GI初制覇を目指すシンエンペラー(今年3月撮影、ユーザー提供:いぬくんさん)

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 史上最高額の「三本の矢」だ。矢作芳人厩舎が皐月賞(3歳牡牝・GI・芝2000m)にシンエンペラー(牡3)、ミスタージーティー(牡3)、ホウオウプロサンゲ(牡3)の3頭出し。いずれ劣らぬ良血馬で上位独占を狙う。

 エース格はシンエンペラーだ。父Siyouni、母Starlet's Sister、母の父Galileoの血統。全兄のSottsassは19年の仏ダービー、20年のガネー賞と凱旋門賞の勝ち馬。半姉のSistercharlieはG1を7勝。22年のアルカナ・ドーヴィル1歳セールにて210万ユーロ(約3億円)の高値が付いた。昨年の京都2歳Sで重賞初制覇。その後はホープフルS、弥生賞と2戦連続で2着だが、いずれもレース内容は悪くなかった。クラシックの主役級では異例といえる、2戦目から4戦連続でのテン乗りとなるが、厩舎所属の坂井瑠星騎手とのコンビなら不安なし。史上初の外国産馬による牡馬クラシック制覇の可能性は十分にある。

 残りの2頭は若葉Sからの参戦だ。ミスタージーティーは父ドゥラメンテ、母リッスン、母の父Sadler's Wellsの血統。母は07年の英G1フィリーズマイルの覇者。半姉のタッチングスピーチが15年のローズSの勝ち馬なら、半兄のサトノルークスは19年の菊花賞の2着馬。さらに姪のアスコリピチェーノは昨年の阪神JFを制している。22年のセレクトセール1歳で8200万円(税抜)で取引された。デビュー戦を制した後、ホープフルSが5着、共同通信杯が7着と崩れたが、いずれのレースも不完全燃焼だった。土俵際の若葉Sを制してのクラシック参戦。改めて真価が問われる一戦となる。

 もう1頭のホウオウプロサンゲは父キズナ、母セルキス、母の父Monsunの血統。半兄は19年の牡馬クラシックで2着、3着、3着と活躍したヴェロックス。21年のセレクトセール当歳では最高価格となる4億1000万円(税抜)で落札された。ここまで6戦1勝。価格に見合うパフォーマンスはできていないが、トライアルで意地の権利獲得を果たした。伏兵の域は出ないが、目指すは5年前に2着だった兄超えだ。

 皐月賞で同厩舎の3頭出しは22年の友道康夫厩舎以来、2年ぶりとなる。ワンツーとなれば、52年の尾形藤吉厩舎(1着クリノハナ、2着タカハタ)、63年の尾形藤吉厩舎(1着メイズイ、2着グレートヨルカ)、17年の池江泰寿厩舎(1着アルアイン、2着ペルシアンナイト)、22年の木村哲也厩舎(1着ジオグリフ、2着イクイノックス)に続く5回目。仮にワンツースリーフィニッシュとなれば、もちろんレース史上初の大偉業だ。これまでも世界中のビッグレースを次々に制し、不可能を可能に変えてきた矢作厩舎。先々週のUAEダービーをフォーエバーヤングが楽勝するなど、勢いも十分にある。それだけにファンはもちろん、トレーナーも驚くような結末となっても不思議はない。