岡本和真

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「悪い時の巨人に戻ってしまった」

 巨人が7日からのオリックス3連戦で3タテを食らった。今季3度目で、リーグ3位に転落した。この3連敗を見てまず思った。

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「また、悪い時の巨人に戻ってしまった」

 2点を取るのが精いっぱい。こう言われた時期が長かったが、7日の初戦では東晃平に8回を2安打無失点、8日は19歳、齋藤響介の前に5回1安打無失点と打ちあぐねた。

 中継ぎ陣にもかわされて2試合連続完封負けだ。そして3戦目の9日は育成出身で1軍初登板初先発の左腕・佐藤一磨に5回まで無得点に封じられた。

岡本和真

 6回、坂本勇人が3番手の吉田輝星から犠飛で1点を奪ったが、3試合連続完封負けを免れるのがやっとだった。

各打者の対応力が足りない

 オリックス先発の三投手はいずれも初対戦だった。巨人戦初登板の投手に3試合連続で白星を献上したのは球団史上初だという。

 巨人は「初物」に弱いといわれる。もちろん、対戦前にはデータや資料をチェックして臨むことになるが、ここで求められるのは各打者の対応力だ。

 これが欠けていたということだし、逆にオリックスの先発投手たちは巨人打線にひるむことなく勝負していた。

 中嶋聡監督は齋藤、佐藤を5回で引っ込めた。代える必要はなく、もっと投げさせてもよかったが、「これだけ投げれば儲けもの」と後は中継ぎ陣に託した。巨人はいいところなくかわされた。

 オリックスは12球団で最も主力のケガ人が多い。先発の柱の宮城大弥に守護神の平野佳寿、打線の主軸・森友哉ら……昨年に比べると戦力はかなり落ちている。

岡本和真の奮起しかない

 この3連戦前、3連勝はあっても3連敗はない、一つは絶対に取れると思っていた。

 イヤなのは戸郷翔征、菅野智之で落としたことだ。この二人でそろって負けたのだからこれは痛い。

 フォスター・グリフィンはいい球を持ってはいるのだが、ストライクとボールがハッキリしている。そこが欠点だ。次回の登板が正念場となろう。

 3連戦で合計10安打1得点。結果もさることながら内容が悪い。悪過ぎる。

 ここはもう、4番・岡本和真の奮起しかない。3連戦、10打数無安打だ。

 甘い球や狙い球を空振りしている。ファウルにもできない。空振りはダメだ。自信なさそうに振っている。この繰り返しでベンチに戻ってくる。

 2ストライクと追い込まれれば、どんな球にも対応しなければならない。挙句、外角のボール球やショートバウンドした球にも手を出している。打者が打てない時の典型だ。追い込まれる前にモノにする必要がある。

 岡本和にばかり責任がいくけど、それは仕方がない。4番だ。主砲に一発が出ればチームの雰囲気は一変する。士気が上がる。

「ブリブリ振っていこうぜ」

 4日のロッテ戦で9者連続安打というセ・リーグのタイ記録を作った。打線が爆発したように見えるが、ラッキーなヒットが多かった。どれだけ芯で捉えた打球があったか。

 阿部慎之助監督は打撃陣に「ブリブリ振っていこうぜ」と号令を出していた。

 とはいっても、なんでも振るということではなく、甘い球や狙い球を積極的に振っていこう、捉えようということだ。

 この3連戦、巨人打線で甘い球、狙い球をフルスイングした打者がどれだけいたか。自分のタイミングで振っていない。ダラダラした印象だった。一番思い切り振っていたのは泉口友汰だったと思う。

 現状、坂本が抜けると5番〜8番は迫力がない。点を取れそうな気がしない。上位打線にしても丸佳浩、吉川尚輝の好調はいつまでも続かない。

 気になるのはエリエ・ヘルナンデスだ。ストライクを見逃して、ボール球を振るシーンが多くなった。

 最初は無我夢中でやっていたが、余裕ができてきたのか。もっと積極的に振ってもいい。11日からはビジターで楽天、日本ハムとの6連戦だ。楽天は交流戦で1位だ。巨人の先発は山崎伊織か。

 巨人は初っぱなを山崎で落としたら苦しくなる。ズルズル落ちていく可能性がある。踏ん張ってほしい。最後に岡本和の奮起をもう一度、呼びかけたい。(成績などは10日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部