「ゴミ屋敷」の存在が社会問題化しています。漫画家・西園フミコさんが、介護の話をするために疎遠だった父方の祖父母の家を訪ねたのは、20代後半のとき。突然、実家のゴミ屋敷化を知ることになります。そんな西園さんにインタビュー。ゴミ屋敷と家族の深い関係について語ってもらいました。

ゴミ屋敷清掃は、単なる“片づけ”ではなかった

――著書『ゴミ屋敷住人の祖父母を介護した話』(扶桑社刊)では、ゴミ屋敷の片づけとそのあとの介護について描かれています。まずは、この漫画を執筆しようとしたきっかけがあれば教えてください。

【画像】漫画『ゴミ屋敷住人を介護した話』を読む

西園フミコさん(以下、西園):ゴミ屋敷の問題って、どこか人ごとのような気もしますが、じつはだれにでも起こりうる問題。予想もしていないことだから、その現実を見たときに驚いて慌ててしまうと思います。

ただ、“ゴミ屋敷化”を目の当たりにしたからといって、なにも手立てがないわけではありません。そこで、私の実体験漫画を通して、「こういう風な解決方法があった」と一例にしてほしい気持ちや、そこから得た教訓、あとはプロの方から学んだ情報を提供できたらと思って描き始めました。

また、私にとって、ゴミ屋敷清掃は単なる片づけではなく、「家族の負の遺産をひも解く作業」でもあったんです。だから、「ゴミの片づけ」で終わるのではなく、「家族との関係」としての側面も読んでもらえるようにしました。

――漫画でも、ご自身の実家はいわゆる「機能不全家族」だったと書かれていますが、具体的にはどのようなご家族でしたか?

 

西園:ゴミ屋敷に住んでいた、父方の祖父母は“姫ばあさんと“こじらせじいさん”といった感じ。その息子である父は温厚で人当たりもよかったのですが、それ以外が少しぶっ飛んでいるというか…浮気や借金など、あらゆる約束を反故していくロックすぎる性格。それゆえに、「自分の家」というものにすごく振り回されていてしんどかったです。

「うちは“普通”じゃない」。そう思っていたし、「なんで父親はこうなんだ?」「祖父母の育児のツケを孫の私が払っているのでは…?」という、負の連鎖もあって父方の祖父母と疎遠になっていたというのもあります。

片づけと介護が、家族への理解と己のルーツの整頓に

――疎遠になっていたなかで「ゴミ屋敷化」が発覚されたんですね。

西園:まったく交流がなかったというわけではありませんが、発覚する前は玄関で話す程度でした。玄関先から見える部分は、1人分の移動スペースがぎりぎりあるくらいの「汚れてる家」という感じで…。

介護の話が本格化して、生活スペースである2階に踏み入れてみると、ゴミでギッチギチだったのには本当に驚きました。でも介護をするうえで、引っ越し、もしくは片づけなければいけない状況…。そこで、業者の方に依頼して2日間かけて片づけを行いました。

ーー片づけることで、祖父母や父親に対して気持ちの変化などありましたか?

西園:それまでも、家族のさまざまな問題はありましたが、「ゴミ屋敷」という1つの大きな問題が表面化したことによって、祖父母と強制的に向き合うしかなくなった。もちろん、好き好んで介護や片づけを行ったわけではありませんが、ぎゃあぎゃあ言いながらも関わったことで、多少理解が進んで…結果、己のルーツの整頓にもなりました。

もちろん、今も「恨んでない」と言ったら嘘にはなりますが、それぞれ事情があったということを思いがけず知り、いろんな見方ができるようになった。「つらい・苦しい」の一辺倒だと自分もきついですが、苦しさだけではなくなって。ゴミ屋敷の片づけ以降ぐらいから、家族に対する恨みつらみだけではなくなって、気持ちが結構ラクになりましたね。

家庭にあまり恵まれなかった人や、親子や夫婦仲が悪かった人、いろんなパターンがありますが、家族の関係が複雑な人ってもっといっぱいいると思います。この漫画では、家族のことでしんどい目にあっている人に対しても「ずっと続くものではない」っていうのが伝わったらうれしいです。

『ゴミ屋敷住人の祖父母を介護した話』(扶桑社刊)では、ESSEonlineで連載していた本編に加えて、描き下ろし漫画と専門家によるお役立ちコラムも掲載。ぜひチェックしてみてくださいね。