「多発性骨髄腫」とは?症状・初期症状・原因についても解説!【医師監修】

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血液のがんである「白血病」のなかで、急性リンパ性白血病とはどのような病気なのでしょうか。

この記事では、急性リンパ性白血病の治療にかかる期間のほか、病気の概要・治療法も詳しく解説します。

記事の後半では、再発・経済的負担など治療中の不安についても説明するので、こちらも参考にしてください。

≫「急性リンパ性白血病の原因」はご存知ですか?症状も解説!【医師監修】

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性リンパ性白血病とは?

白血病は血液のがんで、2019年の統計では年間に14,318人の方が白血病と診断されています。白血病には、骨髄性/リンパ性・急性/慢性などの種類があります。
それぞれ、どのように分類されているのでしょうか。また、白血病とは治癒が難しい病気なのかも解説します。

リンパ球になる前の細胞が白血病細胞となり増殖する病気

私たちの血液は、赤血球・白血球・血小板などの血液細胞がそれぞれに役割を果たすことで全身の健康を保っています。この血液細胞のもとになるのが「造血幹細胞」です。
造血幹細胞が血液細胞に分化する途中でがん化した状態を、白血病といいます。白血病でがん化した細胞を「白血病細胞」と呼び、白血病細胞が主に骨髄内で増殖するタイプが骨髄性白血病、骨髄外で増殖するタイプがリンパ性白血病です。
一方、急性・慢性とは症状が急激に現れるか、徐々に現れるかによる分類です。ただし、同じ病気がさまざまな現れかたをするわけではありません。急性白血病と慢性白血病は、現れる症状は似ていますが発症メカニズムの異なる病気です。

医療の発達で寛解が望めるようになっている

寛解(かんかい)とは「病気による症状が治まっている状態」を指します。治癒とは異なり症状が再燃するリスクはあるものの、自覚症状・数値的な異常がない状態です。
現在では、急性白血病の患者さんが適切な治療を受けた場合、約80%の方に寛解が期待できるとされています。しかし、症状が治まっても再発のリスクを抱えた状態のため、寛解後も再発予防を目的とした治療を続ける場合が多いでしょう。

急性リンパ性白血病の治療期間は?

前述のとおり、白血病の治療は基本的に一度寛解を迎えても治癒したわけではなく治療が続きます。では、最終的に急性リンパ性白血病の治療はどれくらいの期間に及ぶのでしょうか。

数ヵ月から数年単位に及ぶことがある

患者さんの年齢・治療効果などにもよりますが、入院での治療が必要な期間は平均して8~12ヵ月です。入院期間中でも、必要に応じて外出・自宅での外泊が可能な場合もあります。
ただし、治療の副作用により白血球が減少すると、免疫力が下がり感染症にかかりやすくなります。そのため、血液検査などの結果により白血球数が減少していると判断された場合などは、医師からの許可が下りない場合もあるでしょう。
退院後は、多くの患者さんが自宅で内服薬による治療を行います。在宅での治療期間は、平均して退院後1年~1年半程です。

早期発見で治療期間が短くなる

急性リンパ性白血病の患者さんがスムーズに治癒に向かえるかを予測するための因子として、診断時の白血球数があります。白血病の進行とともに白血球数は減少するため、早期発見により白血球の減少が少ないうちに治療を開始できれば、治療期間が短くなる可能性があります。
ただし、白血病の治癒率に大きく関わるのは白血病細胞自体のタイプです。そのため、自覚症状に気付いたら放置しないことは重要ですが、受診後は診断を焦らずに十分な検査から適切な治療法を検討していくことも大切です。

5年間再発しないと治療完了となる

急性リンパ性白血病の寛解とは、症状が起こらないレベルにまで白血病細胞が減った状態です。しかし、完全に白血病細胞がなくなったわけではありません。そのため、寛解後にも治療を継続して白血病細胞をさらに減らしていきます。
この治療を繰り返し、5年間再発がみられなければ治療はいったん、終了になります。ただし、この時点でも再発率がゼロとはいえないため、白血病の治療では再発なく5年を迎えた方の割合を「治癒率」ではなく「長期生存率」という場合が多いようです。

急性リンパ性白血病の治療法

急性リンパ性白血病の治療では、多くの場合まず化学療法での寛解を目指します。しかし、化学療法のみで寛解できる可能性が低いと判断された場合などには別の方法を試みます。
化学療法以外の治療方法として代表的なものは、造血幹細胞移植・放射線治療です。

