【考察】『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編の謎ポイントについて

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米ソニー・ピクチャーズが贈るマーベル『ヴェノム』シリーズ最新作、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の。このシリーズは(MCU)の正史世界であるアース616とは別の、独自のユニバースで展開されてきた物語。しかしながら映像では、他のユニバースと絡んでいるような意味深なショットもいくつか確認できる。

これらは、映像通りに受け取れば設定矛盾になり得るものだ。本記事では、『ヴェノム』シリーズ過去作で描かれた状況を整理しつつ、本予告編で見られた謎を考察する。

エディとヴェノム、これまでの状況整理

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』

2021年10月1日US公開(日本公開は12月3日)。凶敵カーネイジとの戦いを終えたエディ/ヴェノムは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のラストシーンで、夕暮れの浜辺でのひと時を楽しんでいた。おまけシーンでは、安宿のベッドでスペイン語の番組を見ながらくつろいでいたところ、突如として空間に歪みのような事象が発生し、窓の向こうは爽やかなリゾート景色に様変わり。さらにテレビにはJ・ジョナ・ジェイムソンがホストを務めるデイリー・ビューグルのニュース番組が流れており、トム・ホランド版のピーター・パーカーがスパイダーマンの正体であると紹介されていた。

これは、裏で『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の出来事が進行したためだ。ピーターに呪文の邪魔をされたドクター・ストレンジの魔術が失敗し、あらゆるユニバースからスパイダーマンの正体を知るヴィランたちが集結。つまりエディ/ヴェノムはここで、MCUの正史世界であるアース616に転送されてしまったのだ。

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この時のエディの服装を覚えておこう。黄色い円に橋のシルエットが描かれた「CITY」Tシャツの上に、ヤシの木などビーチの風景がプリントされたグレーのシャツを羽織り、ハーフパンツを履いている。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

2021年12月17日US公開(日本公開は2022年1月7日)。ピーター・パーカーがなんとかマルチバースの混乱を鎮め、異世界からの訪問者たちを元の世界に送り戻していた頃。エディ/ヴェノムは、とあるバーを訪れていた。服装は『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』時と同じで、「MEXICO」のキャップをかぶっていることから、エディはアース616のメキシコに転送されていたものと思われる。

エディはバーの店員から、この世界には“スーパー人間”が多数いること、サノスが人々を5年間も消し去っていたことなどの世情を聞いていた。ニューヨークを訪れてスパイダーマンと話してみようと口にしたところ、エディの身体が発光を始めて消失。元の世界に再転送されたのだ。

最重要ポイントは、ヴェノムのシンビオートの一部が、バーのテーブルに残ってしまったこと。ここまでの流れを抑えた上で、改めて『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編映像のポイントを見ていこう。

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の直後から始まる?

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編映像の冒頭で、エディは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と同じ服装で暗い路地を歩いている。手前の壁には"NO TE PIERDAS"と落書きされているが、これはスペイン語で「見逃すな」という意味だ(ファンに対する何かのメッセージなのか?)。

この場所は、『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の安宿から転送されるまでに見えていた雰囲気と似ている。おそらく元の世界に戻されたその足の場面だろう。

その後、チンピラたちを相手に戦うシーンでも同じ服装が続いている。エディはアース616からワケもわからず戻されたまま、チンピラたちに絡まれたという可能性がある。理解のできない事象に見舞われたばかりのエディは、いくらか苛立っていたかもしれない。

キウェテル・イジョフォーが訪れたバーはどこのユニバース?

続いて登場する研究施設の場面では、キウェテル・イジョフォーが演じる軍人が姿を見せる。イジョフォーといえばMCU(アース616)で、ドクター・ストレンジのライバルであるバロン・モルドを演じているが、今回の役は全く別キャラクターであると仮定しておこう。

『ドクター・ストレンジ』で独占配信中 © 2024 Marvel

最大の謎は次のシーンである。イジョフォーによる軍人は、『ノー・ウェイ・ホーム』おまけシーンに登場したバーでシンビオートを回収している。言わずもがな、このバーはアース616のはずだ。バーの店員も同一人物で服装も同じように見えるが、今回は髪が伸びている。

これが一体何を意味するのか、いくつかの仮説を考えてみよう。

まず、イジョフォー登場場面はアース616で起こっていることという可能性。つまり『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、ヴェノムのいるユニバースと、アース616での出来事が並行して描かれるということだ。ただし予告編では、イジョフォーがヴェノムに迫るような描写があるので、彼も二つのユニバースを跨ぐという展開が必要になる。また、アース616ではイジョフォーによる軍人とモルド、同じ顔をした二人が存在するということにもなるので、いずれにせよ非現実的だ。

次に考えられるのは、今回のバーが『ノー・ウェイ・ホーム』時とよく似た、しかしヴェノムの世界のバーであるということ。つまり、マルチバースの不思議によって二つのユニバースに偶然同じようなバーが存在しており、自分の世界に戻ったエディがそのバーを訪れたという可能性だ。「このバー、見覚えがあるぞ」とか、「兄ちゃん、石が好きな紫のエイリアンの話をしてくれたよな?え?俺に見覚えがない?」とか、エディはそんなことを言ったかもしれない。

