多くの車で渋滞している道路=2019年2月、米ニューヨーク(EPA時事)

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 【ニューヨーク時事】米ニューヨークマンハッタンの慢性的な交通混雑の緩和に向け、乗り入れる車両に課金するとした「渋滞税」。

 今月末に導入予定だったが、ニューヨーク州のホークル知事(民主党)は無期限延期を突如表明した。インフレが長引く中、さらなる家計負担の回避を理由に挙げたが、11月の大統領選と同時に行われる連邦議会選に配慮したとの見方がくすぶっている。

 知事は今月5日、導入延期について「中間層に打撃を与えかねず、継続的な経済回復を阻む壁を設けるべきではない」と説明した。

 渋滞税は、劇場が立ち並ぶブロードウェーや金融の中心地ウォール街などを通行する乗用車から15ドル(約2400円)徴収するのが柱。渋滞や大気汚染の改善に加え、年間10億ドルと見込まれる税収を地下鉄など公共交通機関の改修に充てる狙いがあった。

 渋滞税を巡っては、タクシー業界の猛反発に加え、車で通勤する人の経済的負担が増えるとして、隣接するニュージャージー州が計画を承認した連邦政府を提訴するなど、昨年の段階から円滑な導入が危ぶまれていた。

 一部報道によると、渋滞税が今秋の下院議員選に悪影響を与えると懸念する民主党下院トップのジェフリーズ院内総務を気遣い、知事は見送りに傾いたとされる。

 一方、身内の民主党からは「知事の見境のない決定は渋滞税を事実上廃止にした」(クルーガー・ニューヨーク州上院議員)といった非難の声が上がる。導入を目前にした方針転換で、深刻な渋滞の改善や老朽化する交通インフラの修繕が後回しにされた格好だ。行政の信頼が損なわれる恐れもある。