争点はヤジの裏の「幹部の指示」の有無…平愛梨の弟・慶翔都議が起こしていた「異例の裁判」の中身

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「誰のおかげで今存在していると思ってるんだ!」「だったら、もっといい質問しろよ!」

大声で発せられたこのヤジが飛び交ったのは、昨年9月27日の東京都議会本会議場。小池百合子都知事の都政運営の姿勢を問う質問をしていたミライ会議・桐山ひとみ議員に、都民ファーストの会平慶翔議員が発したものだ。

このヤジを巡って、現在、平都議がミライ会議側を名誉毀損で訴える裁判が進行していることが本誌の取材で明らかになった。平都議といえば、サッカー元日本代表の長友佑都の妻でタレントの平愛梨の弟としても知られる。’17年に都民ファーストの会から初出馬し、初当選。’21年の選挙でも再選を果たし、現在2期目を務めている。先の選挙の際は、義兄の長友氏が応援に駆け付けたことでも話題になった。

ヤジを発した平議員が提訴するという、異例とも思える形の裁判だが、一体何が起きているのか。

本誌が入手した訴状によると、平都議がミライ会議の米川大二郎都議と政治団体ミライ会議代表の木村基成氏を昨年10月20日に東京地裁に提訴している。内容は「名誉毀損に基づく損害賠償等請求事件」(請求金額300万円)となっている。内情に詳しい都政関係者が明かす。

「ミライ会議とは、小池百合子知事の改革路線に疑問を抱いた元都民ファーストの会都議が中心となって設立された会派です。事の発端は、このミライ会議がX(旧ツイッター)に平都議のヤジの実態を投稿したことです。具体的なヤジの内容に加え、桐山都議が質問を始める前に平都議から『一般質問中にヤジを行う。(都民ファーストの会の)幹部の指示だ』と耳打ちされていたことも投稿しました。直後には米川都議、木村代表も自身のXで、この投稿をリポストしています。

これに対して平都議は、幹部からの指示で動くような人間であると印象付けられたこと、またその印象を広く流布されたことで名誉を毀損されたと訴えているんです。平都議側は投稿の削除および謝罪文の掲載などを請求しているようです」

本誌が入手した訴状に関連する書面では、実際に平都議はこのように主張している。

〈党・組織の指示があれば自らの意思にかかわらず卑劣な言動を積極的に行い、あわせて自己の責任回避を行う政治家であるかのような印象が広められ、原告の社会的評価は著しく毀損された〉

たしかに「ヤジが幹部から指示されたものだ」というミライ会議の主張について言及していると思われる内容だ。一方、ミライ会議側もこの騒動に対して厳しい姿勢で臨んでいる。

昨年10月には、ミライ会議から都民ファーストの会の幹事長宛に『平慶翔議員による暴言についての抗議書』を提出、X上でも公表している。入手した訴状などの関係書類では、その後も幹部からの指示について「実際にあった」という主張を変えておらず、今後もその点が争点の一つになっていくと思われる。

今回の提訴を、ミライ会議はどう受け止めているのか。裁判の実態について取材を申し込むと、同会の木村代表が応じた。

「提訴されていることは事実ですが、なぜヤジを受けたこちらが訴えられなければならないのか心外です。都議会は一般に公開されており、ヤジ発言の動画は証拠資料として地裁に提出しています。桐山都議が平都議から質問前にそのように言われたことも事実です。しかるべき手続きにて裁判でも証明していく予定です。幹部からの指示が存在するとすれば、このヤジ・暴言は組織的に行われたことになり、特定の個人や会派を攻撃するハラスメントです。その謝罪と、組織的関与についての説明を求めるため投稿しました」

平都議は、提訴した理由などについて見解を求めた本誌の取材に、書面にて以下のように回答している。

「本訴訟は、被告らが私に関する虚偽をSNS上で流布したため名誉毀損として訴えているものです。手続については裁判所の訴訟指揮に従っております。詳細は係争中のためコメントを差し控えさせて頂きます」

異例の裁判の行方はどうなるのか。本訴訟は6月中旬に次回の弁論準備の手続きが行われ、その後、口頭弁論を経て結審する予定だ。