あるいは、本作でマルチバースに関する新たな定義が提唱されるものと想像してみよう。彼らがアース616のバーを訪れた時、彼らの生き霊か、形状学的な概念のようなものが、同じようにヴェノム世界のバーにも現れていたという考え方だ。通常、ひとつの個体が複数のユニバースに同時に痕跡を残すことはないのだが、ヴェノムの場合、「800億光年の彼方の集合精神と知識」とリンクするシンビオート世界の生体なので、なんらかの不可思議によって元の世界にも肉体の一部が同時発生したのかもしれない。

別の説は ──悲しいかな、これが最もあり得そうなのだが──、単なる矛盾ということだ。今お話しした説は、どれもややこしすぎる。

そもそもソニー・ピクチャーズの『スパイダーマン』シリーズに、緻密なユニバース設計を期待しすぎない方が良い。『モービウス』の予告編にサム・ライミ版デザインのスパイダーマンのグラフィティがり、なぜか『モービウス』の世界にバルチャー/エイドリアン・トゥームスが転送されて打倒スパイダーマンが示唆されたり(その世界にスパイダーマンが存在するとは)、いくつかの設定矛盾もあるからだ。ソニー・ピクチャーズは、スパイダーマンとマルチバースというアイデアの周辺で弄んでいるようなのだ。

なぜリザード役のリス・エヴァンスがいるの?

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の映像ではその後、タキシードを着たエディや(トム・ハーディが次期役俳優の候補の一人とされることを踏まえると、なかなか興味深いショット)、米ラスベガスのカジノ(外観に話題の球体型アリーナ『Sphere』がある)でコンビニ店員のチェンさんと再会する様子、前作『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のラストで能力が覚醒してしまったパトリック・マリガン刑事(スティーヴン・グレアム)の再登場といった見どころが続いた後、またまた不可解なショットが挿入される。

『アメイジング・スパイダーマン』(2012)でリザードことカート・コナーズ博士を演じたリス・エヴァンスが登場しているのだ。これは逃走中と見られるエディが、ヒッチハイクか何かでヒッピー集団のバンに乗り合わせた場面と考えられる。エヴァンスが演じる男は後部座席で、お気楽そうな顔で弦楽器を弾いている。

かつてエヴァンスが演じたカート・コナーズ博士は右腕がない科学者で、トカゲの再生能力を夢見てオズコープ社で研究に勤しんでいた。『アメイジング・スパイダーマン』では実験で右腕の再生に成功するも、トカゲのような怪人リザードに変異。さらに危険な進化思想に取り憑かれ、ニューヨーク中に薬剤を散布するテロ行為に走る。スパイダーマンとの戦いに敗れて薬の効果を失うと、ラストでは右腕も消えていた。

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『アメイジング・スパイダーマン』の世界は『ヴェノム』のユニバースとは別とはいえ、どうしてわざわざ今作にエヴァンスが出演しているのか、である。彼は別世界のカート・コナーズであり、科学者にはならず、また別の人生を歩んでいたということだろうか。何らかの出来事で右手が再生し、その奇跡によって哲学に目覚めてヒッピー文化に傾倒し、両腕が使える喜びから弦楽器を弾くようになっていたのだろうか。

あるいは、やはり特に深い意味はないのかもしれない。エヴァンスは最も優れた俳優の一人であるので、ソニー・ピクチャーズは役の被りを気にすることなく、彼を起用したかったというだけなのだろうか。

幼いピーター・パーカーが出ている?

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の予告編では、さらに気になるショットが挟まれている。映像の2:25に登場する人々は、もしかすると『ヴェノム』ユニバースのピーター・パーカーとメイおばさんではないかという説が早くも囁かれているのだ。その直後には、『スパイダーマン』作品に度々登場する“落下する人物をヒーローが助けようとする”というカットが続いているのも意味深である。

これは『ヴェノム』ユニバースに重大な影響を及ぼすことになるかもしれないし、全く何も効用しないかもしれない。(2024)劇中でもピーター・パーカーの存在は示唆されていたが、今の所は何にも繋がっていない。

また、このカットでは少年と中年女性の他、少年の姉と思しき若い女性もいるので、よく知られるパーカー家の家族構成とも異なっている。ピーター・パーカーとは全く無縁のモブキャラクターの可能性もあるということに注意が必要である。

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』でユニバースはどうなる?

本作は『ヴェノム』『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と続いたシリーズ3部作の最後であり、完結作であるとされる。物語はエディとヴェノムの関係性の発展や、シンビオート世界の知られざる謎の解明に焦点が当てられるはずだが、そのサイドクエストとしてユニバースを拡張させる伏線が仕掛けられてもおかしくない。スパイダーマンとの対決や『モービウス』ラストシーンのその後、待望視されているシニスター・シックス実写化など、シリーズではまだ未完の仕事が多く残されている。

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』では、この予告編で多くのファンが思った疑問が解消されるかもしれないし、特に説明もないまま、独自の物語を推し進めるかもしれない。もしかすると予告編にあった謎のシーンが本編ではばっさりカットされるということもあるかもしれない。とにかく、公開まで目が離せない。

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は2024年10月25日(金)26日(土)27日(日)先行上映。11月1日(金)全国公開。

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