ソニーのポケモンに?パルワールド、まさかの展開
ポケモン似の「パル」たちのグッズ展開へ動き出した(画像は株式会社パルワールドエンタテインメント公式サイトより)
2024年7月10日、ゲーム業界がざわめいた。株式会社パルワールドエンタテインメントの設立が発表されたからだ。
この会社は、「パルワールド」を開発するポケットペアと、ソニー・ミュージックエンタテインメント、アニプレックスによるジョイントベンチャー。 『パルワールド』の各種ライセンス事業を担い、IP(知的財産権)を拡大させていくのが目的だという。
ポケモン似で話題になったパルワールド
『パルワールド』は、登場キャラクターがポケモンに似ていることで話題を獲得したゲームである(『ポケモン似?爆売れ「パルワールド」色々ヤバい訳』参照)。根幹のゲームシステムはまた違うゲームを参考にしているが、明らかにポケモンを思わせる「パル」が登場するうえ、そのパルたちを無理やり労働させるなんてことができるのだ。
『パルワールド』に登場するパルは、かなりポケモン似なキャラクターも(画像はSteamより)
ポケモンはIPを活用してアニメやグッズなどさまざまな展開を行っている。そしてポケモンに似せた『パルワールド』も同様のことをもくろむわけで、注目を集めるのも道理である。
特に気になるのは、ゲーム開発元のポケットペアと手を組むのがソニー・ミュージックエンタテインメントとアニプレックスであるところだ。
ポケモンが任天堂と共同で展開を行っている一方、『パルワールド』はソニーの子会社と展開していく。つまり、『パルワールド』が今後「ソニーのポケモン」と捉えられる可能性もあるわけだ。
ポケモンはゲームから人気に火がついたわけだが、その後のアニメやグッズの展開がうまくいき、グッズなどの売り上げも大きい。
東京ばな奈とコラボしてお土産として重宝されたり、全国のあちこちに専門グッズショップがあったりする現状を考慮すれば、キャラクターとしての存在感は重要といえる。
パルワールドの人気の秘密は「ブラックユーモア」
『パルワールド』もまた、キャラクターとしての人気が獲得できれば同様の展開を行うかもしれない。はじめはグッズのオンライン受注販売から始まるそうだが、そのうち各地にポケモンセンターならぬ「パルセンター」といった専門ショップができる可能性も考えられる。
とはいえ、いくつか懸念点もある。1つめは、『パルワールド』がポケモンに対するブラックユーモアとして盛り上がったところだ。
『パルワールド』ではさすがにグロテスクな描写はないものの、パルの肉を食べたり、強制労働させたり、あるいは濃縮して合成することができる。「ポケモンは愛されるべきペットのような存在である」というタブーを破ったからこそ、注目されたわけだ。
パルは銃を持ったりする場面が特に印象的だが、これはキャラクターグッズになってもうまく残せるだろうか(画像はSteamより)
しかし、キャラクターコンテンツとして展開するとなると、このブラックユーモアを持続させるのは難しいかもしれない。もちろん「銃を持って戦うかわいいマスコットキャラクター」としてヒットする可能性はなくもないが、詳しく知らない人にリーチするため、表面的には無難なかわいらしさを装うのではないか。
すると、ブラックユーモアとしての角が取れてしまう可能性がある。単にかわいいキャラクターであるならば、パルはいまいち魅力に欠けるのは否定できないだろう。
そしてもう1つ気になるのは、ゲームよりキャラクターコンテンツが優先されかねないという部分だ。実をいうと、先輩であるポケモンはそういう状況に陥っているように見える。
ポケモンのゲームは「より多くの人が遊べるゲーム」を目指すせいか、あまり先進性・革新性がない。むしろレトロなスタイルで、新しいポケモンを出すためにゲームをしぶしぶ出しているのではないか、と思うくらいにゲーム側の進化が少ないのである。昨今は進化を目指すポケモンのシリーズを出してはいるものの、それでもやはり控えめな変化しかない。
一方の『パルワールド』は、その煮えきらないポケモンの状況を皮肉るように、流行りのサバイバルクラフト要素を取り入れたわけである。だが、『パルワールド』もキャラクターコンテンツとして展開していくのであれば、その尖った部分も丸まってしまうかもしれない。
「パルワールド」のゲームはまだ開発中
そもそも『パルワールド』のゲームはまだ開発中であり、早期アクセスという形式で遊べる状況だ。開発途中でライセンスビジネスの展開を行うこと自体はむしろいいことだが、まだ完成していないゲームに影響を与えかねない大きな出来事ではあるだろう。
ともあれ、パルワールドエンタテインメントの設立が大きな注目を集めるのは間違いない。ポケモンに似たゲームが、そのキャラクター展開まで似せていくというのだから。
(渡邉 卓也 : ゲームライター)