、報酬決定のメカニズムが体系化されており、請け負う仕事内容と報酬が正比例の関係にありました。

 しかし、その後行われた「報酬アルゴリズム」の改定により、現在では基本配送料+配達調整金となりました。基本配送料がいくらなのかは明かされておらず、配達調整金に至ってはどのように決まるのかが完全にブラックボックス化されているため、配達員はオファーされた仕事に対してどのように報酬額が算出されたのかを知る方法がありません。

状況はさらに悪化! 注文した料理が届かないケースも

 それでも報酬として受け取る金額が大きく変わらなければ、配達員から不満が出ることはないのでしょうが、2024年7月20日の「報酬アルゴリズム」の改定では、320円を下限として報酬が300〜400円台が中心になるなど軒並み下がっています。

 その一方、報酬減で下がった配達員のモチベーションを上げるためなのか、短い配達距離にもかかわらず3000〜6000円の高額報酬が時折出現するようになりました。その出現頻度は低いのですが、多くの配達員は効率良く稼ぐため、たまに現れる高額案件を狙って単価の低い配達を拒否するようになります。

 その結果、配達を依頼する顧客と配達員とのマッチング率が下がってしまい、顧客からは注文しても商品がなかなか届かない、加盟する飲食店からはマッチングが成立しないため、せっかく作った料理を破棄するという事態が多発したそうです。

 こうしたなか、「Uber Eats」のヘビーユーザーである実業家の「ホリエモン」こと堀江貴文さんが、自身のブログで「Uber Eats、最近は配達の遅延が多い気がする」と怒りを顕わにしたことが話題となりました。


気温が35度を超える日が珍しくない真夏の配達業務は過酷だ。にもかかわらず報酬の大幅減が「Uber Eats」の配達員が集まらない原因のひとつ(画像:写真AC)。

 ただ、このような「Uber Eats」の状況も、8月に入ると悪化の一途をたどっています。繁忙期にもかかわらず、配達条件はさらに悪くなったというのです。具体的に言えば、3000〜6000円の高額報酬はほぼ出なくなり、仕事の内容を問わず300〜400円台の報酬の仕事がほとんどという状況なのだとか。昨年と比べると報酬金額は半額以下となり、人によっては時給換算で1000円を割り込むようになっています。

 気温が35度を超える日が珍しくないなか、この報酬ではやっていられないと「出前館」や「Wolt」「menu」など、ほかのフードデリバリーへ移籍するだけでなく、そもそもフードデリバリーの仕事を辞める人も増えており、業界最大手の「Uber Eats」は人手不足で、注文を入れても「近くに配達パートナーはいません」と画面に表示されて注文を拒否されたり、配達員のマッチングができずに長時間待たされたりといったことが常態化しています。

「ベース単価を上げて!」配達員の悲痛な声

 このような厳しい状況で働く「Uber Eats」の配達員は、どのように感じているのでしょうか。YouTuberとしても活動するカリスマ配達員のひとり、とみ壱さんに話を聞きました。

「夏の繁忙期の需要に対して単価が低すぎ、結果として配達員が集まらないと感じています。繁忙期にここまで単価が低いのは配達を始めて以降、初のケースです。また、低単価のあまり『注文しても配達員が決まらず、商品が届くまでに時間がかかった!』という声もお客様から出ています。低単価だと配達員は案件を受けないので、こういった現象が起きてしまいます。単価さえ上がれば解決する問題なので、まずはベースの単価を上げてほしいです。切実です!」


YouTuberとしても活動するベテラン配達員のとみ壱さん。フードデリバリー初心者向けのハウツー動画のほか、定期的にライブを開催して配達員間の情報交換を行っている(画像:とみ壱)。

 こうした異常な状況に対して「Uber Eats」の配達員で組織された労働組合「ウーバーイーツユニオン」は、運営元に対して「報酬アルゴリズムの不明点と報酬アルゴリズム変更疑惑に関する説明の要求」と題した質問状を送っていますが、8月12日現在、まだ回答はないようです。

 いまや、フードデリバリーは必要不可欠な業種になりつつあると言っても過言ではないでしょう。業界のリーディングカンパニーともいえる「Uber Eats」が今後どのように対応するのか、気になります。