日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「私は妻ではなく、お母さんになっちゃったんです」と振り返るのは主婦の幸恵さん(仮名・49歳)です。2人目妊活もあきらめ、30代後半になると体調を崩しがちになってしまった幸恵さん。頼りない夫が単身赴任になり、完全なすれ違い生活になった状況について聞きました。

「夫がいないほうがいい」と気がついてしまった

学生時代からつき合っていた夫と10年の交際の末に結婚し、子宝にも恵まれた幸恵さん。バリバリ仕事のキャリアも積んで、とても充実していそうに見えますが、じつは妊娠中から夫とのすれ違いが続いていました。

レスに陥り、言い合いも増え、2人目の妊活もあきらめた中で、呼吸困難で救急搬送されたり、リンパ節の病気にも。ライフスタイルの見直しを余儀なくされていたところ、夫が単身赴任になりました。

「正直言うと、夫がいないほうがぜんぜんラク。さみしいとか微塵も感じませんでした。娘の育児もほぼワンオペだったし、自分の親とかシッターさんに頼りながらなんとかきり盛りするという状況でしたから。『僕のごはんまだ?』とか言われるくらいなら、家にいないほうが私の精神的によかったです」

初めてひとりぼっちになった夫。愚痴が多くてドン引き

一方、実家暮らしから幸恵さんと結婚し、40歳になってから単身赴任。初めてのひとり暮らしを強いられた夫側はかなり大変だった様子。

「毎日電話してくるんですけれど、その内容が『仕事が終わってヘトヘトになりながら自転車をこいで夕飯を買って帰ってきた。しんどくてつらい』と。そういう話ばかりです。苦労と感じるハードルが人より低くないですか?」と苦笑いする幸恵さん。

朝起きたら温かいごはんが出てきて、仕事から家に帰ってくれば、部屋が片づいて掃除もされている。お風呂が沸いていて夕飯が用意されていて、洗濯物もたたまれている…。そんな生活が、当たり前のこととして染みついていた夫にとって、いきなりすべてを自分でやるひとり暮らしは相当堪えていたそう。

「私からはとにかく『その話、人にしないほうがいいよ。仕事終わりに自転車こいで買い物に行くくらい、世の中のワーママたちはみんな当たり前にやっているんだからね。私は今まで毎日やっていたんだよ。どんなにヘトヘトでも、あなたがやってくれないからがんばらざるを得なかった』って言いました」と幸恵さん。

「ちょっと突き放した感じに聞こえるかもしれませんが、実際、私が雨の中、仕事終わりに買い物してびしょびしょで帰って来たときだって、夫はタオルの一本差し出してくれたことはありません。なのに、自分がそういう当たり前のことをしているというだけで、大変な苦労しているみたいなテンションで私に愚痴をこぼしてくるので、ドン引きでした」

レスは解消しそうだったけれど、気持ちが離れた

単身赴任先から数か月ごとに戻ってくる夫は、たまにくっつこうとしてきましたが、拒否していたのは幸恵さんのほうでした。

「好きという気持ちがなくなってしまったことがいちばん大きいですね。この頃は性格の不一致という問題も表面化していました。私は能動的で、夫は受動的。自分にないものを補い合えるような関係ならまだしも、一方的に寄りかかられるとキツいというのが本音」幸恵さん。

「私は大変な思いをして娘を産んで、フラフラになりながらワンオペして、仕事と家事を両立させて。病気になっても、家計のためにがんばっていたのに。夫は自分がやらなくても私がなんとかするって思っているから、いつだって危機感が欠落していました。蒸し返すつもりはないけれど、やっぱりひとり暮らしをしたくらいでしんどいとか大変って言われても、『私の方がよっぽど辛かったよ』って言ってしまいました。優しい言葉はもうかけてあげられなくなっていましたね」

もう気持ちがないにも関わらず、離婚へ踏みきれなかったのは、やはり子どもの存在が大きかったと振り返ります。

娘にとってはよきパパである夫に対しての複雑な感情

「夫は言わないとできないけれど、言ったらやってくれるタイプなんです。娘が欲しがったものが人気すぎて近所のお店では売りきれていて、隣町で探して買ってきてくれたことも。そういうとき『パパありがとう』って目を輝かせる娘を見ていると、私にとっては微妙な夫でも娘にとってはたった一人の優しいパパ。離婚が最善の選択とは思えず、悶々と複雑な感情が続いていました」と幸恵さん。

こうして深い悩みの沼にハマりながらも、娘が成人したら、卒婚しようと自分のなかでゴールを決めた幸恵さん。また前を向いて走り始めたところ、ある日、単身赴任先で夫が事故に…! そのお話はまた次回したいと思います。