「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏は、アメリカの株式相場を「カジノ的だ」と指摘した。日本株はどうなるのだろうか(写真:ブルームバーグ)

前回のコラム(3月4日配信)ではタイトルのとおり、「日経平均株価はいったん小休止するかもしれない」と予想した。

結果はどうだったか。配信当日の日経平均株価は史上初めて4万円に乗せて4万0109円で引けたが、その日からまさに小休止となり、12日の取引時間中には安値3万8271円をつけた。

市場では「驚異的スピードで上昇した結果、4万円をつけたので、目標達成感が出た」と解説されていた。だが、以前から言っているとおり、「先が見えないほどの大相場」だと考えている筆者としては、4万円など眼中にない。

それでも「小休止予想」を出したのは、めったに出ない「調整入りシグナル」である「日経平均の総合乖離(株価と25・75・200日移動平均線との乖離率の合計)40%超え」が、3月1日の3万9910円で出たからだ。

「小休止」は早ければ3月中に終了

この総合乖離40%超えは2021年1〜2月にも出ていたが、その後の調整期間は実に約2年にも及んだ。次に出たのが昨年6月後半だったが、デフレ脱却機運であれだけ盛り上がった相場も、結局は約6カ月間もの調整となった。

だが、今回は史上最高値という異次元空間でのシグナルであり、半年や1年などという調整期間は考えていない。早ければ1カ月、遅くとも2カ月で調整は終わると考えているが、これは筆者が予想する「目先の5月高」へのリズムとも合致する。つまり調整は3月中か、遅くとも4月中で終わるということだ。

そんな中で、3月15日には加盟組合員約700万人を擁する連合(日本労働組合総連合会)が、今年の春闘の第1回回答状況を公表した。経営側から回答が示された771社の労働組合の平均賃上げ率は5.28%と、事前予想の4.1%や前年同時点の予想3.80%を大きく上回り、33年ぶりに5%を超える水準となった。

日本銀行の植田和男総裁はすでに2月29日のG20後の記者会見で「春闘の数字が出てくるのは3月以降で、集計された数字が出てきたところで、ヒアリング等を加えて、各回の会合で議論していく」と述べている。

また、3月7日の参議院予算委員会では「賃金と物価の好循環の強まりを確認できれば、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みなど、さまざまな大規模緩和策の修正を検討していくことになる」と言明している。

これらを総合して考えると、18〜19日に開催される日銀金融政策決定会合での政策修正の可能性は、大きく高まったことになる。現在の短期政策金利の−0.1%を0.1ポイント以上引き上げて、ゼロ〜+0.1%に誘導する案が有力で、2016年2月に開始されたマイナス金利政策はこれで終了することになる。

「カジノ」がまだ繁盛すると言えるワケ

金融政策の変更があるという意味で、まさに今は微妙なタイミングと言えるが、直近の2月24日、「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏は、株主へ送った恒例の「株主への手紙」で、アメリカの株式相場を「カジノ的だ」と指摘したのは読者も知っておいでだろう。

確かに、3月12日にはS&P500種指数や独DAX指数が史上最高値を更新し、15日も仏CAC40指数が4連続(2月には7連続)で史上最高値を更新した。アメリカだけでなく、欧州相場も「カジノ的」と言えるかもしれない。

しかし、このカジノはまだまだ繁盛すると思っている。なぜなら、インフレに対抗するために、米欧の金融当局は利上げ政策を続けてきた。だが、2月29日のG20でアメリカを中心にソフトランディングがベースラインになりつつあることが確認された。

つまり、金融当局の勝利と言えるような適温経済への方向性を評価して「カジノは盛況になっている」のであって、決してバブルではない。

一方、日本では、欧米の政策とは真逆のデフレに対抗するために異次元緩和政策を続けてきたが、その象徴であるマイナス金利政策が終わろうとしている。しかし、確かに異次元緩和政策の終わりは近づいているが、異次元相場は続くと思っている。

なぜなら、日本の金融当局が「異次元緩和は終わっても緩和状態は続く」と言明しているとおり、マネーストック(世の中に出回っているお金の量)は史上最高水準が続いているからだ。

また企業業績においても、上場企業の2024年3月期の純利益は約43.5兆円となり、3期連続で過去最高を更新する見通しだ。前期比では13%増え、昨年5月の期初予想から見ても3.5兆円上振れすることになりそうだが、この最も大きな原因は円安だ。

日本株が本格的に再評価されるのはこれから

なるほど「次の2025年3月期は対前期比での円安効果がなくなり、4期連続とはならずに記録が途絶えるのではないか」と危惧する向きもある。

しかし、前期比での円安効果は薄れても、前出のとおりG20では世界経済はソフトランディングに向かっている。また日本も、植田日銀総裁のコメントにもあるとおり、2025年3月期の純利益は「数量効果」(売り上げ増)によって、4期連続の過去最高になると思われる。

つまり、現在は決してバブル状態ではない。とくにデフレ脱却からインフレ相場に向かう日本経済は、これから本格的に世界から再評価されるだろう。米国株を「カジノ的だ」と警戒する投資の神様も、日本株は買い増している。

日経平均は3月11日に今年最大の安値幅となる868円の下落を見せたあと、翌日の取引時間中には前出のように3万8271円の安値をつけた。だが、その後の下値はジリジリと切り上がっている。18日も日経平均の先物を見ていると、3万8900円前後の展開が予想される。

3月第1週に6865億円の大量売り越しとなった信託銀行(年金筋)のリバランス売りが、第1週までですべて終わったとは思えない。だが、調整期間は1カ月を待たずして終わる可能性もある。

ともかく、本欄では何度も書いているが、投資家はこの相場に最後までついて行くための算段を、あの手この手を使って考えるべきだ。そのために重要なのは「焦らず慌てず」ということになる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)