--ツッコミどころが渋滞していますね(笑)。順番にお伺いしたいのですが、アルコールはいきなりゼロにできるものだったのでしょうか。

建部:倒れてからの2〜3週は決意するまでもなく控えていました。ただ、休肝日のない暮らしが常態化していたので、アル中ではとの不安もあって、医師に聞いたんです。しかし「それだけ我慢できるなら、アル中ではないよ」とあっさり言われて。それが自信となって、難なくお酒を断てました。

◆「2時間のウォーキング」が習慣に

--断酒はともかくとしても、栄養不足は気がかりです。低血糖などの体調不良は起こらなかったのですか?

建部:起こらなかったから完走できたという結果論だけなので、「絶対に真似しないでください」としか言えないのですが……。ただ、私自身の健康状態としては、減量中でも向上していたほどです。たとえば健康診断の数値は、ダイエット以前は4割がB、3割がCなんて、目も当てられない有様。それが半年後には9割がAとなるまでに漕ぎ着きました。

--一方のウォーキングもBMI41.5を前提とすると、膝や腰への負担が気になるところです。

建部:少しずつ距離を伸ばしていったのが幸いしたようです。関節まわりのトラブルには見舞われないどころか、開始前に抱えていた膝の軽微な痛みが消えましたね。一駅分程度から開始して、距離に慣れたらもう一駅。これを繰り返していき、最終的には2時間のウォーキングが習慣となりました。

--ここまでストイックな取り組みができるとしたら、もはや3桁オーバーまで太ってしまったことの方が不思議にも思えてきます。

建部:一番の理由は、太ることに無関心だったからですかね。会食や仕事のパフォーマンスの方が体重の多寡よりも大事だしと、気にしていなかった。もちろん、ダイエットに挑戦することも時にはありました。10キロ程度落としては、すぐにリバウンドの繰り返しでしたが。

◆同時進行だからこそ、逃げ道があったのかもしれない

--今回は立場の変化もあるなかで50キロ以上を落とされた上に、減量期から1年が経過したなおも維持されています。過去のダイエットとは、なにが異なるのでしょうか。

建部:以前はウォーキング程度の運動も一切行っていませんでしたね。また、「仕事が大変なときにもかかわらず」と思われるようですが、むしろ仕事のおかげだと考えていて。食事だけ、断酒だけ、運動だけと目標を絞っていたら、ひとつ挫けるとすべてが泡に帰ってしまう感覚を覚えてしまうといいますか。欲張れば、もしどれかが停滞したとしても、きっと他のことは進んでいる。縛りを増やすことが逃げ道の用意にも繋がるんです。

◆本業の知見を活かし、最新ガジェットをフル活用

--その発想なら人を選ばず取り入れられそうです。他にも、誰もが真似できそうなことはありますか。

建部:ガジェットですかね。仕事柄、日々たくさんの電化製品に触れていますから、本気で取り組むならばと導入しまくりました。ウチの編集部は方針として、広告費などをもらわずに製作しているので、自腹購入ですけれど(笑)。

--家電テスト誌編集長のお眼鏡に適ったガジェット……。ぜひ知りたいです。

建部:ひとつはガーミン社のスマートウォッチ「vivosmart5」。ずっと愛用していたApple Watchのみでもよかったのですが、ダイエット期間は並行して運用していました。日中は両方装着して、睡眠時やシャワーの際はvivosmart5だけ着ける形ですね。

--Apple Watchにはない魅力があったのでしょうか?

建部:vivosmart5は、体力の残量ゲージのようなものが表示されるんです。観測した活動状況や、登録した体重などから計算されているようなのですが、なかなかの精度を感じましたね。ゲーム感覚の楽しさもありますし、残量を参考に仕事量やウォーキング量を調整することで、無理のない継続に役立ちました。Apple Watchが戦線離脱しなかったのは、従前通りの使い道にくわえ、多様な連携力を生かしていたからです。