【帰ってきた あぶない刑事】
5月24日公開予定

 「帰ってきた あぶない刑事」の劇場公開が、5月24日に迫っている。「あぶない刑事」は1986年10月に第1作が放映、その後多くのTVシリーズ、劇場版が作られた。「あぶない刑事」の主人公は、タカ(舘ひろし)と、ユージ(柴田恭兵)の二人の刑事で、刑事とは思えないブランドスーツに身を包んだオシャレな主人公らが繰り広げる激しい銃撃戦やカーアクションに加え、アクションシーン以外では小粋なジョークを交える軽妙な会話が人気だった。

 周りを固めるのが当時のトレンディ俳優やいぶし銀の役者たち、ゲストには豪華タレントが起用されたり、時事ネタに絡めた台詞回し、演出なども見どころだ。その中でも「あぶない刑事」での注目が「ガンアクション」である。タカ&ユージの使う銃や、仲間の刑事、犯罪者たちが使う銃などに細かい考察が感じられ、特に武器類の多様さ、豊富さでは他のドラマと大きく異なっていた。そして主役の2人の銃の扱い方は真似をしたくなるほど。2人が持つ銃を構えて劇中のようなポーズを取りたくなってしまう。本稿では「タカの銃」をテーマにモデルガンを紹介、エピソードを語っていきたい。

「帰ってきたあぶない刑事」のポスターをイメージして

 今回公開される「帰ってきたあぶない刑事」は、定年退職して刑事を引退したタカとユージが、探偵事務所を開業。その依頼者第一号が、母親を探して欲しいという「彩夏(土屋太鳳)」だ。彩夏は二人の娘かもしれないという。昭和、平成、令和の3世代にわたって続いたシリーズ、往年のあぶ刑事メンバーたちも勢揃いで繰り広げられる痛快アクションが今から楽しみだ。

【『帰ってきた あぶない刑事』予告篇】

刑事を辞めたのになんで銃を持っているのか?どこで入手したのか?(やっぱり逮捕されちゃうのね。)など、予告編を見るだけで謎は深まり劇場に足を運びたくなってくる

射撃の名手、独特のスタンスで銃を構える鷹山刑事

 まず最初に「あぶない刑事」のシリーズ展開と、タカの銃の扱い方に触れておきたい。「あぶない刑事」シリーズは昭和61年、1986年10月からTVシリーズ「あぶない刑事」の放送が始まり、人気を博したところから始まる。1987年12月に映画「あぶない刑事」、1988年7月に映画「またまたあぶない刑事」が上映され共に大ヒット。1988年10月からはTVシリーズの続編「もっとあぶない刑事」が放送された。

 元号も平成に改まった1989年4月に映画「もっともあぶない刑事」で映画シリーズも一旦一区切りになったものの、1996年9月に「あぶない刑事リターンズ」でカムバック、1998年に「あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE」、2005年10月には「まだまだあぶない刑事」、2016年1月に「さらば あぶない刑事」で完結したかに思えたが、令和となった2024年5月に「帰ってきた あぶない刑事」として再びタカ&ユージの活躍を目にすることができそうだ。

カバメントに持ち替えたタカをイメージしてポーズをとってみた

 「あぶない刑事」の大きな魅力が、タカ&ユージの使う銃や、仲間の刑事、犯罪者たちが使う銃などの武器類の多様さ、豊富さだ。二人が所属する神奈川県警港署刑事課は、数々の凶悪事件を担当しており、銃撃戦になることも多い。犯人なども拳銃だけでなく、サブマシンガン、アサルトライフル、狙撃銃などの銃器の他、爆弾や劇薬なども犯行に使われるなど多岐にわたった。余談だが、犯罪に使われた劇薬に「水酸化ナトリウム」があり、ちょうど学生だったので授業で学んだ際、「これが……水酸化ナトリウムか……」とめちゃくちゃ覚えが良かった思い出がある。

 銃器などは、発砲、弾着効果を専門的に手掛ける特撮を専門に扱う会社「BIGSHOT」が担当したことで迫力ある銃撃戦が描かれた。特撮映画でのガンアクションの撮影では、従来は小道具係が他の小道具と一緒に扱うことが多く、そこまでこだわっていられないということもあり、考証が甘い部分(オートマチックなのに、1発撃つたびにスライドを引いて装填し直すなどの描かれ方など)もあった。