造血幹細胞移植

化学療法では白血病細胞を徐々に減少させますが、造血幹細胞移植では白血病細胞を含む血液細胞をほぼすべて死滅させたうえで新しい造血幹細胞を移植します。造血幹細胞移植に期待される効果は、一度死滅した血液細胞の再構築とリンパ球の移植による免疫力の上昇です。
この免疫により、わずかに残った白血病細胞が攻撃され再発を防げる可能性があります。

放射線治療

白血病治療の放射線治療は、主に「造血幹細胞移植」にあたって行います。前述のように移植前には白血病細胞を強力に攻撃する必要があるため、化学療法と併せて放射線の全身照射を行うのです。
また、こうした全身照射のほかに、脳の周りにある髄液に白血病細胞がみられた場合は、放射線の局所照射を行うことがあります。

急性リンパ性白血病で行なわれる薬物療法は?

急性リンパ性白血病では、薬物療法が治療の第一選択となります。使用する薬は全身状態などに合わせて調整する場合がありますが、薬剤の選択に大きく関わるのがフィラデルフィア遺伝子の有無です。この遺伝子は白血病の発症に関連すると考えられており、フィラデルフィア染色体がある場合は、分子標的薬・細胞障害性抗がん薬を用います。
一方、フィラデルフィア染色体がない場合は、細胞障害性抗がん薬のみ使用します。

分子標的薬

分子標的薬とは、がん細胞の増殖を支えるタンパク質・がん細胞を攻撃する免疫細胞に関連したタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬剤です。すべての細胞を攻撃するのでなく、がんの増殖などに関わる特定の標的を攻撃するため、従来の抗がん剤よりも正常な細胞への影響が少ない薬剤とされます。

細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖する仕組みを障害して細胞を攻撃する薬剤です。がん細胞にも効果がありますが、正常な細胞も攻撃してしまう欠点があります。

急性リンパ性白血病の治療期間についてよくある質問

ここまで急性リンパ性白血病の概要・治療期間・治療方法などを紹介しました。ここでは「急性リンパ性白血病の治療期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

治療期間中に再発することはありますか?

甲斐沼 孟(医師)

白血病細胞を減らすために治療を続けている期間でも、白血病細胞が増加して再発に至る場合があります。化学療法により一度は寛解した場合も、再発を抑えるための更なる化学療法(地固め療法)を行わなければ再発が起こると考えられます。また、骨髄移植後の患者さんに再発がみられる確率は30~40%です。地固め療法を続けることで再発の可能性は徐々に減少する場合が多いようですが、治療中に気になる症状が出現したらすぐに医師に相談しましょう。

治療期間中は医療費などの補助は受けられますか?

甲斐沼 孟(医師)

患者さんの年齢により適用となる制度は異なりますが、小児・成人それぞれ利用できる制度があります。まず、患者さんが小児(18歳未満)の場合には小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となります。この制度は、指定医療機関に受診のうえで各自治体の窓口に申請を行い認定を受けることで利用可能です。制度を利用すると、所得に応じて自己負担上限額が適用されます。一方、小児・成人ともに利用できる制度が「高額療養費制度」です。こちらも所得ごとに保険診療の自己負担上限額が適用される制度で、医療保険の保険者に申請して利用できます。

編集部まとめ

急性リンパ性白血病は、治療方法の研究が進み以前よりも長期生存率が上がりました。それでもなお、再発率を下げるために年単位の治療が必要となる場合が多い病気です。

しかし、治療中であっても身体の状態・治療の進み具合などに応じて自宅で過ごす時間も取ることができるでしょう。

経済的な負担を抑えるために公的な助成制度も利用しながら、慌てずしっかり治すことが再発率を下げることにもつながるはずです。

急性リンパ性白血病と関連する病気

「急性リンパ性白血病」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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悪性リンパ腫多発性骨髄腫

悪性リンパ腫・多発性骨髄腫は急性骨髄性白血病と同じく、血液のがんに分類される病気です。そのため、症状・治療法にも似ている部分が多い病気といえるでしょう。

急性リンパ性白血病と関連する症状

「急性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

鼻出血・皮下出血

易疲労感(疲れやすい)

発熱

白血病になると、正常な血球が減少して身体にさまざまな影響が出ます。例えば、血小板が減少すると血が止まりにくくなり、鼻出血・皮下出血がみられることがあります。また、疲れやすくなるのは赤血球が減り貧血になるためです。そして、白血球が減ることで感染症にかかりやすくなるため発熱を繰り返す場合があります。

参考文献

白血病の分類(国立がん研究センター)

白血病(国立がん研究センター)