千葉vs埼玉の「関東第3位戦争」が終結?明暗を分けたのは鉄道だった

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今年春のダイヤ改正で蘇我駅と東京駅を結ぶ京葉線の通勤快速が廃止となったニュースは記憶に新しい。ベッドタウンとして優秀なのは千葉か、それとも埼玉か。今回は事情に詳しいジャーナリストに解説してもらった。
さらに東京湾岸エリアで勃発した新タワマン争奪戦についても紹介。

◆ベッドタウン戦争は集結?鉄道が明暗分けた千葉・埼玉

千葉vs埼玉の「関東第3位戦争」も通勤快速で見ると決着が──。

千葉県では今年春のダイヤ改正で蘇我駅と東京駅を結ぶ京葉線の通勤快速が廃止となった。

12駅連続通過で特急並みの走りが売りの京葉線「通勤快速」。ディズニー客が誤乗車し、蘇我まで連れて行かれるエピソードは3月で過去のものに。

各駅停車より約20分も所要時間が短く、「通勤快速があるから引っ越したのに!」と沿線住民は怒り心頭。

鉄道インフラや都市計画に詳しいジャーナリストの小川裕夫氏が、解説する。

「通勤快速は内房線・外房線から京葉線に直通しているが、沿線の人口密度が大きく異なる。JRにすれば京葉線は稼げる一方、内房線・外房線は乗客数が少なく、稼ぐのに効率が悪い。だから、直通の通勤快速を減らしたかったというのが本音でしょう」

朝の京葉線通勤快速の始発駅・上総湊駅が立地する富津市の高橋恭市市長は、懸念を隠さない。「『東京に通勤快速で通うことができる』というアピールポイントを失ってしまう。今後、本市は人口維持が重要ですが、移住・定住促進施策への影響が心配されます」

一方で埼玉県には、大宮駅から東京・副都心を縦断する埼京線にも通勤快速が走り、こちらは運行本数日本一だ。

埼玉から都内への速達輸送を担う埼京線の「通勤快速」。対して日中の「快速」は’19年の改正で鈍足化。代わりに相鉄線への直通が新規に始まった。

「埼京線沿線には京葉線ほど各駅にタワマン需要はありませんが、対都心への速達需要があります。さらに、大宮以遠に熊谷や本庄早稲田などの新幹線駅もあり、ここから新幹線通勤するという手段もある。運賃は高額ですが、JRにすればありがたい話です」

◆快速廃止で困るのは“千葉都民”だけ

対する千葉県では一丸となってJRにNOを突きつけているが……。

新浦安駅や舞浜駅(浦安市)、海浜幕張駅(千葉市)からは林立するタワマンに暮らす多くの“千葉都民”が東京に通勤・通学する。千葉県の20の自治体がラッシュ時の快速廃止の撤回をJRに求めていたが、外房線が走る勝浦市の企画課政策推進課職員は、こう“実情”を明かした。

「長年にわたりJRの特急や便数が減ってきたので、特段のショックはない。勝浦駅から外房線に乗り、京葉線通勤快速を利用しているのは1日15人ほどですから」

快速問題に熱心なのはこの2市くらいと自治体間で温度差が透けて見える。小川氏が続ける。「内房線・外房線の沿線は人口減で、“限界ニュータウン”も増加傾向ですから」

タワマン住民の悩みも地に足ついた市民たちには無用な心配のようだ。

◆晴海・有明・豊洲新路線開業に沸くタワマン争奪戦!

東京湾岸エリアに、2つの新路線の計画がある。東京メトロ有楽町線・豊洲駅と半蔵門線・住吉駅を結ぶ「豊住線」と、東京都心と有明・東京ビッグサイトを結ぶ「臨海地下鉄」だ。既に、この路線に絡んだ不動産投資家たちがマンションの奪い合いが始まっているという。

「新規開通で湾岸エリアは、確実に土地価格、マンション価格ともに値上がりが期待されるからです」

そう話すのは住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。実際に湾岸エリアに95年に開通した「ゆりかもめ」は、16駅で新築供給された物件の多くが高い利益を出した、という“強い実績”を持つ。