 筆者は銃に興味を持ち、知識が深まるにつれ様々なドラマでの銃の描写に物足りなさを感じるようになったが、「あぶない刑事」は違った。「あぶない刑事」では、オートマチックを撃てば薬莢が排出され、弾薬の交換、リロードも頻繁に描かれるようになった。リアルなガンアクションを見ると登場する銃に興味が湧く。特に主人公の二人の銃には注目が集まった。

 タカこと鷹山敏樹刑事は、射撃の名手で弾丸使用量は神奈川県警随一とも言われている。大型バイクの運転技術に長けており、バイクに乗りながらショットガンを撃つという技を披露することもある。

タカの射撃ポーズ。左手を左胸に添えて心臓を守り、しっかりと狙いを定める。デイビスグリップがその射撃姿勢に見事マッチしていた

普段使いの拳銃では、片手で撃つときは左手を胸に添えるのがタカ(舘ひろしさん)の特徴的なスタイルだ

 ちなみに、タカの両手撃ちの場合には、カップ&ソーサー(ティーカップリング)と言われることもある銃把に左手を添える(左手の上に銃を置く)スタイルとなる。舘さんによると、自宅でプロっぽい仕草を練習し、試行錯誤の結果、独自のスタイルになったのだという。なお、銃を持ったまま走る姿に関しては、ラグビー部だった経験から「ボールを拳銃に持ち替えただけ」とのことだ。

あまりにも特徴的で、「あぶない刑事」の人気もあり多くの人の印象に残っていることから、ネットミームとしてもたびたび使われている。

タカの銃。当初から2挺拳銃で、そのスタイルに憧れた。

 タカの銃は、シリーズ当初から2丁拳銃で、メインの銃はS&W M586 Distinguished Combat Magnum(ディスティングイッシュド・コンバット マグナム)4インチ。サブ(バックアップ)の銃はS&W M49 ”ボディーガード”。途中、メインをガバメントに切り替えるが、M49はずっと使い続けている。

 早速順番に紹介していこう。

S&W M586 4インチ

 「もっともあぶない刑事」までメインの銃として使われていた「S&W M586 Distinguished Combat Magnum(ディスティングイッシュド・コンバット マグナム)4インチ」は、.357マグナム弾も撃てるが本来38スペシャル用のKフレームリボルバーを大型化し、.357マグナムを標準弾薬として使えるよう耐久性を向上させただけでなく、コルトパイソンのようなバレルと同じ長さのバレルウェイト一体型エジェクターシュラウドを備えたスタイルが特徴のLフレームリボルバー。

 「あぶない刑事」で使われなかったら、その存在も知らず、憧れることもなかったかもしれない。「ディスティングイッシュド=究極の(抜群な)コンバットマグナム」という愛称は、どうやら定着しなかったようだが、「あぶない刑事」のパンフレットや設定集などに記載されていたので筆者はしっかり記憶している。M586はコンバットマグナムの愛称で知られているM19(Kフレーム)を大型化して、当時根強い人気のコルトパイソンに対抗する銃として登場した背景があり、新モデルとして期待がかけられていたことが窺える。タカ・カスタムとしてはデイビス社製 ラバーグリップが取り付けられているのが特徴だ。

MGCのS&W M586 4インチと、タナカのS&W M49「ボディーガード」。MGC製はABS製でプラスチックっぽい艶なのが残念なところ。しかし、当時はそれしかなく、大満足だった。

 このS&W M586タカ・カスタムは、シリーズが一区切りになる映画、「もっともあぶない刑事」までメインウェポンとして使い続けただけでなく、その後、仲村トオル演じる後輩刑事の町田トオルに引き継がれ、使用されている。

 マルシンのガスガンでは、デイビスグリップを模したグリップが装着されたモデルが発売されるようになるなど、「あぶない刑事」を意識したバリエーション展開もみられた。
 MGCの他にコクサイ、マルシンがモデルガンを出しており、東京マルイやクラウンモデル、マルシンがエアガンやガスガンを出していたが、現在購入できるのは、マルシンのモデルガン、ガスガン、クラウンモデルのエアガン、ガスガンとなっている。

