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コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

――「つみたて投資枠」で積み立てていく場合、アクティブ運用とインデックス運用のどちらがいいですか?

中野 新NISAの「つみたて投資枠」は、旧制度におけるつみたてNISAで買い付けることのできる投資信託の選定基準を、そのまま引き継いでいます。まずは、その選定基準から見てみましょう。

<指定インデックス型>
・指定されたインデックスに連動していること
・販売手数料ゼロ
・信託報酬は国内資産対象が年0.5%以下、海外資産対象が年0.75%以下
・信託期間は無期限か20年以上
・分配頻度が毎月でないこと

<指定インデックス型以外>
・主な投資対象に株式を含むこと
・販売手数料ゼロ
・信託報酬は国内資産対象が年1.0%以下、海外資産対象が年1.5%以下
・純資産総額が50億円以上
・信託期間は無期限か20年以上
・信託設定後、5年以上経過していること
・信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が3分の2以上であること
・分配頻度が毎月でないこと

アクティブ型は、つみたてNISAの対象商品として
選ばれにくい状況

 以上のようになっていますが、現行制度においては、指定インデックス型以外のファンドはつみたてNISAの対象商品として、選ばれにくい状況です。なぜならそれらは、「信託設定後、5年以上経過していること」「信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が3分の2以上であること」という、2つの高いハードルが課せられているからです。

 信託設定後、5年以上経過については、運用が継続されればどのファンドでも対象になり得るものですが、問題は「信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が3分の2以上であること」というルールです。これまで運用されてきた期間のうち、3分の2で資金流入がないと認められないという点をクリアするのは、なかなか容易ではありません。

つみたて投資枠の選定基準は、
見直してもいい時期に差し掛かっている

 一方で、指定インデックスファンドには、これらの制約が課せられていません。つみたてNISAの対象ファンドのうち、インデックス型が227本、アクティブ型が47本というように本数が大きく違うのは、アクティブ型には高いハードルが課せられているからなのです。

 正直、今のつみたて投資枠に採用されている投資信託の選定基準については、見直してもいい時期に差し掛かっていると思います。つみたてNISAがスタートしたのは2018年1月のことですから、それからもう6年と数ヵ月が経過していることになります。そういう意味では、つみたて投資枠の選定基準は、やや賞味期限切れとも言えるのではないでしょうか。

今のマーケット状況は、あまり健全な状態ではない

 その事象のひとつとして、今のつみたて投資枠はインターネット証券会社経由で販売されている、つみたて投資枠のうち8割以上が、全世界株式のインデックスとS&P500のインデックスファンドで占められていると言われる偏重が起きていることがあります。

 このように、特定の投資信託に資金が集中すると、マーケットが少し崩れただけで一斉に解約が生じて、それがさらなるマーケットの下げを引き起こすというおそれも生じてきます。さらには資金集中している先がもっぱら海外資産で、このまま国民の金融資産が海外に出ていくばかりの状況を看過すれば、日本国内の経済活動がシュリンクしていきかねません

 こうした点も含めて、つみたて投資枠は商品登録のあり方を再考すべき時期にあるでしょう。理想的には、国内と海外に相応のバランスで投資が盛り上がるような対象ファンドの登録要件を定めて、改訂してほしいと思います。

 私たちもこれから2本のアクティブファンドを設定しますが、いずれも成長投資枠で購入できます。
私どものように、つみたて投資枠には入っていないものの、投資先を厳選して組み入れる素晴らしいアクティブファンドがたくさんあるので、成長投資枠での資産形成も考えてみてはいかがでしょうか。

【答え】
 今のつみたて投資枠は、特定のインデックスに集中しすぎであまり健全な状態とは言えない。素晴らしいアクティブファンドもたくさんあるので、成長投資枠での資産形成も考えるべき。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/