 筆者のコレクションは、MGCのM586にデイビスグリップを加工して取り付けているものと、マルシンのM586(ABS製)ベースのものと、最新ロットのHW製にデイビスグリップを取り付けたものの3種類がある。特に最新ロットのHWモデルは、刻印などの形状も重さもリアルさを増しており、気に入っている。

マルシンのS&W M585 HW(とタナカのS&W M49)。マルシンの最新ロットは、刻印がリアルになっているので、満足感が高い

 「あぶない刑事」は、ホルスターも魅力だ。特に主人公二人のホルスターは細部までこだわって作られており、タカとユージの劇中レプリカのホルスターが今でも人気だ。タカのホルスターは、西部警察時代のハトこと鳩村刑事(演:舘ひろし)から引き続いたデザインとなっている。スプリングのテンションで銃を両脇から挟み込む仕組みで、必要な時にさっと抜けるようになっているのが特徴。黒革の質感と、白いステッチ(縫い目)が印象的でカッコ良い。

収納した銃を、手前に引き倒してから引き抜くように取り出す。ダーティーハリーなどで使われたバックハイマーホルスターのような仕組みになっている

 このホルスターは、舘ひろしさん演じるタカに憧れて、高校生くらいの時にようやく買えた思い出がある。

S&W M49

 タカのサイドアーム(バックアップ銃)は、S&W M49「ボディーガード」だ。猫背のような丸いシルエットが特徴的で、ハンマーの両側を覆うようにフレームが存在し、ジャケットの内側に隠し持って咄嗟に抜いて撃つときにもハンマーが引っかからないようになっている。こちらもタカの銃としてパックマイヤー社製ラバーグリップに交換されているのが特徴だ。

弾切れで、咄嗟にバックアップのM49を引き抜くというシチュエーションをイメージして構えてみた

 シリーズ開始当時は日本のモデルガンメーカーではどこも出していないモデルだったので、コクサイのM36(チーフスペシャル)をベースにオリジナルのプロップガン(劇中モデル)が作られたという。その後、マルシンからガスガン、タナカからモデルガン(とペガサス式ガスガン)が発売されるようになり、選択肢も増えた。

下の銃がタナカのS&W M49(ボディーガード)。劇中モデルは、メダリオンがないタイプということで、メダリオンのないグリップを今も探している

 今回撮影したものは、タナカのM49にパックマイヤーのメダリオン付きグリップを装着している。劇中のグリップは初期型のメダリオンのないものだったが、現在は入手が困難。ずっと探しているがまだ見つけられない。今は入手できたメダリオン付きのグリップをつけている。

 劇中では、刑事が2挺拳銃な訳はないだろう、という先入観からメインの銃を捨てたことで油断した犯人に対してM49をさっと抜いてピンチを脱出するというシーンも痛快だった。小心者の後輩、町田刑事(中村トオル)が人質にとられた時には、「ちっちゃい方の銃も捨てないと……」と余計なことを言われて台無しになるシーンもあったのが懐かしい。

 マルシンはその後のM36(チーフ)でもパックマイヤー風のグリップをつけたモデルがリリースされている。タナカのモデルガンは、グリップウェイトの形状が独特で加工をしないとパックマイヤーグリップが取り付けられないのが難点だ。

東京CMCのS&W M36(チーフスペシャル)に同社のオプション「ライトニンググリップ」を装着したもの。実銃用にも、米ビアンキ社などからライトニンググリップが発売されている

 実は、M36にはライトニンググリップというラバーグリップの上部がハンマーシュラウド(覆い)になっていてM49のような見かけになるようなカスタムも存在していた。実銃の世界では、ビアンキ社のグリップが有名だが、往年のモデルガンメーカーTOKYO CMCが発売していたS&W M36チーススペシャルのオプションでライトニンググリップがあり、M49が入手できない時にはせめてシルエットだけでも似せようと購入したものだ。

バックアップ銃といえど、M49ボディーガード用のホルスターもシリーズごとに幾つかのデザインが使用されている。ショルダーホルスターとセットで買いたかったのだが、当時はお金がなくて買えなかった。ネットのフリマアプリで、舘さんが使用したデザインに似たホルスターを買って収納しているが、いつか劇中モデルを手に入れたいと思っている

コルト MK IV シリーズ80 ”ガバメント”

 「あぶない刑事リターンズ」から使用しているのがコルトガバメントだ。コルト MK IV シリーズ’80をベースに、「あぶ刑事」シリーズごとに少しずつカスタム内容が変化している。

 高級モデルガンメーカーとして名高いエランのガバメントが、「あぶない刑事」の劇中プロップガンとしても採用されたことから、「あぶ刑事公式モデル」が発売されたこともある。しかしこの商品は20万円以上する高価なものなので、手が出ないファンも多く、MGCやCAW、タニオコバなどのガバメントのモデルガンを設定に寄せてカスタマイズする人も多い。

 モデルガンカスタムの場合、多くの場合、シリーズ80モデルをベースにパックマイヤーグリップを付けるというのが基本構成だ。舘ひろしさんのこだわりなのか、シリーズごとにサイトやサムセイフティなど細部が異なっている。今度の「帰ってきた」でもガバメントを使用しているのが予告編でもみてとれるが、どのようなカスタムになっているのか非常に楽しみだ。

「あぶない刑事リターンズ」から念願の?ガバメントを手にすることになった舘ひろしさん。「刑事貴族」でガバメントを使用してお気に入りになったのだろうか?

 タカとガバメントの因縁はシリーズ当初からあったようで、突然襲われたタカが倉庫で目を覚ますと、自分の銃は奪われてガバメントが握らされており、傍には射殺死体が……というエピソードなどが、自分の中で印象に残っている。劇中でも、犯罪組織のメンバーが持っていたりするので、「敵役の銃」というイメージがあったが、タカがガバメントに持ち替えたことで「正義の銃」というイメージも抱くようになった。

タニオコバのガバメント(写真はS&W 1911)にパックマイヤーグリップを装着し、なんちゃってタカ・カスタムに。スライドのフロントにセレーションがあるタイプでノバックサイト付きのモデルを選ぶと再現しやすい

 筆者のガバメントは、フルサイズの1911(スプリングフィールド、S&W 1911)にノバックサイト、パックマイヤー(風)のラバーグリップという感じで、なんちゃってタカ・カスタムになっている。シリーズ80が入手できたら、もうちょっと作り込んでみたいと思う。

 ガバメント用ホルスターも、シリーズごとに変化している。筆者が持っているのは、「まだまだあぶない刑事」で使用されていた05タイプだ。シリーズや作品ごとにホルスターが変わるので、毎回ホルスターもチェックしてしまう。

 思い返すと、筆者が「あぶない刑事」を見始めたのが中学生くらい、最初に買ったのはマルシンのS&W M586とM36のエアガン(ガスガン)だったように思う。それからモデルガンを買ったりカスタムしたり、念願のホルスターも買えた時はタカになりきって銃を構えてみたものだ。

 しかし、少年時代では、どんなにカッコつけようと、「ダンディ鷹山」にはなれなかった。歳を重ねて大人になった今ならなれたのか?と言われれば、やっぱり舘ひろしさんには遠く及ばないのが残念なところだ。しかし、生き方としての「ダンディズム」、「ダンディ鷹山」を目指すことは、無駄ではなかったと信じている。

 モデルガンやホルスターは、本来は刑事ドラマで警察官が犯罪操作のために携える銃という小道具(=モデルガンというおもちゃ)は、大人になっても、いや、大人だからこそ、持った時の印象だったり、雰囲気、構える姿が似合うものだと思う。子供の頃に憧れたグッズが似合う大人になりたいと思うことは良いことではないだろうか?

 「帰ってきた あぶない刑事」は、劇中の舞台となった横浜でイベントが開催されるなど、公開に向けて盛り上がってきている。映画も今から非常に楽しみだ。映画を楽しんだ後は、自宅で銃を片手に、余韻に浸りたい。